@IT広告特集企画
収益増大のためのCRM戦略(6)
小山健治
2002/2/15
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テーマ6:CRMを一括導入したい
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解決ツール:統合型CRM製品(スイート製品) |
統合型CRM製品は、製品ごとの開発コンセプトにしたがって、さまざまなモジュールにより構成されている。それらの機能を十分に活用し、CRMを実現するには、BPRを含めた全社的な取り組みが必要不可欠となる |
これまでの連載を通じて、さまざまな目的や問題を切り口としたCRMのソリューションやツールを取り上げてきた。
しかしながら、CRMが本来目的としているのは、多種多様なチャネルを通じて顧客とのリレーションを確立し、1人1人の行動履歴やニーズを正確に把握するとともに、より適切かつ迅速な対応を実現する、顧客中心のビジネスモデルを構築することであることを忘れてはならない。CRMは部門や業務ごとの部分的なソリューションではなく、経営戦略に基づいて全社的に展開する「トータル・ソリューション」として取り組むべきものなのである。
適切かつ迅速な顧客対応を行うためには、経営、マーケティング、販売、製造、サポートなど、企業のあらゆる業務で、顧客に関する情報を共有し、一元管理できる環境を整えることが必要だ。また、販売といった1つの業務だけを取り上げても、営業担当者、店舗、コールセンター、Webサイトなど、さまざまなチャネルにおいても同様に対応できていなければならない。
そう考えると、一貫したCRMシステムを構築する上でもっとも最適な選択だと思われるのが、「統合型」と呼ばれるCRMソリューションである。
ひと口に統合型といっても、あまりに漠然としすぎてその実像はつかみにくい。統合型CRMと呼ばれる製品が、具体的にどのような機能を備えているのか、ここではブルーマティーニソフトウェアの「Blue
Martini 4」をサンプルとして取り上げ、その中身を検証してみたい。
Blue Martini 4は、全部で24個のモジュールで構成され、以下のような4つのサブシステムに分類される。
1)管理サブシステム
製品管理、コンテンツ管理、顧客管理、アカウント管理、契約管理、見積管理、キャンペーン管理などのモジュールで構成。顧客とのインタラクティブなコミュニケーションならびにその管理を実現する
2)分析&マーケティングサブシステム
データウェアハウス、レポーティング、データ変換とクレンジング、データマイニング、データビジュアライゼーション、パーソナライゼーションなどのモジュールで構成。ターゲット設定のためのルールを作成し、適切な顧客に、適切な製品を、適切な環境のもとで提供することを支援する
3)インタラクションサブシステム
Webサイト、コールセンター、電子メール、携帯端末、マーケットプレイス、チェックアウト、オーダー処理、顧客コラボレーションなどのモジュールで構成。時間や場所、手段を顧客が自由に選択できるインタラクションを実現する。これにより、1人1人の顧客に対して、それぞれ高度にターゲット設定されたコンテンツ提供を行う
4)統合サブシステム
ツール、インテグレーション、ワークフローなどのモジュールで構成。サードパーティ製品との統合を実現し、CRMの機能を備えた効率的なeビジネス運営を支援する
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モジュールの組み合わせで実現される、業務に密着したアプリケーション |
これらの24のモジュールを使って、Blue Martini 4は業務に密着した以下のような4つのアプリケーションを展開している。
1)ブルーマティーニ・コマース
ビジネスや消費者を対象に直接販売を行うためのeコマースアプリケーション。パーソナライズされた訴求効果の高い顧客インタラクションにより、販売力を向上させる。顧客は、Webや携帯端末を通じたインタラクションにおいて、時間や場所、手段を選ばずにショッピングができる。また、Webサイトの日々の運営管理が容易になることで、IT技術者は、機能の差別化などの高度な作業に集中できるようになる
2)ブルーマティーニ・マーケティング
総合的なマーケティング・ソリューション。顧客像の把握および顧客行動のパターンや嗜好を分析することにより、これらの情報をパーソナライゼーションやマーケティングに役立てる。重要度の高い顧客の特定と分類、最適化により、ターゲティング・キャンペーンの実行および高いレスポンス率を実現する。また、オーダー数の増加と顧客確保を目的にしたインタラクションのパーソナライズ、新アイデアを迅速にテストするためのフォーカスグループの作成などが可能
3)ブルーマティーニ・チャネル
販売チャネルやオンライン・マーケットプレイスでの収益を最大化するためのチャネル管理ソリューション。リセラーが製品を販売する際に必要となる情報やツールを、一元的に管理して提供する「パートナーポータル」を構築する。さらに、電子メールキャンペーンを通じたリセラーへの支援や、オンライン・マーケットプレイスとの統合により、販売機会の向上および製品の差別化を図る
4)ブルーマティーニ・サービス
コールセンターやWebを通じた顧客サービスを実現する。顧客サービス担当者は、オンライン上の製品情報を利用して効果的な製品案内や営業を行うことが可能となり、売り上げの向上と販売量の拡大が期待できる。また、さまざまな質問や要望に対応できるため、顧客満足度を向上させる
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CRM製品の導入には、BPRを含めた全社的な取り組みが必須 |
CRM製品はベンダーごとに、その製品コンセプトや技術の展開方向が異なっているため、当然のことながら、サポートしている機能や適用範囲も違っている。ブルーマティーニの例から、統合型のCRM製品が、どのようなアプローチによってCRMのプロセスをトータルにサポートしようとしているのか、おおよそのイメージはつかんでいただけたと思う。
ところで、こうした統合型CRMを導入する際に、最大の悩みどころとなるのはコストなのではないだろうか。一概には言えないが、まるまる導入するとなれば、数千万円〜億単位の投資が必要となる。既存の基幹システムやデータウェアハウス、Webサイトの再構築やインテグレーションなどを含めて考えれば、そのコストはさらに膨らむであろう。
その一方では、統合型のCRMシステムは、単にパッケージを一括導入するだけでは最大限の効果をあげることは難しい。その製品のコンセプトに合わせて、企業の組織体制そのものを変革する、いわゆるBPR(Business
Process Re-engineering)への取り組みが不可欠であることも覚悟しておかなければならない。
CRM製品のコンセプトに合わない業務フローのままでは、せっかく導入したツールを使いこなすことはできないし、その製品がサポートしている機能を開発意図に沿った形で使いこなしてこそ、最大限のCRMの効果が得られるのである。もちろん、すべての機能が必ずしも必要というわけではない場合も多いのだが。
そう考えると、統合型CRMの導入は決して容易ではない。中途半端な覚悟で投資をしたとしても、目に見えるような成果があがらず、導入は失敗だったと評されるだけかもしれない。しかし、全社的に取り組む覚悟で統合型CRM製品を導入し、その製品の機能を余すことなく使いこなせる組織体制を構築することができれば、そこに待っているのは、優良顧客を多く抱え、絶大な企業競争力を獲得した優良企業像なのである。
こうした点を踏まえて、自社における、あるいは、顧客企業におけるCRM製品の導入検討の際には、製品選択のみならず、組織体制や経営戦略にまで踏み込んだ視点で結論を導き出して欲しい。
<主要な統合型CRM製品>
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製品名/ベンダー
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ブルーマティーニソフトウェア |
Blue
Martini 4 |
パーソナライゼーション/コンテンツ管理/Eコマース/データマイニングなど機能をすべて統合し、安定した環境でeビジネスを支援。さらにコールセンター機能やモバイル端末との統合により、あらゆるタッチポイントを通じて顧客とのインタラクションを最適化する |
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製品名/ベンダー
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SAPジャパン |
mySAP
CRM |
マーケティング、セールス、サービスといった局面での顧客との業務プロセスや情報を管理するオペレーショナルCRM、顧客データを加工・分析するアナリティカルCRM、さらに従業員、得意先、サプライヤ、パートナーなど、企業の枠を超えて情報共有を実現するコラボレーティブCRMが統合されている。バックオフィスとフロントオフィスのビジネスプロセスを統合することができるソリューション |
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製品名/ベンダー
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日本ピープルソフト |
PeopleSoft
8 CRM |
顧客とのコミュニケーションを管理する拡張可能なピュアインターネットのソリューション。営業、マーケティング、フィールドサービス、ヘルプデスク、顧客サービスなどのオペレーションをつなぐことによって、企業全体に顧客情報を浸透させ、顧客の獲得や収益を最大限に引き出す |
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製品名/ベンダー
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日本シーベル |
Siebel
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PRM(Partner
Relationship Management)アプリケーションとERM(Employee Relationship Management)アプリケーションを含む、CRM統合アプリケーション・スイート。共通したWebアーキテクチャー上に構築されており、顧客動向と企業実績の主要指標の両方を追跡および把握するリアルタイム分析機能を企業に提供し、顧客、パートナー、および従業員の「デジタル接続」を実現する |
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