短時間のノード障害に耐える仮想マシン――フェイルオーバークラスターの新機能(その1):vNextに備えよ! 次期Windows Serverのココに注目(30)(3/3 ページ)
Windows Server 2016 Technical Preview 3(TP3)では、「フェイルオーバークラスタリング」に「Virtual Machine Resiliency(仮想マシンの回復性)の向上」という新機能が追加されました。この機能により、クラスターで発生する瞬間的な障害は許容され、仮想マシンのダウンタイムがさらに縮小されることが期待できます。
4分経過でノード停止、1時間に3回孤立は2時間隔離
障害が4分以内に解消しなかった場合、そのノードは「Down(停止)」状態になり、仮想マシンがアクティブなノードに自動的にフェイルオーバーされて復旧します。また、孤立する状態が1時間に3回発生すると、そのノードは「Quarantine(隔離)」状態に置かれ、その後の2時間(7200秒)はクラスターに自動復帰することができなくなります(画面6)。
2時間以内にクラスターにノードを復帰させるには、Windows PowerShellで次のコマンドラインを実行して「Quarantine」フラグをクリアします(画面7)。
Start-ClusterNode -CQ(または-ClearQuarantine)
仮想マシンの回復性のパラメーターは調整可能
仮想マシンの回復性の対象となるエラーや待機時間、回数のしきい値は、クラスターの以下の設定に定義されています(表1)。
設定 | 説明 |
---|---|
ResiliencyLevel | 回復性レベル。既定は「2」(AlwaysIsolated)で全ての不明な失敗が対象。「1」にすると既知の理由のみを対象とし、不明な失敗はすぐに回復処理を開始する |
ResiliencyPeriod | 回復まで待機する時間。既定は「240」秒(4分)。「0」にすると、Windows Server 2012 R2以前と同じ動作になる |
QuarantineThreshold | 隔離するまでのしきい値。既定は「3」回/時間 |
QuarantineDuration | クラスターからの隔離時間。既定は「7200」秒(2時間) |
表1 回復性の対象となるエラーや待機時間、回数のしきい値は、クラスターの設定に定義されている |
これらの設定は、Windows PowerShellで変更することができます。例えば、Windows Server 2012 R2以前のHyper-Vホストクラスターと同じ動作にする(仮想マシンの回復性を使用しない)場合は、次のコマンドラインを実行します(画面8)。
(Get-Cluster).ResiliencyDefaultPeriod = 0
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筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手がける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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