Windows Server 2022はリリースされてから間もなく2年になろうとしていますが、2023年3月以降、ようやくこの最新サーバOS上でのMicrosoft 365 Apps(Officeアプリ)の使用が正式にサポートされるようになりました。ただし、そのサポート期間やサポートされる構成については注意が必要です。
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Microsoftは現在、最新の「Windows Server 2022」上で「Office 2019」「Office 2021」「Office LTSC」の各スイート製品(永続ライセンス製品)と、「Microsoft 365」サブスクリプションに含まれる「Microsoft 365 Apps」(旧称、Office 365 ProPlus)を正式にサポートしています。
Microsoft 365 Appsについては、Windows Server 2022のリリース後、しばらくサポートされていませんでしたが、以下の「Windows ServerからのMicrosoft 365 Apps移行」ページで説明されている通り、バージョン2302以降のMicrosoft 365 Appsで正式にサポートされるようになりました。
Microsoft 365 Appsのバージョン2302以降は、「最新チャネル」(Microsoft 365 Apps for Enterprise/Businessおよび永続ライセンス製品の既定)と「半期エンタープライズチャネル(プレビュー)」に向けて2023年3月にリリースされ、その翌月に「月次エンタープライズチャネル」向けにリリースされました。残る「半期エンタープライズチャネル」についても、2023年7月にバージョン2302がリリースされました。
Microsoftの固定ライフサイクルポリシーでは、通常、企業向け製品に対して「メインストリームサポート5年」と「延長サポート5年」の合計10年のサポートを提供しています。しかし、Officeスイート製品(永続ライセンス製品)については、Office 2019で延長サポートを2年に短縮し、Office 2016とサポート終了日をそろえ、Office 2021およびOffice LTSC 2021ではメインストリームサポートのみを提供します。そのため、WindowsデスクトップかWindows Serverかどうかに関係なく、後2年または3年でこれらの製品のサポートは全て終了します。
Microsoft 365 Appsについては、Windows Serverのサポート終了日よりも先に、Windows Server上でのアプリのサポートが終了することにも注意してください。Windows Server 2022については、OSのメインストリームサポート期間中のみのサポートとなります。
その後のOffice製品のリリースとサポートの予定は明らかにされていませんが、いずれの場合もWindows Server 2022上でのアプリの利用は「2026年10月」に終了します。
Windows Server 2022のマルチユーザー環境でMicrosoft 365 Appsを利用可能にする方法には、「リモートデスクトップサービス(RDS)の役割」を使用して構築した「リモートデスクトップセッションホスト」(旧称、ターミナルサーバー)環境、またはWindowsデスクトップOSを、リモートデスクトップ仮想化ホストを使用して仮想デスクトップとして提供するVDI(仮想デスクトップインフラストラクチャ)環境の2種類があります(画面1)。
いずれの場合も、デスクトップ全体またはアプリ(RemoteApp)へのリモートデスクトッププロトコル(RDP)接続によるアクセスをユーザーに提供できます(画面2)。
リモートデスクトップセッションホスト環境にMicrosoft 365 Appsをインストールするには、「Officeカスタマイズツール」を使用して、少なくとも製品のライセンス認証の方法として「共有コンピューター」を構成し(画面3)、作成した構成ファイル(.xml)を「Office展開ツール」(Office Deployment Tools、ODT)のSetup.exeに指定してインストールします。
その際には、コントロールパネルの「プログラム」→「リモートデスクトップサーバーへのアプリケーションのインストール」からインストールを開始する必要があります。例えば、セットアッププログラムとして「cmd.exe」を開始して、ODTのSetup.exeのコマンドライン(setup.exe /configure 構成ファイル.xml)を実行します(画面4)。
Windows Server 2022のVDI環境でマルチユーザー環境を構築する場合は、サーバOSのライフサイクル期間中であれば、ゲストOSで最新のMicrosoft 365 Appsがサポートされます。ただし、Windows Server 2022のVDI環境でサポートされるゲストOSは「Windows 10」までであることに注意してください。
「Windows 11」はWindows Server 2022よりも新しいビルドのOSであり、少なくとも現時点では、RDSのVDI環境でサポートされるゲストOSには含まれていません。Windows 11の仮想デスクトップを提供できないというわけではないのですが(実際、Windows 10 Enterpriseとほとんど同じ手順で展開できます)、サポートされるゲストOSに含まれない以上(注意:Hyper-VのゲストOSとしてはWindows 11がサポートされています)、実運用環境で利用するのはサポートを受けられない可能性があるため難しいかもしれません。
ご存じのように、Windows 10は「2025年10月14日」に製品のライフサイクルが終了します。そのため、Windows 10ベースでVDI環境を構築したとしても、最新のMicrosoft 365 Appsの環境を提供できるのは後2年ほどしかないため、現実的なソリューションにはならないでしょう。
現在、MicrosoftのVDI環境でWindows 11およびMicrosoft 365 Appsを正式にサポートしているのは、クラウドベースの「Azure Virtual Desktop」および「Windows 365クラウドPC」(画面5、画面6)のみとなります。
Azure Virtual Desktopを利用する場合は、Azure MarketplaceにあるMicrosoft 365 Appsを含む標準ギャラリーイメージを使用するか、カスタムイメージを作成して、Azure Virtual Desktop上にデプロイしてユーザーに公開できます。
Windows 365クラウドPCの場合は、Microsoft 365 Appsがプランに含まれます。現在、プレビュー段階ですが、Azure Virtual Desktopを「Azure Stack HCI」上にデプロイする方法もあります。いずれの場合もサービスやアプリを利用するには、Windows 11 EnterpriseへのリモートアクセスとMicrosoft 365 Appsの利用のために、「Microsoft 365 E3/E5」など、前提となるライセンスを保有している必要があります(中小規模向けのWindows 365 Businessには追加のライセンス要件はありませんが、その分、月額料金が高く設定されています)。
Azure Virtual Desktopは、Windows 10/11 Enterprise、Windows 10/11 Enterprise multi-session、Windows Serverリモートデスクトップサービスの仮想デスクトップのデプロイとホストに対応した汎用(はんよう)的なクラウドサービスです。Windows 365クラウドPCは、Azure Virtual Desktopのサービスに基づいて、Microsoft 365 Appsを含むWindows 10/11 Enterpriseの仮想デスクトップのデプロイとホストを簡素化する、Windows 365サブスクリプションのサービスです。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2023(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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