「ウチに来てくれ」といったじゃない:転職活動、本当にあったこんなこと(9)(2/2 ページ)
多くのITエンジニアにとって「転職」とは非日常のもので、そこには思いがけない事例の数々がある。転職活動におけるさまざまな危険を紹介し、回避方法を考える。
どこで失敗したのか?
こんな立場にはなりたくないような現実ですね。ここで、中山さんの転職活動のポイントを検証してみましょう。
転職を考えたきっかけ
初めての転職であるにもかかわらず、今後のキャリアプランと自社の業界での位置を、非常にしっかりと分析しています。この時点での問題はないと思います。
この「なぜ転職をするのか?」というところは非常に大事なポイントです。皆さんも明確なビジョンを持って挑みましょう。
会社選び、ターゲットの絞り込み
中山さんは、インターネットでの検索情報とそれまでの業界知識を基に、応募企業を10社ほどピックアップしたとのことでした。これらの企業をあらためて精査したところ、大体の企業で「より大きいプロジェクトの経験」「年収アップ」はかないますが、「コンサルテーション」については残念ながら実現が難しいと思われました。
個人でもさまざまな情報を得られる時代ではありますが、情報が多すぎるために真に役立つ情報がぼやけることもあります。1人だけの情報収集にも限界があります。
転職活動において冷静であったか
中山さんは最終面接で、役員から「うちに来てくれ」といわれ、イコール「内定」と早合点してしまいました。これが中山さんの最大の失敗ではないかと思います(参考記事:「その『内定』、本当に有効ですか」)。
確かに第1希望の会社で役員からそのようにいわれれば誰でもうれしいはずです。しかし冷静になってみれば「内定」とはいわれていませんし、筆記テストの結果が出る前の暫定的な最終面接であったという事情もありました。
実際に内定をもらったときには、書面、少なくとも電子メールで証拠を残しておきましょう。もしものときに役立つはずです。
退職意思表示のタイミング
本人の思い込みを基に退職意思を伝えていましたね。やはり通常は正式な内定を得て、労働条件の確認・スタート日の確認などを行い、すべてにおいて問題ないことを確認してから伝えるべきです。
ちなみに中山さんはA社からの不採用連絡の後、上司に事情を話したそうですが、すでに後の祭りで「いまからそういわれても遅いよ。退職処理は済んだ」と冷たい態度を取られたそうです。これはやむを得ないことで、「辞める」といったことで以前のような信頼関係がなくなってしまったのです。
中山さんの再挑戦
このような事情をヒアリングした後、私は中山さんとともにあらためて転職のポイントを洗い出し、今後の転職活動について再確認をしました。そして将来、コンサルテーション要素を含む業務に携われる企業をピックアップしました。
こうして中山さんは、再チャレンジへと動きだしました。
中山さんは前回の失敗を反省し、早合点はしないこと、不明点は随時相談しながら活動をすることを私と約束しました。
その後複数社で順調に選考が進みました。途中途中でしっかりと報告をしてもらい、不明点の洗い出しや将来望むキャリアの方向性に合うかなどのサポートもした結果、中山さんは無事、流通系に強みのある大手SIerから内定を勝ち取ることができたのです。
再挑戦した中山さんが成功した理由は、以下の3点ではないかと思います。
- 失敗を謙虚に受け止めたこと
- くよくよせずに再挑戦したこと
- 不明点をそのままにせず、相談によって解決を図ったこと
何でもないことのようですが、意外と気付かず、また実行しづらいポイントではないでしょうか。
あらためて皆さんの参考にしてほしいと思います。
著者紹介
アデコ 人材紹介サービス部 コンサルタント
1969年生まれ、大阪府出身。私立理系大学卒業後、精密機器メーカーにてソリューション提案営業を経験し、2000年にアデコへ入社。現在、IT系人材・ITエンジニアを専門にキャリアコンサルティングを担当。営業としての観点とキャリアコンサルタントとしての経験から、1人1人のニーズをくみ取り的確な情報提供・アドバイスをすることを念頭に転職支援を行っている。CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)資格取得。
- 退職を引き止められたときの「落とし穴」にご注意
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