なぜ「言わない」の?――誰にでもできる、やりたいことを実現するための超簡単な方法:田中淳子の“言葉のチカラ”(27)(2/2 ページ)
1日中独り言をツブやき続ける先輩。本当は何をしたくて、何をしなければならなかったのだろう――人材育成歴30年の田中淳子さんが、職業人生の節目節目で受け取ってきた言葉たちを紹介する本連載。今回は「やりたいこと」の実現方法をお伝えする。
もっと言えばいいのに
「言いさえすれば希望がかなうのか」といえば、それも違う。
ずいぶん前、ある人が「仕事でやりたいことがあって何度も提案してみたんですが、上司に否定されて実現できなかったんです」と嘆いていた。
何回言ってみたのか聞いたところ、「2〜3回」とのこと。「ずいぶんあっさりと諦めたものだな」と私は感じた。「2〜3回で諦められることならば、心から本当にやりたかったことではなかったのでは?」とも思った。どうしてもやりたいことならば、言葉をつくし、さまざまな手段を使って、何度でもチャレンジしてみるものではないだろうか。
彼は、「うちの会社は、ダメなんです」「大事なことだって分かってないんです」と同僚や組織についてコメントしていたが、相手にしてみたら、そこまでの必要性や熱意を感じなかっただけかもしれない。
あるIT企業の役員はこう話していた。
「○○について後輩に話したけれど、伝わらない」「××を上司に提案したけれど、理解を得られない」と言う若い社員がいるけれど、意思表示の回数が少な過ぎるんですよ。
たった1回話しただけで考えが誰かに伝わり、その誰かが動いてくれるなんてないと思った方がいい。本当に大切だと思ったら、諦めずにしつこく言い続けないと。
やりたいこと、大切だと思うこと、提案したいこと。心の中に何らかの思いがあるのなら、とにかく、口に出す。1回と言わず、何度でも諦めずに言う。言い続ける。ずーっと言い続けているうちに、賛同者や理解者が表れてくれる。仲間ができれば、だんだんと周囲の力が自分を助けてくれる。
自分の思いを実現するには、時間がかかるのだ。
こいつ、本気だ。
若手ITエンジニアたちとの会合で、一人がこんなことを話してくれた。
ボクは運用を担当しているので、「効率化できることが、たくさんあるなぁ」と「改善項目リスト」を作ってみたんです。上司に話してみたら、「まぁいいんじゃない」と言ってくれたので、協力会社のリーダーにも話してみました。
でも、反応が鈍くて、協力を得られそうではありませんでした。だから、「協力会社にもメリットがある」という資料を作って、何回かに分けて説明したら、だんだんと分かってくれる人や賛同してくれる人が現れました。
「できそうなことから、やってみましょうか」となったので、まずは小さな改善に取り組んでみたら、作業が楽になったと実感してもらえました。
「自分にもメリットがある」と分かれば、協力会社のリーダーも協力してくれるようになって、その後1年で10個ぐらいの改善を実現し、効率も飛躍的にアップしました。
聞いていた他のITエンジニアは、「へぇ、スゴいなぁ」「うらやましいなぁ」と感心しきり。
彼は最後に、こう付け加えた。
入社してまだ3年なので、「若い分際で何か提案してもダメだろうな」と最初は黙っていました。でも「このままだと仕事が面白くないな」と思って、思い切って「提案がある」と言ってみました。
言ってみたら案外、人は話を聞いてくれました。もちろん、反対意見や質問もあるけれど、それへの答えを用意して、「それでも大事」だと繰り返し訴えていたら、分かってくれる人が出てきました。
「大事なことは、言わずに諦めてはいけないんだ」と思いました。「こいつ、本気だ」と思ってもらえたら、風向きは少しずつ変わってきます。
もしあなたが、やりたいことがあるのに「どうせできない」「無理だろう」と諦めかけているのなら、「まずは、誰かに話してみる」ところから始めてみてはいかがだろうか。
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筆者プロフィール 田中淳子
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー
1986年 上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで、延べ3万人以上の人材育成に携わり28年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。
日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。著書:「ITマネジャーのための現場で実践! 若手を育てる47のテクニック」(日経BP社)「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社)など多数。電子書籍「『「上司はツラいよ』なんて言わせない」(ITmediaのebook)、「田中淳子の人間関係に効く“サプリ”――職場で役立つ30のコミュニケーション術」(ITmediaのebook)
ブログ:田中淳子の“大人の学び”支援隊!
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