いじめにあっても、絶対に自分を責めないで心の健康を保つために(7)(2/2 ページ)

» 2008年11月25日 00時00分 公開
[石川賀奈美ピースマインド]
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いじめにあっても、絶対に自分を責めない

 いじめにあったと感じたら、どうすればいいのでしょうか。

 まず、信頼できる人に相談することです。職場に相談できる人がいない場合は、都道府県の労働局による相談窓口や、外部のカウンセリング機関を利用することをお勧めします。独りで抱えないことが大切です。「いじめにあった人でなければこのつらさは分からない!」と決めつけないでください。

 「自分に悪いところがあったからだ」というように、自分を責めないことが大切です。いじめにあった人の多くは、心に深い傷を受け、自分の不甲斐なさや無力感を強く感じています。こうした状況が長く続くと、うつ症状が表れたり、仕事が手につかなくなったりします。

 そうならないためには、

  1. これはいじめである、としっかり認識しましょう(「いじめにあう自分が悪い」のではありません)。
  2. いじめに苦しむ様子を見せると相手はもっとエスカレートすると考え、できるだけ知らない振りをしましょう。
  3. いじめに耐えているだけでも、相当な負荷がかかっています。普段以上に、自分に無理をさせないようにしましょう。趣味の仲間と過ごすなど、仕事以外の時間を大切にしましょう。

 そして対策を考えます。

自分にダメージを残さない

・距離を置く

 いじめる側と距離を置くことができるのであれば、なるべく接触しないことです。「自分のいないところで何かいわれるのでは」と不安になるかもしれませんが、そばにいたらいたでやはり何かいわれるものです。

・上司や同僚が相手の場合は、自分か相手かどちらかが異動する可能性を考える

 自分が異動できるのであれば、異動もやむなしです。こういう場合、人事が相談にのってくれるかどうか(状況を理解してくれるかどうか)がポイントになります。体の不調が出ている場合には、産業医や保健スタッフに相談し、一緒に人事に相談してもらうことも考えられます。

 相手が異動しそうであれば、その時期まで持ちこたえられるかどうかを考えます。つらくても、終わりが見えていれば耐えられることがあります。

・対決する

 リスクがあるのでどんなケースでも、というわけにはいきませんが、最終的には対決することも必要です。対決しないままその場を去った場合、自分の中に「私はだめな人間だ」という自己否定感を残してしまう可能性があります。たとえその場を去ることになっても、「自分なりに戦った」と思えることが大切ではないでしょうか。

 いじめの多くは言葉によるものです。ですから、言葉で切り返すことが必要です。

 「私は、○○さんのこの言葉に〜〜な気持ちになりました。私も直すべきところは直しますが、こういういい方はやめてください」とはっきり伝えるのです。

 いじめには進行段階があるといわれています。なるべく早いうちに相談し手を打つことで、深刻な状況にならないようにしたいものです。

人事に相談したAさん

 Aさんは、採用のときに世話になった人事担当者に相談しました。幸い、担当者は状況を理解し、それとなく部長と話をしてくれました。その結果、これまでのように無視されることはなくなりました。

 部長はこのところ家庭内でもめて、とてもイライラしていたようです。相変わらず不機嫌そうではありますが、「それでも、かなり楽になった」とAさん。後は徐々に職場になじみながら、仕事の実績を積み上げ、少なくとも同僚や課長には信頼されるように努力していくとのことでした。

 「異質なもの」はいじめの対象になりやすいものです。いじめ予防という観点からは、自分からなじむ努力も必要です。「誇りは大切に、愛きょうも必要」ですね。

参考:『大人社会のいじめを心理分析しよう?精神科医が明かす“魔の手”から抜け出す処方箋』  小田晋著 大和出版刊


※事例は普段の相談活動をアレンジしたものです。個人のプライバシーに配慮し、設定や状況は実際とは変えてあります。


著者紹介

ピースマインド 石川賀奈美

臨床心理士、産業カウンセラー。米国フォーカシング・インスティチュート認定フォーカシング・トレーナー。現在、ピースマインドで成人を対象に幅広い相談に応じるとともに、定期的に企業に赴き、社員のカウンセリングを行う。高齢者虐待防止に関連し、在宅介護者のカウンセリングにもかかわっている。著書に『SEのためのうつ回避マニュアル 壊れていくSE』(翔泳社刊、分担執筆)がある。

「出口のないトンネルはない。しばし、一緒に光を目指して歩いていきましょう」



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