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JSエンジニアがアドビに聞く “iPhoneでFlashが動いたらアドビはFlashの開発を続けたか”D89クリップ(51)

Flash、Web、モバイルコンテンツ開発はどうすべきか。カヤックのJavaScriptエンジニアが、アドビのマイク・チャンバーズ氏に聞いた

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 FlashとHTML5の関係が注目される今、アドビはHTML5をどのように見ているのか。

 HTML5エンジニア向けサービス「jsdo.it」、Flashエンジニア向けサービス「wonderfl build Flash online」を運営するカヤックのフロントエンドエンジニアが、来日したアドビシステムズ Web Platformディベロッパー アドボカシー ディレクターマイク・チャンバーズ(Mike Chambers)氏に、Flashの今後や、ツールベンダとしてHTML5とどう関わっていくかを聞いた。

HTML5との関わりに関して

──まず、よく聞かれる質問だとは思いますが、アドビはHTML5で起こる技術的変化を歓迎するのでしょうか、それとも迎え撃とうとしているのでしょうか。

 もちろん、歓迎します。基本的に、私たちは、どのような技術的変化も歓迎します。

まだ公表前のオープンソースプロジェクト「brackets」を、楽しそうに話すマイク・チャンバーズ氏
まだ公表前のオープンソースプロジェクト「brackets」を、楽しそうに話すマイク・チャンバーズ氏

 ただ、これまでは私たちがHTML5に関する技術的変化を歓迎しているというイメージを、うまくアピールできていなかったため、皆さんに誤解されていたことも事実です。

 さらに、Flash vs HTML5という構図はインパクトがあり、各メディアのイメージがそちらに引きずられてしまい、誤解に拍車がかかっていました。

 しかし、私たちが提供しているツールを見てもらえれば分かるように、Adobe CS6でもHTML5に対応するツールを提供しています。

 ここまでの10年は、Flashが最も表現力の高いツールだったため、Flashへ注力していましたが、HTML5の表現力もここ数年で十分高くなってきたため、アドビもHTML5に注力しています。

──Toolkit for CreateJSEdgeなどのHTML5コンテンツ制作ツールを開発しているベンダとして、現在のHTML5に不足していると感じる点はありますか?

 HTML5への不満は数多くあります。が、ただ単純に不満点を伝えるだけではなく、直接、ソースコードを直す動きにも関わっています。

 具体的な内容はAdobe & HTMLにも掲載していますが、例としてテキスト関係でCSS RegionsCSS Exclusionsの仕様をW3Cへ提案し、WebKitへもコードを提供しました。

 これに関しては、社内にエンジニアのみのチームがあり、そのチームがW3Cドラフトや、WebKitへのパッチを書いています。

──ブラウザベンダとの関係はどうなのでしょうか。どういった形で連携していますか?

 各ブラウザベンダとは、もともとFlash Playerの開発で連携をしていたため、かなり深い関係があります。HTML5関連技術に関しては、各ブラウザベンダと直接連携するのではなく、主にW3CへのドラフトとWebKitへのパッチを通じて連携しています。

 ただ、直接的な連携以外でも、ブラウザベンダが、CSSのテストケースを作成するイベント「Test the Web Forward」を主催しています。アドビは、このイベントを通じて、ブラウザ間の互換性を向上するための、テストケースの作成に関わっています。

HTML5を作成するためのツールに関して

──今後、Webの開発ツールには、どういった機能が求められていくでしょうか。また、アドビとしては、どういったツールを提供していく予定ですか?

 これまで以上に、マルチデバイス対応と、 1つのHTMLを、CSSメディアクエリで、複数のスクリーンサイズ向けに最適化する手法「レスポンシブWebデザイン」への対応が重要になっていくでしょう。

 私たちが提供するツールの今後に関しては、これまでのように1つのツールですべての機能をカバーするのではなく、Adobe Shadowのような小さなツールを組み合わせて開発するスタイルをベースにする予定です。

──現在、アドビが提供しているHTML5のコンテンツを作成するツールとしてはToolkit for CreateJSEdgeがありますが、これは今後統合されるのでしょうか、それとも現状のまま独立して提供されるのでしょうか?Toolkit for CreateJSEdgeがありますが、これは今後統合されるのでしょうか、それとも現状のまま独立して提供されるのでしょうか?

 Toolkit for CreateJSEdgeの統合は予定していません。

 理由として、Toolkit for CreateJSは、FlashをHTML5へ変換することをメインにしていますが、Flashはこれまでの歴史が長く、すべての機能をHTML5コンテンツへ変換することが難しいためです。

 それと比べて、Edgeはタイムラインアニメーションを、HTML5のコードで出力することを主眼に置いているため、Toolkit for CreateJSよりも適した形のコードを出力できます。

 ただ、バージョン1以降にはなりますが、Edgeで作成したアニメーションをFlashへインポートする機能を提供する予定をしています。

──現在、アドビからはデザイナ、アニメータ向けのツールが多く公開されていますが、今後、JavaScriptをメインで開発するエンジニア向けのツールを公開する予定はありますか?

 そういったデベロッパに対しては、先日公開したBracketsが興味深いツールとなるでしょう。

Github上で開発する「Webで作るWebのためのオープンソースのコードエディター」Brackets
Github上で開発する「Webで作るWebのためのオープンソースのコードエディター」Brackets

 まず、このエディタはCEF(Chromium Embedded Framework)をベースに開発されているため、HTML、CSS、JavaScriptを使ってこのエディタ自体の機能を拡張できます。

 他に、特徴としては、エディタ上の修正を、リアルタイムに、ブラウザ上で確認する「ライブデベロップメント」ができます。HTMLエディタ上のidやclass名から、直接その定義が書かれたCSSファイルを呼び出して、編集できるクイックエディットや、JSLintやUnitTest Toolsとの連携などの機能を持っています。

Adobe Brackets
Adobe Brackets(クリックで拡大)

 開発はGithub上で行っており、ライセンスもMITライセンスを採用しているので、ぜひ開発にも参加してください。

Flashに関して

──仮定の話になりますが、もしiOSブラウザ上でもFlashが使えたらアドビはAndroidも含めたモバイル向けFlashの開発を続けていたでしょうか?

 非常に大きな仮定の話なので答えにくい質問ではありますが、モバイル向けFlashの開発を中止したのは、iOSブラウザ上で動かないことのほかにも、いくつかの理由があります。

 まず、ユーザーから見た場合、モバイルではリッチなコンテンツはアプリで閲覧する、という選択肢があります。PCに比べて、Flashへのユーザーの期待値が違うと考えています。

 また、これには帯域も問題になります。アプリは事前にダウンロード時間を持てますが、Webサイト上のFlashにはそれがないため、リッチなコンテンツを閲覧しようとした場合、最初に長いダウンロード時間を待つ必要があります。

 それ以外に、アップルやグーグル、マイクロソフトなどのプラットフォームベンダが準備するマネタイズ・プラットフォームに、アプリを乗せてもらえないという問題もあります。Flashデベロッパも、アプリにした方がマネタイズしやすいということです。

──アドビとしては、現在Flashを使ってPC向けのWebコンテンツを作成しているデベロッパが、これからモバイルコンテンツを作成する場合、どのツールを使うことを推奨していきますか?

 推奨するツールは「何を作成したいか」によって変わります。

 すでにFlashで作成したコンテンツをHTML5へ変換したいのであればToolkit for CreateJSを推奨しますし、これからHTML5のコンテンツを作成するのであればEdgeを推奨します。

 また、直接コードを書くことをお好みの方は、Dreamweaverから直接CSS3アニメーションのコードを記述する方が適しているかもしれません。

 ただ、特にモバイルコンテンツの場合、ロード時間の問題もあるため、単にリッチなコンテンツを作成すれば、ユーザーの満足度が上がるわけではないということを注意する必要があります。

──それでは、PC向けのUIツールとしては、今後もFlashを推奨していくのでしょうか?

 これも、「何を作成したいか」によって変わります。

 もちろん、Flashも選択肢となりますし、HTML5との連携が重要であれば、Edgeも選択肢となるでしょう。

 これに関して付け加えるなら、Flashは今後ゲームやビデオといった分野に注力していくため、こういったコンテンツを作成するのであれば今後も特に強力な選択肢となるでしょう。

──ゲームの作成ツールとしてはUnityも人気がありますが、Unity Technologiesとの関係はどうでしょうか?

 Unity Technologiesとは、Unityで作成されたコンテンツをFlashで書き出すためのプラグインの作成などで連携していて、協力関係にあります。

 Flash Playerの価値向上にもつながるため、私たちとしても歓迎しています。

 また、私たちは用途に合わせて、いいツールを選択するのがベストだと考えていて、現時点で3Dゲームを作成するなら、Unityはいい選択肢になるでしょう。

 このため、現状では私たちが3Dゲームの制作ツールを作ることは予定していません。

最後に

──他にWeb開発の今後に関してコメントがあればお願いします。

 HTML5はこれからも進歩していくと思いますし、私たちも一緒にそれを推進していきたいと考えています。

 ただ、HTML5は各ブラウザベンダの合意を元に進めていく形になるため、進化の速度でいうとFlashの方が早くなるでしょう。

 これは特にゲーム、ビデオの分野では顕著で、私たちは特にこの分野をFlashの領域にしたいと考えています。

筆者紹介

面白法人カヤック 技術部クリエイター

吾郷協(あごう きょう)

カヤックのJavaScriptエンジニア。 「SVG女子」、JavaScriptの投稿共有サイト「jsdo.it」、オリジナルのソーシャルゲームなどの制作に参加。受賞歴に、第8回東京インタラクティブ・アド・アワード、ウェブサイト部門銅賞、第31回 2010 日本BtoB広告賞 金賞など。

Mike Chambers氏(左)と、取材に同席してくれたアドビのゲームディベロッパエバンジェリストのLee Brimelow氏と(右)。



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