それで、あなたはどうするの?――仕事の引き継ぎをしないと機会損失を被るのは誰か:田中淳子の“言葉のチカラ”(23)(2/2 ページ)
人材育成歴30年の田中淳子さんが、職業人生の節目節目で先輩たちから頂いてきた言葉たちを紹介する本連載。今回は「お客さまのために」と仕事を一人で抱え込んでいた淳子さんに先輩が掛けてくれた言葉を紹介する。
「『後輩がどうなるの?」じゃないよ。後輩が育たないじゃないか、なんて視点じゃなくて、淳子さん自身はどうなるの? 今後どうなっていくの? 今のままでいいの? それを守っているだけでいいの?」
「いや、それは……」
「どんどん手放していかないと、淳子さんも新しいことにチャレンジできないんじゃないの? 自分の能力が今のところでとどまることにならない? どんどん能力を上げていくためには、今と違う自分になるためには、そんな小さなプライドは捨てて、さっさと仕事も手放して、淳子さんは淳子さんで、まだ後輩はやっていないようなことに取り組んでいく方が健全じゃないのかな」
「……はい」
誰かのためではなく、自分のために
「自分がやった方が早い」「この分野を誰かに任せるなんて嫌だ」と思っているITエンジニアは多いだろう。たゆまぬ努力で、知識やスキルを身に付けた人であれば余計にそう考えてしまうだろう。
けれど、いや、だからこそ「それを続けていると、私はどうなるの?」を自問自答してみよう。仕事を引き継げば、誰かを育てることになる。しかし、もっと大切なのは「自分の能力をより向上させられる何かに取り組む機会を得られる」ことではないだろうか。
「そんなことでは後輩が育たないよ」と言われるよりも「で、あなたはどうなるの?」と言われる方が衝撃的だ。手にした仕事を守っていることは、自分を守っていることにはならない、と教えてくれるからだ。
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筆者プロフィール 田中淳子
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー
1986年 上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで、延べ3万人以上の人材育成に携わり28年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。
日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。著書:「ITマネジャーのための現場で実践! 若手を育てる47のテクニック」(日経BP社)「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社)など多数。電子書籍「『「上司はツラいよ』なんて言わせない」(ITmediaのebook)、「田中淳子の人間関係に効く“サプリ”――職場で役立つ30のコミュニケーション術」(ITmediaのebook)
ブログ:田中淳子の“大人の学び”支援隊!
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