どうせタダでしょ? 人材紹介会社10社利用します:転職活動、本当にあったこんなこと(13)(2/2 ページ)
多くのITエンジニアにとって「転職」とは非日常のもので、そこには思いがけない事例の数々がある。転職活動におけるさまざまな危険を紹介し、回避方法を考える。
出会いの可能性を広げたい
蓮見さん(仮名)は31歳。クライアント企業からの受託によってWebサイトを構築する企業に所属していました。
業務経験を積んでいくにつれ、心血を注いだ、わが子のようなWebサイトと短期間で離れることに物足りなさを感じるようになってきました。今度は自社サイトの構築にかかわってみたいと考え、転職を志したそうです。
大学時代の友人が以前、人材紹介会社を利用して転職を成功させたのを知っていたこともあり、さっそく人材紹介会社からスカウトが受けられるWebサイトに登録。いくつかの人材紹介会社からスカウトのメールを受け取りました。
蓮見さんはできるだけたくさんの求人情報を得て、相性のいい企業との出合いの可能性を広げたいと考えていました。そこで、まずは時間の許す限り多くのキャリアコンサルタントと会ってみようと決意します。
私もそのうちの1人として、すでに多くのコンサルタントとの面談を終えた蓮見さんと会うことになりました。
多くの人材紹介会社に足を運んでみた蓮見さんが一番驚いたのは、同じようにキャリアコンサルタントやキャリアアドバイザーと名乗っている人たちなのに、個性も考え方もあまりに異なることだったそうです。印象に残った出来事を聞いてみると……。
わずか数分の質問の後に、大量の求人情報がプリントアウトされ、「この中から気に入った企業を選んで応募してください」とだけ説明されて、面談が終了してしまった。たくさんの求人情報がもらえたのはうれしいけど、これって本当に自分に合った情報なの?
どうしても特定の企業に応募をさせたいらしく、キャリアアドバイザー、その企業の営業担当、キャリアアドバイザーの上司と名乗る人物が続々と登場して、応募するというまで帰してもらえないような雰囲気になった。頑として断ったけど……。
どう見ても自分よりずっと若いコンサルタントから、「あなたの考えは甘い」「そんなことでは転職は成功しない」とかなり頭ごなしに叱責された。ちょっとムッとした(笑)。
数々の経験をする中で、蓮見さんは自然と「自分が人材紹介会社に期待したいことは何だろう?」と考えるようになりました。そして、「それをかなえてくれる会社を利用すればいいんだな」と気付いたそうです。
転職活動のスタイルに気が付いて
当初はできるだけたくさんの求人情報を得たいと考えていた蓮見さんですが、どの人材紹介会社からも同じような企業の提案が続いたため、同時に多くを利用する必要はなさそうだと判断。業務が多忙で、面接などの日程調整が難しいという現状もあり、面倒がらずにしっかりとサポートしてくれる、「まめそう」なキャリアコンサルタントがいる会社に絞り込んでみようと考えたそうです。
蓮見さんは、「まめそうで、しかったりしなさそうで、無難」なキャラクターを見込んで、その後の転職活動のサポートを私1人に任せてくれました。
結局6社の企業に応募し、5社から面接のオファーがあったため、私は完全に売れっ子タレントのマネージャ状態。事前にスケジュールを預かっておきつつ、予定変更の際にはリアルタイムで携帯電話からメールを送信してもらい、すぐに企業側に相談の連絡を入れるなど、双方の努力の甲斐もあって、本命の企業から無事に内定をいただくことができました。
蓮見さんの業務経験とまじめな人柄からすれば、結果はごくごく妥当なものでした。しかし、蓮見さんが自分自身の転職活動に必要なサポートをしっかりと見極めていなければ、多忙な業務に足を引っ張られ、万全な体制で面接に臨むことができなかった可能性もありました。
私自身、人材紹介会社の利用にも、転職と同じように求めるテーマをクリアにしておくことの重要性を痛感したケースです。
人材紹介会社に求めるもの
人材紹介会社のサービスは、ただ求人情報を提供するだけのものではありません。そして私たちのもとを訪れる人たちにとって必要なサポートも、事情により違いがあるのは当然のことだと思います。
さまざまな求人情報の紹介を受けたいと思い、たくさんの人材紹介会社を利用することは、決して悪いことではありません。しかし、それぞれの会社をまたいだ転職活動をしっかりとコントロールできるような時間が必要になります。
人材紹介会社に求めることをきちんと把握し、その役割を十分に果たしてくれそうな人材紹介会社、キャリアコンサルタントを見つけられれば、1人の転職活動では届かなかった目標に手が届く可能性も高まると思います。
人材紹介会社を活用する最初の一歩は、実際に足を運んでみることです。一度、キャリアコンサルタントに目前の転職のことだけではなく、将来のキャリアプランについてじっくりと相談してみてはいかがでしょうか。自分というパズルに必要なピースが見つかるかもしれませんよ。
著者紹介
アデコ 人材紹介サービス部 コンサルタント
1974年埼玉県生まれ。大学卒業後、テレビゲーム雑誌、パソコン雑誌の編集・ライターを経て、2001年アデコに入社。スーパーバイザーとして、通信キャリアや大手航空会社のユーザー系システム開発企業にて派遣スタッフの管理を担当し、厚い信頼を得る。現在はキャリアコンサルタントとして、IT関連職種を中心に転職希望者のサポートを行っている。日本産業カウンセラー協会認定 産業カウンセラー、日本産業カウンセラー協会認定 キャリアコンサルタント資格取得。
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