管理者なら覚えておきたい! Windows 11の品質更新で追加される新機能のロールアウトを制御する方法企業ユーザーに贈るWindows 11への乗り換え案内(11)

MicrosoftはこれまでWindows 10/11の新機能を機能更新プログラム(以前は年に2回、現在は年の後半に1回)で追加してきましたが、最新のWindows 11 バージョン22H2からは、次の機能更新プログラムを待たずに毎月の品質更新プログラムで新機能を追加していく方針に変更しました。新機能による仕様変更が業務に影響を与える可能性がある場合は、新機能のロールアウトを次の機能更新プログラムまでストップする新しいオプションが用意されています。

» 2023年04月25日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]

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企業ユーザーに贈るWindows 11への乗り換え案内

LCUによる新機能の追加や機能強化のリリースサイクルの短縮

 「Windows 11」のバージョン22H2では、毎月の品質更新プログラムである「最新の累積更新プログラム」(Latest Cumulative Update、LCU)によって、新機能や機能強化が頻繁に提供されることになりました。

 2023年3月の品質更新プログラム(Bリリース)と、それに先行する形でプレビュー提供された2023年2月のオプションの更新プログラム(Cリリース)では、この新しい方針に従って幾つか新機能が追加されています。2022年10月にも定例外のLCUによって、エクスプローラーの複数タブ化やタスクバーのオーバーフローメニューの追加が行われました。2022年10月の新機能追加を「Moment 1」、今回の2023年3月の新機能追加を「Moment 2」と呼ぶこともあります。

 これまでに行われた新機能追加や機能強化/改善には、以下のようなものがあります。

  • 新しいアクセシビリティ(ユーザー補助)機能
  • 二酸化炭素排出量を削減するための推奨設定の提案
  • Snipping Toolの機能強化
  • Windows Studio Effectsの改善
  • タスクバー上の検索機能の強化(AIチャット対応「Bing」との統合など)
  • 通知領域のアイコンの並べ替え
  • 2-in-1デバイス用のタッチに最適化されたタスクバー
  • ファイルエクスプローラーの機能強化
  • 「メモ帳」の複数タブのサポート(Microsoft Storeから提供)
  • 「スタート」メニューにAIを利用した推奨コンテンツ
  • 「Windows 365」アプリ(Microsoft Storeから提供)
  • サードパーティープロバイダーによる学生のサインインの簡素化(Windows 11 SE《教育向けのエディション》、Pro Education、Educationエディション向け)

 各機能の詳細については公式ブログの投稿で確認してください。例えば、「2-in-1デバイス向けのタッチに最適化されたタスクバー」は、デバイスを「タブレットモード」にしたときに、アクティブウィンドウがある場合はタスクバーを自動的に閉じ、アクティブウィンドウがなくなる、または手動でタスクバーを開くと、大きなアイコンを持つタスクバーを表示することで、タッチの誤操作を防止するというものです(写真1画面1)。

写真1 写真1 2-in-1デバイスのタスクバーの最適化。以前はタスクバーのアイコンが若干大きくなるくらいだったが、最新ビルドではタブレットモード時にタスクバーが引っ込むように
画面1 画面1 2-in-1デバイスでのタスクバーの変化。上から非タブレット、タブレットモード(アクティブウィンドウあり)、タブレットモード(アクティブウィンドウなし)

企業の管理されたデバイスでは、新機能の有効/無効を制御可能

 個人ユーザーのWindows 11(バージョン22H2以降)デバイスは、2023年3月以降、LCUによって新機能の追加や機能強化が継続的に行われることになります。

 一方、「Windows Server Update Services(WSUS)」「更新プログラムの延期設定(旧、「Windows Update for Business」ポリシー)」「Windows Update for Business展開サービス」「Microsoft Configuration Manager」「Microsoft Intune」などで管理されている企業のWindows 11デバイスについては、新機能の一部が既定で「無効」になります。2023年3月のLCUで追加される新機能としては、タッチに最適化されたタスクバーの機能が既定で無効の状態になります(画面2)。

画面2 画面2 企業などの管理されたWindows 11デバイスについては、一部の新機能(今回の場合はタッチに最適化されたタスクバー)が既定で無効に。無効化対象の新機能は、次の機能更新プログラムの際に有効化される

 デバイスの管理者は「ローカルコンピューターポリシー」(Gpedit.msc)や「グループポリシー」で以下のポリシー設定を使用することで、新機能の有効化/無効化を制御できるようになりました。このポリシーは2023年2月のCリリース(ビルド22621.1344)以降で利用可能です。

  • コンピューターの構成\管理用テンプレート\Windows コンポーネント\Windows Update\エンド ユーザー エクスペリエンスの管理\Enable features introduced via servicing that are off by default

 企業の管理されたWindows11 デバイスに新機能をいち早くロールアウトしたい場合は、「Enable features introduced via servicing that are off by default」ポリシーを「有効」にします(画面3)。

画面3 画面3 2023年2月のCリリース(ビルド22621.1344)以降で追加された新しいポリシー「Enable features introduced via servicing that are off by default」を使用して、新機能のロールアウトを制御できる

 LCUで追加される新機能や機能強化は、業務アプリの利用に影響する可能性があります。そのため、新機能や機能強化の影響を最小化するには、このポリシーを明示的に「無効」にするとよいでしょう。

 なお、新機能の有効化/無効化には、Windows 11デバイスの再起動が必要です。管理されたデバイス、および明示的に「無効」にしたWindows 11デバイスについては、無効状態の新機能は次の機能更新プログラム(Windows 11 バージョン23H2)のタイミングで有効化されることになります。

 Microsoftは「Windows 10」の後期バージョンで「有効化パッケージ(EKB)」を利用した機能更新プログラムによる最小限のダウンロードと短時間でのアップグレードを提供しました。Windows 10の後期バージョンでは新機能が無効の状態でLCUで提供され、有効化パッケージによってバージョンアップに合わせて無効だった新機能を有効化するという処理が行われていました。Windows 11 バージョン22H2では今後、新機能が有効化された状態でLCUで提供されるということもあり得ます。

最新情報(2023年4月28日):Windows 10は「バージョン22H2」が最後のバージョンに

 以下のブログでアナウンスされているように、Windows 10 Home/Pro/Enterprise/Educationは現在の「バージョン22H2」が最後のバージョンになることが発表されました。このバージョンのまま「2025年10月14日」までサポートされ、更新プログラムが提供されることになります(日本時間2025年10月15日に提供される更新プログラムが最後)。

 Windows 10 Enterprse LTSC 2019は「2029年1月9日」まで、Windows 10 Enterprise LTSC 2021は「2027年1月12日」(延長サポートは提供されません)までサポートが継続されます。また、Windows 11 Enterprise LTSCは、2024年後半のリリースが予定されています。


筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2023(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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