これまでMake Tokyo Meetingといっていたものが、今回からMaker Faire Tokyoに変わった。主催者からのコメントでは「本家アメリカに合わせただけ」とのことだったが、多少のイベントデザインが見られた。
かつて僕がMaker Faireの発起人デールにインタビューした際、彼は
『Maker Faireの第1法則は、「何より祭り(Faire)であること。みんな楽しもう!」ということ。テクノロジ中心のイベントなんだけど、たくさんの説明をするのではなくて、見てみればガツン!とくる、楽しめる場所にしたかった』
と語っていた。今回サイトでも会場でも大きく扱われていたクラタスは分かりやすくガツンとくるもの、これまでMakeと縁がなかった人を、会場に誘うきっかけになり得るものだ。ムーブメントを大きくしていく上で、こういうアイコンがあることはとてもよい。
プレスキットにもオススメ作品の紹介が掲載され、より紹介しやすいイベントになった。
一方で、Maker Faireの精神として
『4.Maker Faireには粗削りで尖った部分もあり、時に刺激が強過ぎることもあることは容認する。(パンクロックのようなもの)』
とされたものは、今回ちょっと控えめだったように思う。以前のMTMに見られたテスラコイルのような高電圧もの、マッチ棒ロケットのような燃焼ものは見られなかったし、飛行物体もほとんど飛ばせなかったようだ。これには会場側の制約もあるだろうし、来客数が多過ぎたこともあるだろう。今回、未来館のスタッフやオライリーの運営スタッフが、Maker Faireのために懸命に準備してくれた様子は、会場のそこここから伝わってきたが、物理的なスペースの問題はいかんともし難かった。
特に1Fの狭さは移動するのも一苦労といった感じで、動く作品のデモができるような状態ではなく、残念ながら見られなかった作品もたくさんあり、終了後のまとめやTwitterタイムラインを見ながら、「アレも見られなかった、これも写真撮れなかった」と残念がることになった。
来客数は分からないが、展示スペース自体は前回までMakeが行われていた東工大より狭く、出展数自体が、前回の260組から240組と、20組減っている。最近のMakerムーブメントの高まりを見るに、おそらく出展希望者は前回よりもだいぶ多かったに違いなく、多くの出展希望者が出展できなかったのではないか。イベントの性質上、誰でも自分の制作物を出展できることはとても大事と考えられるので、次回はゆったりとしたスペースの確保をしてもらえるといいと思う。
一方、「お祭り感」はこれまでよりさらに増大したと感じた。会場の未来館がもともとイベント会場として「ハレ」の場であること、会場内のサインや案内ボード、パンフレットなどがはっきりとクオリティが向上していたこと、有料イベントになったことによる入場管理やリストバンドなど、より「イベント感」が出てきた。逆にこれにより、これまでMakeに参加してこなかった企業やアーティストがMakeの場に出てくることは期待できる。
僕が初めてMakeのイベントを見にいったのは、2008年の第2回だ。それまでMake:の雑誌やブログでしか見たことない工作物が目の前で見られて、制作者に話を聞ける。アートとされそうなものも、研究とされそうなものも、何か笑いを取るために作ったと思われるものも、本当になんだか分からないものも、会場にごちゃごちゃとある。出展者の外見もさまざまだ。普段の姿が想像できる人も、何をやっているのかまったく分からない人もいる。でも、全体にMake:やテクノロジへの愛が、控えめだけどあふれていた。自慢する人もけなす人もおらず、お互いが互いの作品を興味深く見つめている。
「世の中に、こんなに面白いことを考えて、作ってしまう人たちがたくさんいるのか!」
「工作物を面白がれる人たちがこんなに集まるのか!」
と大興奮して、周りの人間に触れ回った。次回の第3回では10人ぐらいと連れだって見にいき、第4回からはチームラボMake部として出展する側に回り、今回の出展で5回目になる。今回のMakeで初出展になったMake部のメンバーも大いに楽しみ、次回作の構想を練っている。今回のMaker Faireによって、他にも多くの新しい出展希望者が生まれたことだろう。
ますます拡大していくMaker Faireを、来年も楽しみにしている。
Maker Faireの精神(抄訳、ドラフト版)
Maker Faireとは何かを簡単に説明することはできません。しかし、Maker Faireの主催者や参加者たちに共通する考え方があります。これは、あらゆる規模のMaker Faireに反映されるべきものです。
- Makerの行動――何を作ったか、どうやって作ったか、それを作ろうと決めた動機や思い入れなどを賞賛する。
- エキサイティングでクールなものというシンプルな視点から、Makerを選び、組み合わせ、大々的に公開する。
- Maker Faireを訪れたすべての人に、自分もMakerとなって、新しいものを作るための知識を集めて帰るのだという意識を持たせる。
- Maker Faireには粗削りで尖った部分もあり、時に刺激が強過ぎることもあることは容認する。(パンクロックのようなもの)
- 大人と子供向けの、DIYを実際に体験できる展示をできるだけ多くする。
- できる限りオープンで、誰でも参加でき、寛大で互いを励まし合う精神を大切にする。
- 出会ったクリエイティブな人たちやテクニカルな人たちが、Maker Faire終了後もつながりを持ち続け、コミュニティが広がることを目指す
もう1つ:Maker Faireは展示会であってコンテストではありません。Maker同士が競い合うのは望ましいことではありません。大切なのは、すべてのMakerが、出展作品に関して建設的で有用なフィードバックを与え合うことです。
――Make Ogaki Meetingの講演で配布された、Maker Faireの精神より
高須 正和 @tks
ウルトラテクノロジスト集団チームラボ/ニコニコ学会β幹事
次の第3回ニコニコ学会βシンポジウムを12月22(土)日 六本木ニコファーレにて行います。請うご期待!
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