具体的には、心身症はどのように発症するものなのでしょう。
例えば……、
上記のような話を聞いた方、経験した方が多いのではないでしょうか。
これらが心身症の代表的な例です。このほかにも、さまざまな病気が心身症である可能性があります。
消化器系 → 胃・十二指腸かいよう、過敏性腸症候群
循環器系 → 狭心症、心筋こうそく
呼吸器系 → 気管支ぜんそく
皮膚系 → 円形脱毛症
耳鼻咽喉系 → メニエール症候群
糖尿病や本態性高血圧といった、いわゆる生活習慣病の中にも、心身症として起きている場合があるようです。
ストレスの多い生活では、体にいい食事を工夫したり、運動を取り入れたりする余裕もなくなります。逆に飲酒、喫煙がストレス発散方法となり、体に悪影響を及ぼすこともあるでしょう。
このような場合は、病気自体の治療とともに、生活のあり方を改善することが必要です。それにより睡眠状態や栄養状態などの身体状況が改善され、ストレス抵抗力もアップしていきます。
前回紹介した自律神経失調症(交感神経と副交感神経のバランスが崩れることによる不調)と心身症は、混同されることが多いようです。
心のストレスが原因で体の症状が出るのが心身症ですが、その症状として自律神経失調症状があれば「自律神経失調症」と診断されることもあります。
さらに分かりにくいのが、心身症と「心因性の身体症状」といわれるものの違いでしょう。
とても嫌なことを聞かされたようなとき、急に耳が聞こえなくなることがあります。これは「心因性難聴」といわれるものです。この場合、耳の検査をしても異常は見られません。神経症の症状の一種であり、心の病気であるといえます。
一方、体の病気である心身症としてのメニエール症候群などでは、検査をすると内耳内の水分代謝の異常などが見られます。
体の病気である心身症ですが、だからといって症状にのみ気を取られていると、なかなか良くならないことがあります。症状が消えたとしても、原因であるストレス自体に対処しないと、別の症状が出てくる場合があります。病院通いが続くことにより新たなストレスを生むこともあります。心と体、全体としての自分を振り返ることが大切です。
次回は、心身症の具体的な事例、対処方法について紹介したいと思います。
ピースマインド 石川賀奈美
臨床心理士、産業カウンセラー。米国フォーカシング・インスティチュート認定フォーカシング・トレーナー。現在、ピースマインドで成人を対象に幅広い相談に応じるとともに、定期的に企業に赴き、社員のカウンセリングを行う。高齢者虐待防止に関連し、在宅介護者のカウンセリングにもかかわっている。「出口のないトンネルはない。しばし、一緒に光を目指して歩いていきましょう」
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