「現実逃避」で転職をしてはいけない:転職活動、本当にあったこんなこと(25)(2/2 ページ)
多くのITエンジニアにとって「転職」とは非日常のもので、そこには思いがけない事例の数々がある。転職活動におけるさまざまな危険を紹介し、回避方法を考える。
キャリアプラン構築の4ポイント
そこで、あらためて渡辺さんの今後のキャリアプランを確認することにしました。
キャリアプランを構築する際には、下記のポイントが重要です。
- 「理想分析」――将来のビジョンを明確にする
- 「現状分析」――現在の状況を把握する
- 「課題抽出」――理想と現状のギャップを分析し、課題を抽出する
- 「キャリア設計」――課題の解決方法を考える
このポイントをきっちりと押さえ、そのうえで行動すれば、転職をする際にもリスクを避けることができます。1つずつ見ていきましょう。
1.「理想分析」
ほかの誰とも異なる、あなたにとっての理想を見つけましょう。理想像がはっきりしない場合、周囲の尊敬できる人や優秀な人を探し、それを手掛かりに自分の理想像を考えてみてください。
渡辺さんの場合、理想像は「大規模なシステムの設計ができるITエンジニア」でした。
2.「現状分析」
次に、自分の現在の状況を客観的に見ることが必要です。自分の武器(スキル)を確認し、得意な技術や業務分野、業界内での位置を分析してみてください。
渡辺さんの場合、Javaを用いたWebアプリケーション開発のスキルには自信がありました。
3.「課題抽出」
理想像と現状のギャップがどこにあるのかを分析します。身近に理想像となるような人がいるなら、その人に追い付き追い越すためには何が必要かを分析してください。
渡辺さんの場合、大規模システムの開発経験、設計の経験がありません。実際にこれらを経験し、スキルを身に付けることが必要です。
4.「キャリア設計」
明らかになった課題を基に、いつ何をすれば理想を実現できるかを確認します。
渡辺さんの場合、このままの環境では課題の解決が難しい状況でした。大規模システムの開発経験、設計の経験を積むために、やはり転職を考える必要がありました。
渡辺さんの再挑戦
それまでの渡辺さんは、「コミュニケーションを避けるにはITアーキテクトになるしかない」との思い込みから、まるで現実逃避のように転職活動をしていました。なので面接で「どうしてITアーキテクトになりたいのですか」と聞かれても、説得力のある答えを返すことができなかったそうです。残念ですが、それでは連戦連敗という結果になったのも無理はありません。
しかし渡辺さんは、将来のビジョンと、現実逃避でない転職理由を手に入れました。これに従って転職活動を進めれば、渡辺さんの希望を満たす環境に移ることは不可能ではありません。
念のために面接対策を何度も繰り返し、渡辺さんが将来のビジョン、そのために経験したいことなどをスムーズに話せるようにしました。その結果、今度こそ転職活動は順調に進み、大規模システムの開発や設計を経験できるいくつかの企業から内定をもらうことができました。
最終的に選択したのは、中堅システムインテグレータでした。現在、渡辺さんは製造業向けアプリケーション開発の設計開発に携わり、サブリーダーとして活躍しています。リーダーになるために必要なスキルを磨くべく奮闘中です。当初不安に思っていたコミュニケーションに関しても、「大規模開発に携わりたい」「上流工程にかかわりたい」という希望に向かって動いているうちに、少しずつ苦手意識がなくなっていったということです。
繰り返しになりますが、ネガティブな理由だけで転職活動を行うのは危険です。失敗してしまう可能性が高くなります。
ネガティブな理由が転職の出発点だったとしても、そこから自分の理想像、現状、課題、解決方法を考え、ポジティブな転職理由に変換しましょう。
著者紹介
アデコ 人材紹介サービス部 九州支社 コンサルタント
商社のエネルギー部門に7年間勤め、営業と事業企画を経験。その後人材ビジネスにかかわり、IT・エレメカ業界に特化したヘッドハンティング会社を経てアデコへ参画。アデコでは人材紹介サービス部門、営業企画部門を経験し、現在は九州の求職者の転職支援のため奮闘中。
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