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圧迫面接にも理由がある?転職活動、本当にあったこんなこと(3)(2/2 ページ)

多くのITエンジニアにとって「転職」とは非日常のもので、そこには思いがけない事例の数々がある。転職活動におけるさまざまな危険を紹介し、回避方法を考える。

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ギャップを生んだ原因は

 私は田中さんに、「今回の転職が失敗した原因はどこにあるのでしょうか」と尋ねました。早期転職の場合、失敗の原因を本人がどのように受け止めているかは今後の転職コンサルティングで非常に大事になってくるからです。田中さんによると失敗原因は3つでした。

  1. 仕事内容をよく確認しなかった
  2. 採用内定が出たことに浮かれてしまって、安易に入社を決めてしまった
  3. もう一方の選択肢を検討しなかった

 私の考えも、田中さんの自己分析と同じでした。「転職はタイミングが命!」そんな意見もありますが、最終的に転職先を決めるときにはよく考えなければなりません。

 入社してから分かったことですが、田中さんの転職した中堅SI企業は金融機関向けの仕事はあまり実績がなく、大型コンピュータメーカーからの下請けが中心で、オープン系プロジェクトの受注はあまり活発ではなかったのです。

 この点も含め、田中さんは断ってしまった大手SI企業への転職をもっと真剣に考えれば良かったと感じていたようでした。そこの金融担当部門が汎用機システムからオープン、Web系まで幅広く事業展開していることは業界でも有名だったからです。

面接を辞退した企業に再チャレンジ

 私は、その大手SI企業に再度チャレンジすることを勧めました。田中さんは「そんなことできるんですか!」と驚いたようでした。

 もちろん、面接の申し出を断ったのですから、再度選考してもらえる可能性は低いです。でも過ちを認め、それを文書にまとめて先方の人事担当者に送れば、もしかしたらもう一度だけチャンスをもらえるかもしれない。少ない可能性だが賭けてみる価値はあるのではないかと私はいいました。

 その夜、田中さんから電子メールで大手SI企業に送る志望理由書が届きました。私はさっそく会社にアプローチし、田中さんの意思を伝えました。そして、再度面接しましょうという好意的な返事をもらうことができたのです。数日後、田中さんは十分な準備をして面接に臨みました。面接官は人事担当の役員で、これが最終選考といわれたそうです。

 結果は合格でした。ダメでもともとのつもりが採用内定を獲得してしまったのです。前回の過ちを犯さないようにと、私は企業に採用内定の内容説明を仕事内容を中心に行ってもらうようにお願いしました。入社意思確認前の面談が設定され、田中さんが先方へ赴くと、打ち合わせのテーブルには1次面接を担当した部長SEが座っていたそうです。田中さんの技術不足を厳しく指摘したあの面接官です。

 田中さんは内心気まずい思いでしたが、部長SEは意外にも笑顔で「今日はご足労いただいてありがとうございます。金融部門の責任者である私から田中さんへのオファー内容を説明させていただきます」と好意的な態度で迎えてくれました。

 田中さんは1時間にわたって、会社の金融部門の現在までの実績、今後の経営方針や田中さんに期待したいことなどを聞くことができたそうです。そして最後に部長SEは「ぜひ一緒に働いてもらいたいのですが、いかがでしょうか?」と田中さんに問い掛けました。

 「この会社なら、自分のやりたい仕事ができる」と確信し、経営方針にも納得した田中さんは、部長SEに入社意思を伝えました。その後で、前回の面接時の圧迫的な質問について聞いてみました。

 「私はあの面接は不合格だったと思ったのですが……」

 「そんなことはないよ、君は意欲もあるし、金融機関のグループ会社で培った経験は当社も欲しいところだ。1次面接の結果は君に届かなかった?」

 「でも汎用系システムの経験ばかりでオープン系技術が不足していたことを、厳しく指摘されたと思います」

 「技術不足を指摘したかったのではなく、新しい技術を身に付けることに本気で取り組めるか知りたかっただけだよ」

 答えを聞いた田中さんは、あらためて転職活動の難しさを実感したそうです。

圧迫面接にも理由がある場合も

 転職活動において、このように判断を誤ってしまう事例は多くあります。売り手市場のいまだからこそ多くなってきているようにも思えます。

 人を疑うのは面白くないことではありますが、面接で好意的な印象しか受けなかったときこそ、よくその企業を研究すべきです。面接官によっては、厳しい質問をしてその人の真意を探ってくることもあります。逆にあまりにも簡単に採用内定を出すため、人材の質が落ちている企業、モチベーションを同じくしない従業員の集まりになってしまっている企業も多くあります。

 採用内定を勝ち取った後でも、多くの場合は希望すれば自分の上司になる人と面談することができます。上司がどんな人か、自分に合うかどうか、確認する場は面接の後にもあります。

 やすきに流れ転職先を決めてしまっては成長は見込めません。圧迫面接から逃げないことも、転職の成功につながる場合があるのです。

著者紹介

アデコ

山口孝之

千葉県出身。大学卒業後、建設会社にて人事、経理などの管理業務を経験。その後ITエンジニアに特化したスカウト型の人材紹介会社に転職し、キャリアアドバイザー業に従事する。その後アデコに参画。キャリアアドバイザーとしては一貫してIT業界を担当。ギャップのない転職を支援するための情報収集能力、転職者側と採用企業側の両方の目線で行うカウンセリングには定評があるという。



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