手軽に家電が作れる時代に小さな会社だからできること:D89クリップ(54)(3/3 ページ)
プログラマなのにハードウェアを作った鳥人間の久川さん、1人家電メーカーのBsize八木さん、クラウドファンディングを興したCerevoの岩佐さんが手軽になったモノづくりを語った。「おばかアイデアを形にする方法」や「ものづくりの新しい形」とは?
おばかアイデアを“カタチ”にするクラウドファンディング
最後のスピーカーは、Cerevoの岩佐琢磨さんだ。Cerevoは「ネットと家電をもっと豊かに便利にする」をモットーに、Cerevo CAMやLiveShellといった製品をリリースしている会社だ。
ハードウェアはコピーしようと思えば簡単にコピーできる。iPhoneのそれがたくさんあるように、自分たちの製品もコピーされるかもしれない。が、ハードをコピーしたところで、その裏側にあるものがなければ便利に使えませんよという気持ちで、ものづくりをしているのだそうだ。
LiveShellは、パソコンを使わずに、ビデオカメラの映像をUstreamに送信できるガジェットだ。回線が切れてしまっても再接続時に自動で復帰するなどの機能を有し、プロの現場での要求にも応えられるLiveShell Proもラインアップしている。
LiveShell Proは5万4999円と、同程度スペックの競合他社製品(15〜20万円程度)よりもかなり安い価格設定となっている。
今はUstream対応版のみを作っているが、ほかのサービスにもすぐに対応できる。実際、ニコニコ動画にも配信可能なように作られている。
岩佐さんはCerevoを起業する前、メーカーの社員として勤務していた。自動車は好きだったが、自動車メーカーの意思決定などのスピード感の遅さは嫌で、独立する気合が当時はなかったため、取りあえず電機メーカーに就職したそうだ。
仕事しているうち、量産することよりも、何かを作り上げることに向いていることに気が付いた。そして、大手の家電メーカーはネット家電には向いていないと感じた。
岩佐さんは家電業界は近く、服飾業界のように、個人の趣向に合わせた製品が求められるようになっていくだろうと予測する。であれば、誰かのプラットフォームの中でやるより、自分たちが作ったものをお客さんに触ってもらう方が楽しい、と考えた。
ハードウェアメーカーはExit(売却)した際、金額が非常に大きくなる傾向にある。そして、ソフトウェアやWebサービス系はライバルが多過ぎる。TechCrunchのCrunthBaseでハード対ソフトで会社数を比較したところ、ハード1に対してソフトは19。実にライバルの数は19倍になるのだ。
この競争率の少なさは、ハードウェアメーカーには有利に働くだろう。
2000年ごろは、スタートアップにはたくさんの資金が必要で、在庫もたくさん持たなければならず、販路の開拓も厳しかった。それが2008年になると、資金も1〜2億で足りるようになり、在庫も少なくていい。販路は展示会などを活用しやすくなったこという。資金調達も、数千万円程度であれば、過去に比べて非常にやりやすくなっているのだそうだ。
海外のハードウェアスタートアップのJawboneやGoProの例を挙げ、これらの小規模な会社は、大手のシェアを斬ってこられたと強調した。
クラウドファンディングは国内にもあるが、Kickstaterに比べると金額はかなり少ない。また、注意すべき点もある。
クラウドファンディングはメディアとのリレーションが難しく、見積もりに失敗していると、後になって泣きを見ることになる。そして、お金を先に集めているのでプロジェクトを途中でやめることも難しいのだ。
海外のクラウドファンディングの中には、知識がないのに取りあえず募集だけしているものもよく見掛けるそうだ。これに比べれば、あらかじめきちんと準備をする日本人の方が、向いている。ハードウェアを作るのがいいといっても、何でもいいわけではなく、話題性のあるジャンルは限られており、特に文具系は注目される傾向にあるそうだ。
そして、クラウドファンディングを利用する際は、調達の規模が大きいKickstarterに出せばいいというわけではない。Kickstarterにはヤフオク並みにたくさんのプロジェクトが並んでいるため、そこでいかに目立てるか、そういう要素がないと飛び出すのは難しい。
日本でものづくりを進めていくと、どうしてもコストが高くなるし、時間がかかる傾向にある。そこで岩佐さんは、アジア圏に目を向けた。安くて早いが品質に問題があることも多いが、そこはしっかり指導し、アジアパワーを活用すれば、コストやスピードの面も何とかできるそうだ。
筆者はこのイベントに参加して、ふつふつとものづくり熱が再燃し始めた。これまでソフトやWebサービスの開発を行ってきた人たちなら、ハードウェアの知識を手に入れるだけで、製品を開発し、それを生かすサービスとセットで売り出すことも可能になる。
わたしたちのちょっとしたアイデアと遊び心が、人々の生活を大きく変えることになるかもしれない。
- Yamaguchi Mini Maker Faireに西日本のMakerが集結!
- 「Makeすることで世界は変わる」〜「Make」編集長が語るMakerムーブメント
- みんな笑顔のお祭り〜Maker Faire: Taipei 2013
- 生物学からMakerムーブメントまで、ニコニコ学会βの範囲がさらに広がる!
- 人とコンピュータの未来 インタラクション2013レポート
- 開発者のスタ誕「CROSS VS」が開催、おばかアプリ選手権賞は…
- 誰もが研究者の時代? ニコニコ学会βレポート
- メリーおばか! 聖夜にふさわしいおばかアプリ、お台場に集結
- 世界に誇る日本の学生のバーチャルリアリティ力
- 「アドテック東京」で「アホテック東京」を作った話
- 手軽に家電が作れる時代に小さな会社だからできること
- 五輪より熱い!? ベスト8が頂点競う おばかアプリ選手権
- 『FabLife』のインターネット黎明期のようなワクワク感
- JSエンジニアがアドビに聞く “iPhoneでFlashが動いたらアドビはFlashの開発を続けたか”
- 何食わぬ顔で、その荒野の真ん中に躍り出よ
- jQuery MobileなどUIフレームワークの基礎を学ぼう
- Retina ディスプレイを搭載し、薄型化した
- 超エンジニアミーティングに集ったテクノロジ
- 僕らはみんな何かの作り手だ!
- Kinectで巨乳になれるワールドカップ2012レポート
- おばかの“合コン”「ばかコン」、Ruby使いの女子大生モデル・池澤あやかさんも参加
- 【第29回 HTML5とか勉強会レポート】 次のモバイルアプリはどのフレームワークで作る?
- 【第27回 HTML5とか勉強会レポート】 LESSやTwitter Bootstrapで簡単デザイン
- 女子大生が異彩を放った「おばかアプリブレスト大会」
- 【おばかアプリ公開ブレスト ザリガニワークス徹底分解】 分解して振り切って、余白でコミュニケーションを
- 【HTML5とか勉強会レポート Webと電子書籍】 なぜWebではなく電子書籍なのか?
- 【HTML5とか勉強会 Webと家電】 家電のUIになるブラウザ
- 【Qtカンファレンスインタビュー】 Qt5で10億人ユーザーへ、OSSコミュニティ化でますます健在に
- 【第24回 HTML5とか勉強会レポート】 108もあるぞ! HTML5の要素数
- 【@ITスマートフォンアプリ選手権レポート】 学生からプロまで入り乱れてのアプリ合戦頂上対決!
- 【「iPhone・iPadアプリ大賞2011」レポート】 グランプリは生徒と先生が作った役に立つARアプリ
- 【第23回 HTML5とか勉強会レポート】 HTML5のデバイス&位置情報系APIを使いこなせ!
- 作りたい欲求を刺激するMake:07@東工大レポート
- 500作品が競った「Mashup Awards 7」表彰式
- 【第22回 HTML5とか勉強会レポート】 Processing.js、SVG、WebGL。HTML5周辺のグラフィック関連技術
- 【Google Developer Day 2011 Japanレポート】 HTML5で今までにないサイトを作る
- 【第21回 HTML5とか勉強会】 ゲーム開発はHTML5+スマホベースが新潮流
- 【東京ゲームショウ2011】 ゲームは、スマートフォン、拡張現実、そしてナチュラルインターフェイスに
- 第5回おばかアプリ選手権レポート 見よ! コレジャナーイアプリの数々を!
- Adobeが作ったHTML作成ツール、Edgeの本気度
- 【Chrome+HTML5 Conferenceレポート 】HTML5づくしの1日
- 【おばかアプリブレスト会議レポート 】おばかな人知が集結したブレスト会議
- 【15分で体験するApple WWDC 2011 Keynote】「iCloud」が示す「こちら側」を中心とした世界観とは?
- jQuery Mobile+PhoneGap連携でDreamweaverはスマホアプリ開発ツールに?
- 歌あり笑いあり過去最大規模となった技術者の祭典
- 「無料モデルに興味はない」「プログラマは創造的だ」〜セオドア・グレイ氏インタビュー
- Windows 7でも「おばかアプリ選手権」は大爆笑でした
- 4回目を迎えたおばかアプリ選手権、その見所とは
- おばかアプリ作成のための超まじめな勉強会レポート
- Flash CS5のiPhoneアプリ変換機能は無駄にならない
- デザイナだからこそ作れるUXに企業が注目している
- マッシュアップを超えたマッシュアップを−Mashup Awards 5表彰式レポート
- 3回目にして完成形を迎えた「おばかアプリ選手権」
- Web標準に準拠し独自技術Silverlightで補完する
- 3回目はあるのか? おばかアプリ選手権レポート
- クリエイターであるためにFlash待ち受けを出し続ける
- ユーザーエクスペリエンスのadaptive path訪問記
- 第1回おばかアプリ選手権はこうして行われた
- Adobe MAXレポート:Webにおけるグラフィック表現手段としてのFlash
- ケータイ版AIRでFlash Liteの成功パターンを踏襲
- ペパボ社長・家入氏が語る、バカとまじめの振り子の関係
- 植物の「緑さん」がブロガーになるまで
- Chumby開発者が語る 誕生秘話とビジネスモデル
- Mashup Awards授賞式レポート マッシュアップ+ひとひねり=MA4の受賞作
著者プロフィール
岡本紳吾(おかもとしんご)1975年大阪生まれ。2000年頃よりAdobe Flash(当時はmacromedia)を使ったコンテンツ制作を始め、Flash歴は異様に長い。自他共に認めるFlash大好きっ子。2008年より活動の拠点を東京に移し、2011年に独立。WEBプロデュースと制作と山岳メディア運営の会社、hatte Inc.代表取締役。
Twitter:@hage、Facebook:shingo.okamoto
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.