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「内定」の2文字に舞い上がり、転職に失敗転職活動、本当にあったこんなこと(24)(2/2 ページ)

多くのITエンジニアにとって「転職」とは非日常のもので、そこには思いがけない事例の数々がある。転職活動におけるさまざまな危険を紹介し、回避方法を考える。

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大規模プロジェクトにかかわりたい

 中井さん(仮名)は30歳のITエンジニアです。専門学校を卒業してシステム開発会社に就職し、その後転職。2社目の勤務先である中堅企業で、流通業界向けのシステム開発プロジェクトにリーダーとして携わっていました。充実感を持って業務に取り組み、会社に特に不満はなかったのですが、将来はより大きなプロジェクトに携わりたいという希望を持っていました。

 あるとき、中井さんはふとしたきっかけでシステム開発会社B社の求人情報を見つけました。新規プロジェクトのリーダーを募集する内容です。興味を持ち、いい機会だと考えた中井さんはB社に応募し、転職活動を始めることになりました。

 B社からは、さっそく面接の依頼がありました。面接で、中井さんは自分のこれまでの経験とスキルをアピール。B社の面接官から、新規プロジェクトの内容を聞きました。中井さんの会社で扱っているものより、はるかに規模の大きいプロジェクトです。

 中井さんは、「ぜひ入社させてください!」と熱意を伝えました。そのかいあってか、結果は見事通過。次は社長面接です。

 社長面接も問題なく進み、面接終了後には社長から「ぜひ、弊社で頑張ってほしい」との言葉をもらうことができました。

正式な内定通知前に、退職届けを提出

 ここからが問題でした。

 中井さんは、社長から「弊社で頑張ってほしい」といわれたのだから内定だ! と解釈し、B社から正式な通知がくる前に、所属していた会社に退職届を提出してしまいました。そして後日、思いも寄らない連絡を受け取ったのです。

 「今回は見送らせていただきたい」。中井さんは仰天してしまいました。実は中井さんのほかにも候補者がいて、中井さんとその人を社内で選考し、結果的にその人に内定を出したとのことでした。

 中井さんは初めて気付きました。社長がいった言葉はあくまでもそのときの気持ちであって、正式なオファーではなかったことに。念のためB社に問い合わせるも、決定は覆ることなく、中井さんは失望のまま転職活動を再開せざるを得ませんでした。

 幸いなことに、その後やはりプロジェクトリーダーを募集していたC社に出合い、無事に内定をもらいました。前回の失敗を糧にしっかりと確認を行い、中井さんは転職していきました。C社に出合わなければ、中井さんの転職は失敗に終わっていたところです。


 紹介した2人の事例のように、一瞬の冷静さを欠いてしまったがために、状況が180度変わることがあります。プレッシャーに耐え、苦労して転職活動を進め、せっかく内定(あるいは内定直前)までこぎつけたのにもかかわらずです。

 転職は、人生の大きな買い物です。ウィンドウショッピングのように手軽にできるものではありません。契約手順を誤ってサインしてしまうと、取り返しのつかないことになってしまいます。

 それまでの行動を振り返り、冷静に確認を取りながら、最後まで気を抜かずに話を進めましょう。それが転職で失敗しないための秘けつです。

著者紹介

アデコ 人材紹介サービス部 コンサルタント

藤本健

兵庫県出身。大学卒業後、物流・流通業界に約8年間在籍。ソリューション営業や、数多くの流通システムの導入などを手掛ける。アデコ入社後、ITエンジニアを中心にキャリアコンサルティングに従事。前職の経験とキャリアコンサルタントの両方の視点から、個人のニーズに適したコンサルティングを心掛けている。



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