「自分を過大評価しない」が転職成功の道:転職活動、本当にあったこんなこと(27)(2/2 ページ)
多くのITエンジニアにとって「転職」とは非日常のもので、そこには思いがけない事例の数々がある。転職活動におけるさまざまな危険を紹介し、回避方法を考える。
Sさんの年齢とスキルのギャップ
私はSさんに対して、「少々厳しいようですが」という前置きとともに、
- エンジニアとしてのスタートが少し遅かったこと
- 地方都市特有の仕事により、かかわったプロジェクトの規模が小さいこと
をSさんの弱点として伝えました。さらに、以上のことから38歳という年齢とスキルのバランスが取れていないと評価されることが多く、望むような高待遇は簡単には得られないと話しました。
転職市況は日々変化しており、Sさんにスカウトのメールが来た時期と比べて採用数は減少しており、その分選考が厳しくなっているという現状も、同時に伝えたのです。
Sさんは、失礼なことをいった私に気分を害することもなく、「地方にいると、本当に情報が入ってこないんですね。これまでの就職活動の方針を見直してみます」とアドバイスを聞き入れてくれました。
それまでのSさんは、東京に本社を持つ待遇の良い大企業に絞り込んで転職活動をしていました。しかし小規模であってもやりがいのある会社、知名度は低くても成長する見込みのある会社はあります。高待遇への望みを少し下げただけで、可能性は一気に広がりました。
Sさんの年齢とスキルのギャップはやはり大きく、転職活動には苦労しました。しかしそれまでとの大きな違いとして、興味のある会社であれば積極的に応募しようという姿勢が見られるようになったのです。
初めて会ってから半年以上がたったころ、Sさんからメールが届きました。
「おかげさまで、転職が成功しました。来月退社予定です。以上のことから、そちらで選考が進んでいた会社については辞退させてください。横山さんからは、少々厳しいアドバイスもありましたが、仕事以外であればもっと親しみやすい人だと思っております。もしよろしければ、今後ともお付き合いをお願いします」
残念ながら、私が紹介した企業に勤めることにはなりませんでしたが、とてもうれしいメールでした。もともと率直で親しみやすい人柄のSさんは、高望みさえしなければ必ず転職に成功する人だと、私は確信していました。
転職では、自分を客観視することが必要
自分のスキルや性格を客観的に判断することは、とても難しいことだし怖いことです。私自身も、見たくない事実や目を背けたい現実に日々直面しています。
しかし、転職という人生を大きく変えるイベントにおいては、しっかり自分自身を認識することが必要なのです。マニュアルは数多くありますが、転職はパターンでくくれるものではありません。100人いれば100通りの、1000人いれば1000通りの転職活動があるのです。自分自身と現状を把握し、作戦を立てて臨みましょう。
著者紹介
アデコ 人材紹介サービス部 コンサルタント
横山光紀
国立大学工学部大学院卒業後、ベンチャー企業で産学官の共同研究に従事。その後「物づくりよりも人づくり」にやりがいを見いだし、総合エンジニアリング企業の人事部に転職。北海道、東北を中心におよそ8年人材採用にかかわり、最終的には責任者として新入社員の教育・人事・評価制度整備を担当。2006年アデコに転職。前職からの通算で、これまでに出会った人材は1万人を超えるという。
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- だって、忙しいんだもん
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