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良い仕事をするために必要なたった一つのもの田中淳子の“言葉のチカラ”(25)(2/2 ページ)

良い仕事をするために必要なものとは何だろう? 収入、やりがい、それとも?……人材育成歴30年の田中淳子さんが、職業人生の節目節目で受け取ってきた言葉たちを紹介する本連載。今回は「良い仕事をするために必要なものは何か」をシンプルに考える。

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エピソード3:愛こそ全て

 これは、30代のITエンジニアに聞いた話だ。

 システムのリプレイスを行ったときのこと。ソフトウエアもハードウエアも丸ごと交換することになったため、お役御免となったハードを撤去する場面に立ち会ったという。

 撤去作業に立ち会いながら、彼の頭の中には、これまでのあれこれがたくさん去来したそうだ。「障害が起こって、このマシンルームで徹夜したな」とか「ソフトのバージョンアップ作業では、トラブルがなくスムーズに進み、皆でほっと胸をなでおろしたな」といった思い出が次々と思い起こされたらしい。

 台車に乗せられたハードがマシンルームから出て行く時、彼は思わずその筐体をなで、「これまで本当にありがとうございました」と呟いたそうだ。

 たかが機械と思うかもしれない。けれど、彼はこのハードに対してお礼を言わずにはいられない何かがあったのだろう。「分かる、分かる」と思うエンジニアも多いのではないだろうか。

 関わっている製品やサービス、仕事をするために使っているハードやソフト。何であれ、仕事に関係するものに愛を感じること、愛すること。これこそが、良い仕事をするために大切な要素だと私は思う。

 会社に勤めていると、やりたいことや担当したいことばかりできるわけではないだろう。しかし、そういう状況でも仕事の対象に好きになれる箇所を見つけること。そうして、愛を持って、製品やサービスと向き合うこと。そうすれば、仕事は楽しくなってくるだろうし、その愛は他者にも伝わり、相手の心に響くようになることだろう。

 せっかく仕事をするなら、愛がある人と共に、苦労と喜びを分かち合いたい。

「田中淳子の“言葉のチカラ”」バックナンバー

筆者プロフィール  田中淳子

 田中淳子

グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー

1986年 上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで、延べ3万人以上の人材育成に携わり28年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。

日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。著書:「ITマネジャーのための現場で実践! 若手を育てる47のテクニック」(日経BP社)「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社)など多数。電子書籍「『「上司はツラいよ』なんて言わせない」(ITmediaのebook)、「田中淳子の人間関係に効く“サプリ”――職場で役立つ30のコミュニケーション術」(ITmediaのebook)

ブログ:田中淳子の“大人の学び”支援隊!


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