あこがれのITコンサルになれたはいいけれど:転職活動、本当にあったこんなこと(14)(2/2 ページ)
多くのITエンジニアにとって「転職」とは非日常のもので、そこには思いがけない事例の数々がある。転職活動におけるさまざまな危険を紹介し、回避方法を考える。
厳しかった現実
山名さん、西田さん、そして斉藤さん。一見すると、皆さんキャリアチェンジに成功したように思えます。しかし、この3人はまたすぐ転職を考えることになりました。
私がこの3人に会ったのは、それぞれが新しい会社に入社して1年もたたないときでした。「転職したけどイメージした仕事と違った」「転職は失敗だったのではないか」、そう思って、相談に来ることになったのです。
外資系コンサルティングファームで山名さんがアサインされたのは、銀行をクライアントとする会計システムの再構築プロジェクト。最初は新たなチャレンジに意気込んでいたものの、すぐに現実の厳しさにぶつかりました。それまで培ってきた開発経験はまったく生かされず、業務知識をゼロから勉強しなくてはならなかったのです。
仕事のスタイルもそれまでとはうって変わって、業務フローの作成と顧客へのプレゼンテーションを繰り返す毎日。それは山名さんのイメージするコンサルタント像とはかけ離れたものでした。業務に詳しいクライアントからは、問題解決を強く求められます。
プロジェクトのメンバーは、年齢は近いものの、新卒でコンサルティングファームに就職し、経験を積んだディレクターです。慣れない業務に戸惑った山名さんは、同僚の信頼をまったく得られず、新入社員同然の扱いをされるようになってしまったのです。和気あいあいとしていた前職とは異なる職場の雰囲気にも、強い違和感を覚えました。そして、仕事に対してすっかり自信を失ってしまったのでした。
西田さんは転職後、すぐにオンラインゲームのプログラミングを任されたそうです。入社早々に持ち前の優れた能力を発揮して会社に貢献し、同僚からも認められ、新しい仕事は順風満帆に思えました。ところが入社して2、3カ月後、疑問が出てきたのです。「自分はこの先、ずっとプログラミングをやりたいのかな?」
そうなのです、あこがれのゲームプログラマになったまでは良かったものの、気になっていた「オンラインゲームはどのように制作されているのだろうか」という疑問は、入社後まもなく解けてしまっていたのです。いくら大好きなゲームとはいえ、その技術に対して新たな興味を見いだせなくなった西田さんは、「この転職は失敗だったのではないか」と思い始めたのです。
斉藤さんが転職後任された業務は、イメージしていたサーバエンジニアとは大きく異なるものでした。メインの業務は顧客のサーバに自社ソフトウェアを導入した後の問い合わせ、運用・監視業務でした。転職活動時に応募した職種名は「サーバエンジニア」だったものの、新規でインフラを構築する業務はアウトソーシング先が担当しているらしく、当面任されることはないとのことでした。
スーパーバイザーの経験で培ったコミュニケーション能力を生かし、即戦力となったのは良かったものの、希望していた業務内容とはまったく違うという状況です。「なんでこの会社に転職したのだろう?」。残念ながら斉藤さんは、いつしかそう思うようになってしまったのです。
転職には情報収集が必要不可欠
転職してまもなく、再度の転職を考えることになってしまった3人。いったいどのようにすれば、このことを未然に防げたのでしょうか。
山名さんは、ITコンサルタント職の現場レベルでの業務内容を具体的にイメージできていなかったことが、入社後のギャップにつながったのです。西田さんは「ゲームプログラマへのキャリアチェンジ」にのみこだわり、その後の中長期的なキャリアプランを考えていなかったのではないでしょうか。斉藤さんはあこがれの「サーバエンジニア」という職種名に飛びついてしまい、入社後に任せられる業務をしっかりと認識していませんでした。
上記のようなことを予防するためには、情報収集が必要不可欠です。業界本からの知識取得はもちろん、あこがれの職種に就いている人が知り合いにいるのであれば、相談してみるのもよいでしょう。また内定が出た後、オファー面談をしてもらうなどして転職先の業務内容をより詳しく理解すれば、転職後のリスクを最小限に抑えられます。人材紹介会社を利用するのも1つの手です。
新たな職種へのキャリアチェンジ。あこがれや希望の裏には見えないリスクがつきものです。情報収集を怠らず、慎重に行いましょう。
著者紹介
アデコ 人材紹介サービス部 コンサルタント
神奈川県出身。大学卒業後、大手独立系システムインテグレータに入社。システムエンジニアとして大手生命保険会社のシステム開発に携わる。アデコでは主にIT業界のエンジニアを中心に幅広く担当。Webや紙媒体では伝わりにくい部分をITエンジニア視点で求職者に伝えられるように心掛けている。
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