イノベーションの推進に向けて顧客と直接関わる方法:Gartner Insights Pickup(96)
CIOは、どうすれば業界のディスラプター(創造的破壊者)の先を行くことができるだろうか。パーソナライズ、カスタマイズ、クラウドソーシング、VoCをうまく活用すべきだ。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
Netflixは以前からアルゴリズムを使い、顧客の過去の視聴内容に基づいて、顧客が見たいコンテンツを予測することで知られている。今では、お勧めを表示する際のアートワークも、顧客が最もよく見るジャンルに応じてカスタマイズしている。
Netflixは、パーソナライズを利益につなげようと力を入れている多くの企業の一つだ。こうしたパーソナライズによって、CIO(最高情報責任者)はターゲット顧客と直接関わることができる。この直接的なやりとりから、イノベーションの新たなチャンスが生まれる。
「単純なアプローチは、イノベーションを起こすプロセスにおいて、顧客と直接の関わりを持つというものだ。これにより、顧客の要望を理解し、成功の可能性を高める。もっと手の込んだやり方は、より包括的なアプローチを考案し、個々の顧客の違いに注目し、直接的な関わりの度合いを抑えて押し付けがましくならないようにすることで的確な成果を目指す。これは(後述の)パーソナライズ、クラウドソーシング、VoC(※)調査によって実現される」と、Gartnerのアナリストで、シニアディレクターを務めるミシェル・ダースト氏は語る。
パーソナライズ
パーソナライズは、単なる映画の選択よりも大きな影響を与えることがある。例えば、米国のMayo Clinicは、がんの種類ではなく、患者のバイオマーカー(生体指標)に基づいてプレシジョンメディシン(高精度医療)を用いてがん治療を行っている。
パーソナライズは利益率という形で、また、量産品の将来のイノベーションに利用できる長期にわたって有効なインテリジェンスという形で価値を提供する。以下のような例が挙げられる。
・収益性: 価格が有名デザイナーのハンドバッグの2倍以上になるような、カスタマイズの選択肢を顧客に提供する。
・インテリジェンス: 特定の顧客層の購入データを集約することで、多くの顧客に当てはまる新しいトレンドに関する洞察を得る。
一般的に、デジタル世界では、企業はより早いタイミングで、より頻繁に顧客と関わっている。CIOはイノベーションの可能性にフォーカスすることで、そのプロセスを支援しビジネスの成長を後押しできる。
クラウドソーシング
クラウドソーシングは、社内外の誰もが新しいプロジェクトを提案したり、ユニークな視点を持ち込んだりできる素晴らしい機会であり、多くの革新的な選択肢をもたらしてくれる。クラウドソーシングを行う方法は、企業によってさまざまだ。優れたソリューションを募るコンテストを創設する場合もあれば、良いアイデアを出した人に賞金を授与したり、仕事を提供したりする場合もある。
例えば、航空宇宙企業のAirbusは、運航効率を高めようと考えた。そこでさまざまなチームにデータセットを提供し、各チームは審査委員会にアイデアを提出した。同社はこれによって多様な視点を得た。また、プレイヤーが科学パズルを解く「Foldit」というコンピュータゲームがある。Folditでは、コンピュータはプレイヤーの回答によって人間のパターン認識についての学習を深め、その知識を医学研究を支援する機械学習に応用する。
Amazon.comのオリジナル映画やテレビ番組の開発、および制作部門であるAmazon Studiosは、脚本コンテストを開催した際、2つのダイレクトマーケティング手法を組み合わせた。4000本の脚本の応募があり、同部門は14本のパイロット版(試作版)を製作し、全ての視聴者(Amazonプライム会員だけでなく)がそれらを見て、投票できるようにした。VoC調査への回答という形で行われた投票の結果を基に、どのパイロット版の本編を製作するかが決定され、「Transparent」と「Mozart in the Jungle」の2作品がリリースされた。いずれもシリーズ化され、ゴールデングローブ賞を受賞した。
VoC(顧客の声)
VoCは、特定の商品やサービスについて尋ねる調査への顧客の回答を指す。例えば、顧客がアプリを使った後で、評価を求めるプッシュ通知を受け取るといった例がある。
企業はVoCアプリケーションによって回答を集め、価値ある洞察を得ることができる。だが、CIOは注意が必要だ。こうした調査をいつ行うべきか、どうすれば最も効果的に利用できるかを理解していなければならない。例えば、尋ねる質問の数や顧客に対して調査を行う頻度は、抑えることが重要だ。
出典:Engage Directly With Customers for Smarter Innovation(Smarter with Gartner)
筆者 Kasey Panetta
Brand Content Manager at Gartner
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