DIY、電子工作、サイエンス、アートなど、ジャンルを超えてテクノロジを使いこなす「Maker」が集うイベント、make:の熱い展示をレポートする
Make:はアメリカ発祥のDIY、電子工作、サイエンス、アートなど、ジャンルを超えてテクノロジを使いこなす「Maker」が集うイベント。東京では今回で7回目の開催となる。Make: Tokyo Meeting 07が2011年12月3日〜4日の週末に行われた模様をレポートする。
会場はすでに恒例となった東京工業大学の大岡山キャンパスだ。今回は体育館をメインに、西9号館、百年記念館と3つの建物が会場となった。筆者が会場を周った2日目は快晴にも恵まれ、体育館は早くから多くの来場者でにぎわっていた。
体育館に入ってまず存在感を示すのが「工房ヒゲキタ」の出展、直径5.6mを誇る『手作りプラネタリウムとドーム3D映像』だ。
ピンホール式プラネタリウム投影機による星空と赤青メガネをかけての3D映像が楽しめ、体験者の歓声がドームの外にまで漏れ聞こえていた。
その向かいの「オライリー・ジャパン」のブースにはなんとオライリーグッズのガチャガチャが設置してあり、会場に入ってすぐだというのに、早速コインを投げ込んでいる客も多く見られた。
続いて会場内で目を奪われたのが「e-lab」のヘビ型ロボット。
なんとこのロボット、動力を前進に使っていない。先頭の関節をコントローラで左右に操作すると、後ろの関節が順番に動きをまねすることでヘビのように進んでいくというから不思議である。
1つ1つの節にLEDが付いていて、同じ場所にくると同じ色が光るというのも魅力的だ。1つの節を1人が製作して、みんなでつなげて動かすというワークショップも開催しているそうで、回を重ねるごとに長くなっていくのが楽しみなのだそう。
e-labではステンレスのボルトで作った『ボルト人形』の販売も行っていた。写真はトランペットを吹くボルトくんだ。
子どもたちが集まっていたので気になって見にいくと、歯ブラシがするすると動き回っていた。「うるるん工房」の展示『歯ブラ虫』だ。歯ブラシに振動するモーターを電池につなぐと動き回るらしい。原理は?と聞くと、よく分からないけど動くんです! とのお返事が。
こちらはいろいろなモノの動きを測っているという、「はかるひと」のブース。
なんとこれ、実写映画化も決まって話題のマンガ「宇宙兄弟」にも登場しているカンサット(小型ロケット)である。
肝心の“はかる”部分が、ラジコン飛行機用のセンサモジュールに追加してパワーアップさせる基板。ロケットは飛行機よりも速度や傾きの変化が激しく、飛行機用のものでは不十分ということで作ってしまったとか。重くなるとロケットが飛ばなくなってしまうので、いかに小さく作るかという点で苦労したそう。今後は同じようにロケットを自作している人たちに配布もしていきたいそうだ。
さらにこちらは人力飛行機用のセンサモジュール。飛行機の傾きや飛んでいる高さを記録でき、データを動画と組み合わせることができるそう。あの「鳥人間コンテスト」に出る飛行機に取り付けているものだそうだ。
体育館の奥にはプレゼンスペースも用意されていた。
体育館を出て百年記念館へ行くと、「para//site」のブースに何やら怪しげな装置が待っていた。
なんと、これは、樹脂を溶かしながら積み上げていくことで自由自在に造形できる、3Dプリンタという装置でした。今後のpara//siteでは、この3Dプリンタを使って、まったく同じ3Dプリンタのコピーを作っていく予定だそう。
さらには来年の2月14日までにチョコレートの造形ができるように改造するそうだ。
ユカイ工学から販売もされている、こばやしひでみつ氏の『もふもふiPhone毛ース』。ポケットに入れるとしっぽが生えたようにも見える、とってもかわいいiPhoneケースだ。
人気のため在庫切れとのことで、自分で作るワークショップも行われていた。
「ロボット工房 のらとりえ」では部品がすべて電子基板というロボットがお出迎えしてくれた。
ロボットと回路の展示の他、基板でできたアクセサリーの販売もされていた。
最後に、3つ目の会場である西9号館を紹介する。こちらの2階は音楽系のブースが集まるにぎやかなフロアとなっていた。
鉛筆や人間などいろいろなものを回路の一部にすることで、さまざまな音を鳴らして楽しもうという「airgaragelabo(エアガレージラボ)」のブース。
その中でも異彩を放っていたのが写真の『スライムシンセサイザー』だ。スライムの伸び具合で音の高さが変わるというもの。引っ張りながら揺らすと、ビブラートが掛かったように音程も一緒に揺れるのが面白い。
光る展示物を集めたDARK ROOMへ行くと、加藤良将氏の光の彫刻『Rokuro』の展示があった。
光ファイバーの束が回転しており、手で触れると自在に形を変えることでデジタルな陶芸体験ができるという作品だ。動いていても光ファイバー同士が絡まないよう、長さなどに工夫があるそうだ。
こちらは中に回転とは別のモーターが入っていて、自動的に形が変わるという新作だ。
今回の展示では1つだけだったが、今後は複数個を並べた作品になる予定だ。より幻想的な世界が広がりそうだ。
DYI ENERGYカテゴリから、「ソーラーバイシクルで遊ぶ人」のソーラーバイシクルだ。
WSBR(ワールド・ソーラー・バイシクル・レース)という、ソーラーパネルとモーターが付いた自転車によるレースに出場するためのもの。
大会は秋田県の大潟村で行われ、全長100kmのコースを最高時速40kmで競うそうだ。雨の日は自転車に乗らないし、充電の要らないアシスト自転車としてこれからはやるかも?
「iamas11(岐阜情報科学芸術大学院大学)」のブースにいたのは、ジャンクパーツで作られた昆虫『ジャンク虫』たちだった。
家電製品などを分解した部品で作った作品で、今後は「ジャンク虫ワークショップ」として製品の分解から作品を制作するまでを行うワークショップとしても開催していという。
住宅の設計をオープンソースにしてしまうという、野心的なプロジェクトを展示していた「WIZDOM」のブース。
その日家の中のどこにいるか、どこの窓を開けたかなど、家と人の情報をデータ化するという未来の住宅だ。なんと実際に建築された住宅で生活している家族がいるそうだ。
こちらはその住宅で実際に使われているというデータの観測や通信ができるデバイス。
ちょうど家のコンセントボックスに収まるサイズになっているのがポイント。
終了時間を迎えて会場の外に出ると、M:TMではおなじみ。「Suns & Moon Laboratory」の光って動く自転車ホイール『ANIPOV』が輝いていた。
会場で著者が気になった展示を中心にお伝えしたが、テクノロジを思い思いに使いこなす「Maker」の熱い姿、ものを作るワクワク感がお届けできていたら幸いだ。読者の何かを作りたい欲求が刺激できただろうか。
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