Android.mkは、$( APP_PROJECT_PATH)/jni/にあり、ファイルやライブラリの情報を定義します。下記は、今回使用するAndroid.mkの内容です。
LOCAL_PATH := $(call my-dir) include $(CLEAR_VARS) LOCAL_MODULE := FireEffect LOCAL_SRC_FILES := FireEffect.c LOCAL_LDLIBS := -llog LOCAL_ARM_MODE := arm include $(BUILD_SHARED_LIBRARY)
これは、Android.mkの最初に定義しなければなりません。my-dirマクロで現在のディレクトリを指定しています。
LOCAL_PATHを除くLOCAL_xxxの定義をクリーンアップします。複数のライブラリを使用する場合などに、「先に読み込んだAndroid.mkのLOCAL_xxxの値が不本意に使用されてしまう」という障害を防ぐためにも、定義しておくことを強く推奨します。
モジュール名を指定します。この名前はユニークでなければならず、スペースを含んではいけません。NDKのビルドシステムは、ここで与えられた名前にプレフィックスとサフィックスを自動的に付与します。
今回の場合は、「libFireEffect.so」という共有ライブラリを生成します(もしここで、「libFireEffect」という名前を指定した場合、生成される共有ライブラリは「liblibFireEffect.so」ではなく、例外的に「libFireEffect.so」となることに注意してください)。
C/C++のソースリストを指定します。ヘッダファイルは含めません。C++ソースファイルの拡張子は.cppがデフォルトです。
自身のライブラリにリンクするライブラリを指定します。今回は、ネイティブでもandroid.util.Log相当のログが出力できるlogライブラリをリンクしています。
より高速なarmモードでコンパイルするように指定します。
共有ライブラリを作成する際に指定します。静的ライブラリを作成する場合は、BUILD_STATIC_LIBRARYを指定します。
上記を含むすべての定義を、以下の表にまとめておきますので、参考にしてください。
定義 | 説明 |
---|---|
LOCAL_PATH | パスを指定(最初に定義しなければならない) |
LOCAL_MODULE | モジュール名を指定 |
LOCAL_SRC_FILES | ソースファイルを指定 |
LOCAL_CPP_EXTENSION | C++の拡張子を指定(デフォルトは.cpp) |
LOCAL_C_INCLUDES | |
LOCAL_CFLAGS | Cソースのコンパイルフラグを指定 |
LOCAL_CXXFLAGS | C++ソースのコンパイルフラグを指定 |
LOCAL_CPPFLAGS | C/C++両方のソースのコンパイルフラグを指定 |
LOCAL_STATIC_LIBRARIES | BUILD_STATIC_LIBRARYで指定したモジュールでリンクしたいものを指定。共有ライブラリ作成時のみ指定可能 |
LOCAL_SHARED_LIBRARIES | このモジュールが実行時に参照する共有ライブラリを指定 |
LOCAL_LDLIBS | ライブラリビルド時に必要な追加リンクフラグ |
LOCAL_ALLOW_UNDEFINED_SYMBOLS | undefined symbolエラーを発生させたくない場合はtrueを指定 |
LOCAL_ARM_MODE | armかthumbを指定(デフォルトはthumb) |
include $(CLEAR_VARS) | LOCA_PATH以外のLOCAL_で始まる定義をクリア |
include $(BUILD_SHARED_LIBRARY) | 共有ライブラリ作成を指示 |
include $(BUILD_STATIC_LIBRARY) | 静的ライブラリ作成を指示 |
$(TARGET_ARCH) | ターゲットのアーキテクチャを返す |
$(TARGET_PLATFORM) | ターゲットのプラットフォームを返す |
$(TARGET_ARCH_ABI) | CPUとABIの名前を返す |
$(TARGET_ABI) | 「$(TARGET_PLATFORM)-$(TARGET_ARCH_ABI)」という値を返す |
表5 Android.mkの定義 |
Application.mkとAndroid.mkの準備ができたら、コンパイルを行います。コンパイルは、NDKホームディレクトリで以下のように入力します。
make APP=LiveWallpaperSampleWithJNI -B
「APP=」以降には、「apps」ディレクトリに配置されているプロジェクトを指定します。makeに渡せるオプションは以下の通りです。
オプション | 説明 |
---|---|
APP= | プロジェクト名を指定(必須) |
V=1 | ビルド時に詳細な出力を行う |
-B | 必ずリビルドする |
表6 NDKのmakeオプション |
今回のサンプルだと、ビルド時に以下のようなメッセージが表示されます。
Android NDK: Application LiveWallpaperSampleWithJNI targets platform 'android-7'
Live Wallpaperはandroid-7の機能であるため、defalut.propertiesに「android-7」と定義されています。一方Android NDK r1は、android-4までしかサポートしていないため、コンパイルが実行できません。
これを回避するには、NDKでコンパイルする際には、一時的にdefault.properties内部のandroid-7をandroid-4にします。
コンパイルに成功すると、apps/
ネイティブライブラリを.apkにパッケージングするのに、特別な作業は必要ありません。プロジェクトをビルドすれば、自動的にネイティブライブラリがパッケージングされ、特別なことをせずに実行可能です。
AndroidでJNI(NDK)を使用する場合、知っておくべきことがいくつかあるので、最後にお話しします。
AndroidのCライブラリは「libc」ではなく「Bionic」というAndroid独自の実装です。この実装はANSI C準拠ではないため、ANSI Cにあるはずのヘッダファイルや関数がないことがあります。
NDKは、Cライブラリを自動でリンク対象にするため、LOCAL_LDLIBSにCライブラリを指定する必要はありません。
また、<math.h>のために「-lm」を指定する必要はありません。NDKはpthreadを標準でサポートするため、「LOCAL_LDLIBS := -lpthread」は必要ありません。ただし、pthread_cancelはサポートされないので、注意してください。リアルタイム拡張も同様なので、「-lrt」も必要ありません。
加えて、ワイドキャラクタがサポートされていません。ヘッダファイル <linux/*.h>および
極めて小さなC++のAPIがサポートされます。提供されるヘッダファイルは以下の通りです。
また、これらは完全なものではなく、標準として必要なすべての定義を含んでいません。特に、C++の例外とRTTIは使用できません。
NDKは、C++ライブラリを自動でリンク対象にするため、LOCAL_LDLIBSに「-lstdc++」を指定する必要はありません。
関数名 | 説明 |
---|---|
__android_log_write | 文字列出力 |
__android_log_print | 文字列出力(printf相当) |
__android_log_vprint | 文字列出力(va_list版) |
__android_log_assert | アサート |
表7 ログの定義 |
JavaのLogクラスと同じく、プライオリティによる出力制御、タグ指定が行えます。
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