Bluetoothは、「ペアリング」を行わなければ通信ができません。ペアリングを行うには、どちらかのデバイスが検出可能になっている必要があり、もう片方から検出する必要があります。
検出可能にするには、以下のようにIntentをブロードキャストします。
Intent intent = new Intent(BluetoothAdapter.ACTION_REQUEST_DISCOVERABLE); intent.putExtra(BluetoothAdapter.EXTRA_DISCOVERABLE_DURATION, DURATION); mActivity.startActivityForResult(intent, REQUEST_DISCOVERABLE_BT);
Intent#putExtra(...)でBluetoothAdapter.EXTRA_DISCOVERABLE_DURATIONをキーに検出時間を秒で指定可能です。ここで指定した値が、ユーザーが「はい」を選択した場合はonActivityResult(...)のresultCodeで返されます。「いいえ」の場合は0です。
このエクストラを指定しない場合はデフォルトの120秒が使用されます。今回のサンプルでは最大の300秒を指定しています。
検出可能なデバイスを検出するには、BroadcastReceiverを登録した後、BluetoothAdapter#startDiscovery()を呼び出します。Bluetooth関連のブロードキャストは種類が多いのですが、今回のサンプルでは、デバイスが検出されたこと、デバイス検出が完了したことを通知するアクションのみをフィルタしています。
IntentFilter filter = new IntentFilter(); filter.addAction(BluetoothDevice.ACTION_FOUND); filter.addAction(BluetoothAdapter.ACTION_DISCOVERY_FINISHED); mActivity.registerReceiver(mReceiver, filter); mBluetoothAdapter.startDiscovery();
デバイス検出は非同期で行われます。今回のサンプルでは、見つかると同時にArrayAdapterに格納して表示されているリストに反映しています。デバイス検出終了時にブロードキャストレシーバの登録を解除しています。
private final BroadcastReceiver mReceiver = new BroadcastReceiver() { @Override public void onReceive(Context context, Intent intent) { String action = intent.getAction(); if (BluetoothDevice.ACTION_FOUND.equals(action)) { Log.d(TAG, "ACTION_FOUND"); // デバイスが見つかった場合、Intent から BluetoothDevice を取り出す BluetoothDevice device = intent.getParcelableExtra(BluetoothDevice.EXTRA_DEVICE); // 名前とアドレスを所定のフォーマットで ArrayAdapter に格納 mCandidateServers.add(device.getName() + "\n" + device.getAddress()); } else if (BluetoothAdapter.ACTION_DISCOVERY_FINISHED.equals(action)) { Log.d(TAG, "ACTION_DISCOVERY_FINISHED"); // デバイス検出が終了した場合は、BroadcastReceiver を解除 context.unregisterReceiver(mReceiver); } } };
デバイス検出終了は、BluetoothAdapter#cancelDiscovery()でも呼び出されます。ユーザーによるキャンセルボタンタップや目的のサーバを選択した際など、それ以上検出する必要がない場合に呼び出すとよいでしょう。
Bluetoothの通信は、Javaの「Socket」「ServerSocket」クラスのような、「BluetoothSocket」「BluetoothServerSocket」クラスによって行います。サーバ側は以下のように、クライアントからの接続を待ちます。
mServerSocket = mBluetoothAdapter.listenUsingRfcommWithServiceRecord(mActivity.getPackageName(), mUuid); mSocket = mServerSocket.accept();
BluetoothAdapter#listenUsingRfcommWithServiceRecord(String, UUID)で、BluetoothServerSocketを生成するために任意のサービス名、サービスで指定するUUIDを指定します。ここで重要なのは、UUIDです。
RFCOMMは、さまざまなプロファイルで使用されていると説明した通りです。そして、このメソッドはRFCOMMでソケットを作成するため、以下のようにBluetoothの仕様として使用するUUIDが規定されています。
今回のサンプルで使用するプロトコルは、RFCOMMベースの独自プロトコルです。つまり、UUIDは上記Bluetoothで規定されているUUIDとは重複しない、アプリ固有の値を持つ必要があります。
このサンプルの値や、グーグルの提供するサンプルなどの値をそのまま自身のアプリに使用すると、思わぬ誤作動を起こしかねないので(具体的には、通信プロトコルに互換性のないアプリ同士が通信できてしまいます)、独自プロトコルを実装する場合は、必ず自身でUUIDを生成するようにしてください。
クライアントは、以下のように開始します。
mSocket = mServer.createRfcommSocketToServiceRecord(mUuid); mBluetoothAdapter.cancelDiscovery(); mSocket.connect();
BluetoothDevice# createRfcommSocketToServiceRecord(UUID)でBluetoothSocketを生成します。ここで指定するUUIDは、BluetoothServerSocketを生成する際に指定したUUIDと同じでなければなりません。BluetoothSocket#connect()を呼び出す前に、ディスカバリを終了させる必要があります。
connect()の後は、BluetoothSocket#getInputStream()、BluetoothSocket#getOutputStream()で入出力ストリームを取り出し、読み書きを行います。
今回のサンプルアプリのプロトコルは、非常に簡単に設計されています。
必ずクライアントが黒であること、自分の番でなければ駒を置けないように制御していること、駒が置ける場合にのみメッセージを送ること、文字列として扱うようにしていることから、送受信するデータは以下のようなフォーマットです。
"x,y"
例えば左上隅に駒を置く場合、"0,0"というメッセージを送信します。受信側は0,0に相手の駒を置いて、「自分の番」という制御を行います。
サンプルは簡単なので上記のようにしてありますが、実際には先攻後攻を選択、着信などの割り込みによるアプリの中断、中断からの再開、電波の不調による切断などに対応しなければなりません。
先攻後攻を選択できるようにするには、プロトコルを拡張して、駒の座標を送る場合と先攻後攻を決定する場合のコマンドを識別可能にすればよいでしょう。
アプリの中断・再開もまた同様で、Activity#onPause()およびActivity#onResume()で中断・再開のコマンドを送信します。
切断を検知するには、Keep Aliveを行うか、送信コマンドに対するACKを返すようにプロトコルを拡張します。
プロトコルは単純であるほど、不具合がなくアプリが安定します。アプリで提供したい機能を満たす、必要最小限かつ拡張可能なプロトコルを設計するのが鍵になります。
今回は、RFCOMMを使用したAndroid間での通信をAndroidのAPIで実現する方法を解説ししたが、いかがでしたしょうか。次回は、冒頭で説明した、A2DPまたはHDPを用いて外部機器との通信の方法を解説しますので、お楽しみに。
なお、JavaのBluetooth APIとしては「JSR 82 Bluetooth API and OBEX API」というものが古くから存在しますが、AndroidのBluetooth APIは、JSR 82とはまったく互換性がありません(JSR 82はJava MEのStreamConnection、StreamConnectionNotifierを使用することが前提であることや、ライセンスの問題などがあるためでしょう)。
著者の感覚では、どちらも難しくはないですが、AndroidのAPIの方がより取っ付きやすいように設計されていると感じます。
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