12月22日、お台場に“おばか”の精鋭が集結。「おばかアプリ選手権 クリスマスパーティ」が開かれ、11組のおばか達が、聖夜にふさわしいおばかアプリを競った。
12月22日、クリスマスを控えた三連休初日のお台場には、イルミネーションが光り、リア充カップルであふれ返っていた。デートにいそしむカップルたちを横目に、ニフティのイベントスペース「東京カルチャーカルチャー」に足を踏み入れると、そこには“おばか”の精鋭が集結。「おばかアプリ選手権 クリスマスパーティ」が開かれ、11組のおばかたちが、聖夜にふさわしいおばかアプリを競った。
審査員は、ザリガニワークスの武笠太郎さん・坂本嘉種さん、日本大学芸術学部講師の布目幹人さんといういつものメンバーに加え、「デイリーポータルZ」編集長の林雄司さん、SCRAPで「リアル脱出ゲーム」企画制作ディレクターを務める吉村沙織さん、女優・歌手の鈴木蘭々さんという豪華メンバー。スマートフォンもPC持っておらず、アプリを使ったことがないという蘭々さんは、「プレゼンターの方が使う言葉が6割〜8割分からない」と最初は困惑しつつも、だんだんペースをつかんで“おばか”の世界に踏み込んでいった。
トップバッターは、みもちいいルミエさんによる「ホモォいじり」だ。ボーイズラブ(BL)好きの“腐女子”をキャラクター化し、ネットで話題になった「ホモォ」を育成するゲーム。“薄い本”を与えて喜ばせたり、お風呂に入れて世間体を保ってあげたりしながら、ホモォをどんどん“腐らせて”いく。
「ホモォを見てかわいいと思い、育てられるAndroidアプリを開発した」とルミエさん。GooglePlayではすでに20万ダウンロード達成しており、最高で無料ゲームランキングで6位まで上りつめたという。iPhoneアプリも「申請中」だ。
会場には微妙な空気が漂よったが、林さんは「GREEとかが手を付けないとしたら、こういうところしかないかも」と、その視点に注目。坂本さんは「弊社もBL本を出してほしいと思っている」とナナメ上の提案。「是非、僕ら2人の絡みを……。定石だと僕が攻めだが、見てみたいのは僕が責められる方」などと発言し、会場の空気を凍りつかせた。
「マシュマロ・カタパルト」は、sweet electronics @usopyonさんが開発した、マシュマロを飛ばして人を攻撃する兵器……という名目のマシュマロ投入機だ。PCと接続して使う機器で、Kinectの顔認識機能と、顔認識ソフトを組み合わせ、人の顔を判別。口に向かってマシュマロを飛ばす。カメラの前で笑顔を作ると発射準備OK。機器の上にセットしたマシュマロが、口に向かって勢いよく飛んでいく。うまく口の中に入ることもあれば、顔に当たり、跳ね返ってしまうことも。
ちなみに同チームは以前、Twitterのアイコンと連動して綿菓子を作る「インタラクティブわたがし」や、「Kinect巨乳」と連携し、映し出された巨乳を揺らすとゼリーが連動して動くという「触れるKinect巨乳」など、お菓子関連のおばかアプリを開発。触れるKinect巨乳は「これまで経験したことないようなどん引きをされた」という。
布目さんは「工作大好きなんで、ほしいです」と絶賛。吉村さんは「たくさんの人がマシュマロ・カタパルトにチャレンジするようなイベントができれば」と、イベント企画者らしい視点でコメントしていた。
「現代は、情報があふれ返っている。眼鏡型のデバイスに求められる機能は、何かを表示・見やすくするんじゃなくて、何かを見えなくする機能では」――こんな前説とともに大崎浩司さんが紹介したのは、眼鏡型ディスプレイ「彼方だけ見つめてる」だ。
GPSセンサと液晶シャッターを装備した眼鏡。PCとUSB接続し、Webアプリで行きたいところを設定すると、眼鏡に座標が設定され、目的地の方向しか見えなくなる。一見便利そうだが問題は、ルートを完全無視し、目的地の方向しか見えなくなること。これを着けて道を歩くと、けっこう危ない。
「完全に危ないね。でも面白いね」(坂本さん)と審査員からは高評価。蘭々さんが、「ダンジョンとかに迷い込んだ時は、方向が分かるってことですよね?」と実用的な活用法を提案すると、「ダンジョンに入ること、ちょいちょいありますからね、便利だと思います」と坂本さん。「砂漠で使うといいんじゃないか」(林さん)など、新たな使い道が次々に提案されていた。
「1人だけどチーム:あのゾーン」が開発した「あの効果音が鳴る靴」は、足を上げるとスーパーマリオでコインを取った時の効果音が鳴る靴だ。靴底に埋め込んだセンサで床との距離を測り、一定以上の距離を超えると鳴る。「たったこれだけなんですが、ニコニコ動画に投稿したら1万4000回ぐらい視聴いただいて、付いたコメントは『雑だ』とか、僕が着けてる指輪を見て『既婚者か』とか……」
「靴にスターマークをわざわざ入れているのは愛があっていい」と林さん。武笠さんは「マリオの衣装の背中がぱっくり開いてるのがすごく気になった」。本人によると、衣装のサイズが合わなかったようで、確かに背中がぱっくり開いていた……。
「5年間彼女がいなくて……」。そう話す「ねこポッポ」さんが開発したのは、出会い系サイト「恋人探し.com」だ。検索すると、ヒットするのは全員ねこポッポさん。どう頑張ってもねこポッポさんとしか出会えないという、斬新な出会い系サイトだ。「でも、岡山県に住むおじさん1人からしかアプローチがなくて……」
起死回生を掛けて開発したのは、スマートフォンアプリ「運命の人発見機」だ。あらかじめ、“運命の相手”として自分の顔写真と名前を登録しておき、気になる異性に使ってもらうアプリ。一見、診断系アプリに見えるが、表示される質問にどう答えても、あなたの名前と写真が「運命の相手」として表示される。気になる異性に、運命の相手はあなただと見せ付け、最後には結婚式場検索サイトにアクセスさせる仕組みで、「気になる異性の気が変わらないうちに結婚できる」としている。
「運命の人が分かるアプリ、使ってみないかい?」「信じられない……やってみたい!」――自称「生まれながらの女優」のチェリーさんとねこポッポさんが小芝居でアプリを実演。迫真の演技に会場は大ウケで、「バカですね……大好きです」(坂本さん)など審査員も高評価だった。
「電話越しのお辞儀は、相手に伝わらない無駄なものだと考えられてきたが……」――クロイワタケシさんは、スマートフォン越しでも真心が伝わるという「まごころカウンタ」を開発。アプリを起動すると、お辞儀の回数をカウントし、“真心”として相手のSMSに伝える。
布目ゼミ所属のクロイワさんが、「見えないものが形になるといいよね」という、ゼミの考え方を反映したアプリだが、たどたどしいプレゼンに、師匠からは「もうちょっとプレゼンがうまいといいな……」(布目さん)。蘭々さんは、「どうやって使っていいかよく分かんなかったけど、彼が優しい人だというのは分かった」と、温かいまなざしを注いでいた。
プロトタイピング・スタジオの野寺さんと東海さんが開発した「ひろし」は、Twitterの投稿から感情を解析し、電話を掛けてきてくれるスマートフォンアプリだ。例えば、「クリスマスだけど1人で引っ越し準備つらいな」とつぶやくと「ひろし」から着信があり、「フリーザーさんは、『いまのは、いたかった、いたかったぞ』、といっています」など、機械音声でしゃべる。
「ツイートに応じて励ましてくれたりするのかと思ったら、ひろしが好き勝手しゃべるだけだった。その潔さが逆にいい」と吉村さん。武笠さんは、特別審査員の“ごはんかいじゅう”パップの感想を通訳し、「プログラムの擬人化してるのがすばらしい」と評価していた。
「ぜひ、このアプリを彼女へのクリスマスプレゼントにしてください」と、「世界の三宅」チームの三宅里和さん。同チームが開発した「キョニュリ」は、巨乳を目指す女子のためのトレーニングアプリ。iPhoneを両手ではさみ、胸筋に力を入れてトレーニングすることで巨乳化を図る。
今すぐ巨乳になりたい人には、都内で豊胸手術を扱っている美容整形外科を地図で案内。安易に手術しないよう、アドレス帳から母親のメールアドレスを検索し、手術の報告メールを送ったり、Twitterでフォロワーに手術を報告する機能も備えた。
「このアプリは、とってもあれだと思います。……すごいと思います」とコメントに詰まる蘭々さん。坂本さんは「豊胸手術のサポート周りが丁寧なのは面白い。美容整形外科への地図と、行き先しか見えない眼鏡を合わせて使いたい」と提案しつつも、「現実的には、効率的にタンパク質を摂取するのがいいと思う」。
この冬、開催されたDIYの祭典「Maker Faire Tokyo 2012」で、展示を途中でやめさせられたという、いわくつきの品が、カヤックのプログラマ2人(松田さんと衣袋さん)が開発した「あえギター」だ。ギターのネック部分が、女性の足の形をした透明樹脂でできており、中が紫色に光る。ボディの真ん中にはiPhoneを搭載。タッチすると、ちょっと色っぽい機械音が再生される。
「2度と世に出ないかも」と覚悟していたというこの作品に会場はどん引き。だが審査員の評価は上々で、布目さんは「作り込みとか、すごく時間がかかってそうで素敵」と評価。坂本さんは、「声がもうちょっとマジっぽいといい」と話し、蘭々さんも「ギターのような音色が奏でられると思いきや思いっきり肉声がいいと思います」と、坂本さんの意見に賛成していた。
ニフティのチームが開発したのは、某RPG風のブラウザゲーム「せいさくエスト きよしこの夜、彼女のもとへ」。Web制作を手掛ける会社員の主人公がクリスマスの夜、「真っ白な仕様書」や「あばれブラウザー」など襲い来る敵をやり過ごしながら、ものすごい勢いでWeb制作の案件をこなし、彼女とのデートに急ぐというゲームだ。
「いいね!」してくれた人ほぼ全員Web制作者だったというこのゲーム。制作者本人がプレイすると生々し過ぎてつらいというが、「プレイした女性が、Web制作者の夫に優しくしようと言ってくれていたので、作ってよかったなと」。
「僕は真っ白な仕様書を出す側なので、申し訳ない気持ちで見ていました」と、開発陣と同じくニフティに務める林さん。坂本さんは、「リアルで生々しいが、おうちで待っている人にやってほしい」と話していた。
「JINS PC」をはじめとしたブルーライトカット眼鏡が流行った今年。MashUpAward企画者でもある川崎有亮さんが開発したのは、Webブラウザで表示される画面の色調を変え、眼鏡いらずでブルーライトをカットするFirefox拡張「Blue Light Filter」だ。ブルーライトカットという実用的な機能に加え、ブラウザ上の文字を赤や緑のクリスマスカラーにするモードもある。
「クリスマスモードの色を変えれば、ファミマバージョンとか、できそう」(林さん)など、実用性とおばかさを兼ね備えたアプリを審査員は高評価。「会社で見積書や契約書を見ている時とか、クリスマス気分で書類チェックができて悲しさもひとしお。すごくいいなと思いました」(武笠さん)
ただ、ブルーライトカット眼鏡を2月に発売予定というザリガニワークスの坂本さんは、「眼鏡いらずでブルーライトをカットするのはすごく素晴らしいけど、2月に透視眼鏡というPC用眼鏡を出すので、困るということは強調しておきたい」とも。Blue Light Filterは、眼鏡業界の強力なライバルになるかも!?
11組のおばかの中から大賞に選ばれたのは、会場からのダントツの得票を得た「運命の人発見機」。開発者のねこポッポさんは、「たくさんの人にアプリを使っていただき、たくさんのカップルが誕生することを心から願っています」と受賞の喜びを述べていた。
審査員特別賞は以下の通り。
審査員 | 受賞アプリ |
---|---|
鈴木蘭々賞 | せいさクエスト |
林雄司賞 | まごころカウンタ |
吉村沙織賞 | あえギター |
ザリガニワークス賞 | 彼方だけ見つめてる |
パップ賞 | マシュマロ・カタパルト |
布目幹人賞 | ひろし |
イベントを終え、「PCもスマホをも持ってないが、これを機会に購入して、アプリなるものを勉強したいと思う」と蘭々さん。坂本さんは「バカに対するレベルが高く、しっかりやり切ったものが多くて気持ち良かった」と評価する。武笠さんは、「最近、いろんな業種の方からバカグッズの制作依頼を受ける。バカな企画を企業が求め始めている時代。研ぎ澄まされたアイデアが横にスライドしやすくなる」と、ビジネスにつながる可能性を示唆。最後に、ザリガニワークスの生んだ“ごはんかいじゅう”キャラクターのパップが、「みんなよく頑張った」と上から目線で評価し、会を締めくくった。
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