旧バージョンのWindowsが存在しない、新しい世界に備えよう――Windows、IEのサポート終了を再確認企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(121)

本連載でも繰り返しお伝えしていますが、今回はリマインダーとして、この先1年でサポート終了を迎えるWindowsのバージョンを再確認します。

» 2022年03月29日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]

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「企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内」のインデックス

企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内

クライアント環境は、Windows 10/11だけの世界がすぐそこに

 もし、企業のオンプレミス環境で以下のOSで稼働しているクライアントやサーバがある場合、これらのOSのサポート終了期限は「2023年1月」と、後1年を切っています。

  • Windows 8.1
  • 3年目を購入した「拡張延長更新プログラム」(Extended Support Updates、ESU)でカバーされるWindows 7
  • 3年目を購入したESUでカバーされるWindows Server 2008/2008 R2サーバ

 何か特例措置があって、有償または無償でこれ以上の延長がMicrosoftから提供されるとは考えられません。早急に新システムへの移行やクラウド化など、何らかの対応策を実施してください。なお、Microsoft Azureで無償提供される「Windows Server 2008/2008 R2」向けのESUは、さらに1年の4年目が提供されることが既に決定されています。

 以下の表1は、現在サポートされているWindowsのバージョンとサポート終了日をまとめたものです。この表にないOSは、既にサポートが終了していると考えてください(注:OEM向け、IoT、MultiPoint Server、および既に開発が終了されており、2022年8月で全てのサポートが終了する「Windows Server半期チャネル」《SAC》は含めていません)。なお、ESUは正確にはサポートを提供するものではなく、重要なセキュリティ修正プログラムをサポート終了後も最大3年間提供するサービスです。

製品の種類 OS(バージョン) サポート終了日
クライアントOS Windows 11 EnterpriseおよびEducation(21H2) 2024年10月7日
Windows 11 HomeおよびPro(21H2) 2023年10月9日
Windows 10 EnterpriseおよびEducation(21H2) 2024年6月11日
Windows 10 HomeおよびPro(21H2) 2023年6月13日
Windows 10全エディション(21H1) 2022年12月13日
Windows 10 EnterpriseおよびEducation(20H2) 2023年5月9日
Windows 10 HomeおよびPro(20H2) 2022年5月10日
Windows 10 EnterpriseおよびEducation(1909) 2022年5月10日
クライアントOS
(LTSC)
Windows 10 Enterprise LTSC 2021(21H2) 2027年1月12日
(延長サポートなし)
Windows 10 Enterprise LTSC 2019(1809) 2029年1月9日
Windows 10 Enterprise LTSC 2016(1607) 2026年10月13日
Windows 8.1 2023年1月10日
Windows 7 ESU付き 2023年1月9日
サーバOS
(LTSC)
Windows Server 2022(21H2) 2031年10月14日
Windows Server 2019(1809) 2029年1月9日
Windows Server 2016(1607) 2026年10月13日
Windows Server 2012/2012 R2 2023年10月10日
Windows Server 2012/2012 R2 ESU付き 2026年10月9日
Windows Server 2008/2008 R2 ESU付き 2023年1月9日
(Azureのみ2024年1月8日まで)
表1 現在、サポートされているWindowsのバージョンとサポート終了日(赤字は1年以内にサービスが終了するOS)

 「Windows 8.1」が「2023年1月」にサービスを終了すると、WindowsクライアントOSは「Windows 10」または「Windows 11」だけの世界を迎えることになります。「Windows 7」のときとは異なり、Windows 8.1向けのESUが提供される予定はないようです。

 「2023年10月」には、「Windows Server 2012/2012 R2」の延長サポート終了という大きなタイミングが控えています。こちらについては、最大3年のESUがオンプレミス向けには有償(1年ごとに購入)で、Azure(Azure Stackを含む)では無料で提供されることが発表されていますが、オンプレミスでESUを購入する場合は台数によっては非常にコストがかかります。

 一方、Azureの無料のESU特典を利用するためには、オンプレミスのサーバをクラウドにリフト&シフトするという作業のために追加的なコストがかかる場合があります。既にオンプレミス側で仮想マシンとして動作している場合は、比較的簡単かもしれません(クラウドへのアップロードとクライアントのアクセス先の変更など)。しかし、物理−仮想(P2V)変換が必要な物理サーバの場合は簡単にはいかないでしょう。また、オンプレミスのハードウェアに依存するシステム(例えば、帳票大量出力用のサーバ接続のプリンタなど)は、さらに困難になります。

デスクトップアプリとしてのIE終了まで、後2カ月と少し

 サポート終了が近いWindowsのバージョンよりも、先に来るイベントとして、デスクトップアプリとしての「Internet Explorer(IE)」のサポート終了があります。

 これは、サポート対象のWindows 10およびWindows 8.1に対して、「2022年6月15日」(米国時間)以降(米国時間6月14日リリースの累積更新プログラムには含まれないと思われます)の累的更新プログラムによって実施される予定です(Windows ServerおよびLTSC《長期サービスチャネル》版のWindowsは対象外)。

 それ以降、IEのバイナリを実行しても、デストップアプリとしては起動できなくなり、代わりに「Microsoft Edge」が起動するようになります。既にWindows 11では最初からその状態になっています。

 IEのサポート終了は、あくまでもデスクトップアプリとしての利用であり、IEのコンポーネントは引き続き搭載され(Windows 11にも)、Microsoft Edgeの「IEモード」で利用されます。

 IEでなければ利用できないレガシーなWebサイトやアプリがある場合は、期限が来る前にMicrosoft EdgeのIEモードで利用できることを確認してください。

 Microsoft Edgeの「設定」→「既定のブラウザー」(edge://settings/defaultBrowser)を開き、「Internet Explorerモードでサイトの再読み込みを許可」を「許可」に設定することで、「…」メニューの「Internet Explorerモードで再読み込みする」が利用可能になります。

 IEモードでの利用に問題がなければ、「設定」→「既定のブラウザー」の「Internet Explorerモードページ」のリストに追加したり、本連載で以前に説明した「サイトリスト」を企業内で集中管理したりするとよいでしょう(画面1〜3)。

画面1 画面1 サイトやアプリのテストのためにIEモードでの読み込みを可能にする
画面2 画面2 IE向けサイトをIEモードで読み込み、動作を確認する(この例は、ActiveXコントロールを使用するIE向けの「Microsoft Updateカタログ」サイト)
画面3 画面3 「次回、このページをInternet Explorerモードで開く」をオンにすると、「設定」→「既定のブラウザー」の「Internet Explorerモードページ」のリストに追加される

 Windows 11でIEを起動する簡単な方法が既に発見されていますが(おそらく2022年6月以降のWindows 10やWindows 8.1でも利用可能な)、正規のIEモードを利用する場合と違いはないはずです(画面4)。

画面4 画面4 Windows 11でIEを起動する方法は既に発見されているが、使用されているIEのコンポーネントは同じものなので、このようなサポートされていない方法と、正規のIEモードのレンダリングに違いはないはず(つまり、意味のないこと)

 既にサポートが終了したテクノロジー(「Adobe Flash」や「Microsoft Silverlight」など)や、古いJavaランタイムへの依存など、サイトやアプリによっては新しいOSではIEやIEモードでは利用できなくなっている場合もあります。抜け道を探すのではなく、適切な方法で対処しましょう。

 どうにもならない場合は、ローカルの仮想環境(Hyper-Vなど)やサーバのVDI(仮想デスクトップインフラストラクチャ)環境に塩漬けしたレガシーOS環境を準備し、IE専用サイトのローカルサイトの利用に限定した利用環境を準備するといった方法もあります。その場合、レガシーなOS環境のセキュリティ確保には十分配慮する必要があります。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2009 to 2022(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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