人とコンピュータの未来 インタラクション2013レポート:D89クリップ(60)(3/3 ページ)
さまざまな分野の研究者が、人と人、人と機械との間のインタラクションを研究しあうために集まる学会「インタラクション」をレポートする。
Webサービスやアプリケーションも
目新しいデバイスを利用したインタラクションだけでなく、スマートフォンアプリやWebサービスなども出展されている。こちらの分野は通常の開発に近く、研究したプログラムを世の中に出している研究者も多く、親しみが湧きやすい。
音楽共有の未来Songrium
圧巻だったのが産総研濱崎 雅弘さん、後藤 真孝さんによるSongrium。昨年発表した音楽データの曲構造を自動で解析するサービスSongleに加えて、新たに開発されたWebサービス。Vocaloid楽曲では日々多くのn次創作が生まれ、ヒット作品は次のヒット作品を生んでいる。広大なn次創作の世界をたどりやすくするツールがSongriumだ。
ニコニコ動画上の動画データには、さまざまなタグが付く。タグをうまくたどっていくことで、「同じ作者の別の曲」や「同じ曲のカバー」などにたどり着くことができる。その、人間がタグをたどる行為を助け、さらにタグでは分かりづらい全体像を知ることができるサービスである。
タグによって示される曲と曲のつながりが可視化され、しかもその動画から派生動画がどれぐらい生まれたかを可視化することができる。
2012年の夏からα版の公開を始めたサービスだが、今回のインタラクション2013での発表に向けて、ニコニコ動画を見ながらSongriumが利用できるChrome上の機能拡張もリリース。音楽の作り方や楽しみ方すべてがコンピュータで変わっていくことを、開発者の後藤さんは研究している。過去のニコニコ学会βでの講演も大人気だったのでぜひ見てもらいたい。
ボディスラムでスマホが震える?プロレス鑑賞用アプリ
すぐにでも効果が見込めそうだと感じたのは、首都大学東京IDEEA Labが出展していた「プロレス興業における観客参加型体感アプリケーションの提案」。発表者自身が学生レスラーとして活躍しているとのこと。
プロレス観戦時にリングが大きく揺れる、ボディスラムなどの技が発動した際に、観客の手元のスマートフォンを揺らす。実際に効果が見込め、一体感が上がりそうなアプリケーションだ。
ネガティブな言葉を言い換えるプログラム
SNS上などでネガティブな言葉をぶつけられることはある。そのネガティブな言葉を、人間が見る前にコンピュータが補正してくれる研究が、明治大学宮下研究室が発表していたこのプログラム。
元のネガティブなフレーズ「雨だ.死にたい.座れないし腹立ってきた.不幸だな.周りの奴らの話声うるさいし.うぜぇ.死ねよ.」の文章が、どの程度言い換えられるかというスライダーを操作すると、このようにハッピーに変わる。
ほかにも、ツイートの末尾に「われわれの世界ではご褒美です」「元気出そう!」など、ランダムにポジティブなフレーズを追加することでダメージを減らす機能も。自分のタイムラインでもぜひ試してみたい、公開が期待される研究だ。
未来のカメラが見られる カメラでのプログラミング
数年後の未来が見えたのが、慶應大学湘南藤沢キャンパス筧康明研究室のOurcam。ビジュアルプログラミング言語をカメラ内部に仕込み、カメラを使ってプログラミングを可能にする研究だ。
デモではスマートフォンで構築していたが、「モノクロ化する」「結果をFlickrで共有する」「絞りを優先する」など、カメラに対する命令をカメラ上で、撮影前にプログラミングできる。
しかも、画像のアップロード時に「どういう設定で撮影したか」がインターネット上で共有され、誰かが再利用することができる。
デジタルカメラは進化し、写真を撮る行為と、撮った写真を使う行為が近くなってきているのを感じる。新型のカメラが出てくるたびに、写真にさまざまな効果が付け加えられたり、カメラから直接インターネットに写真をアップできたり、エフェクトが付けられたりする機能が付加されている。Exifのように、写真の設定や条件などを共有するフォーマットも普及している。
その延長線上にカメラがプログラムをする環境になり、写真が「それをどう作られたか」を含めて共有する時代は、確かに来る予感がある。
インタラクションが目指すもの
インタラクションは、コンピュータと人間とのかかわりを総合的に対象にしている。僕らを取り巻く多くのものがソフトウェアで制御されるようになってきたことにより、コンピュータを相手に何かをする、人間同士のコミュニケーションにコンピュータが介在する機会はますます増えてきた。スマートフォン、SNS、検索エンジンといった、近年僕らの生活を大きく変えたものは、まさにインタラクションの対象範囲である。コンピュータの活躍する場所が増えることによって、ますます世界は便利で楽しいものになっていくはずだ。
デモ発表で扱われるような技術は、いろいろな人に体験してもらって、フィードバックを得ることで進化するようなものだと思う。インタラクションはここ数年、最終日のデモ発表を科学未来館で一般公開している。未来の体感を味わえるのはすごく楽しい。インタラクション2014でデモが公開されるようなら、ぜひとも体験してもらいたい。
- Yamaguchi Mini Maker Faireに西日本のMakerが集結!
- 「Makeすることで世界は変わる」〜「Make」編集長が語るMakerムーブメント
- みんな笑顔のお祭り〜Maker Faire: Taipei 2013
- 生物学からMakerムーブメントまで、ニコニコ学会βの範囲がさらに広がる!
- 人とコンピュータの未来 インタラクション2013レポート
- 開発者のスタ誕「CROSS VS」が開催、おばかアプリ選手権賞は…
- 誰もが研究者の時代? ニコニコ学会βレポート
- メリーおばか! 聖夜にふさわしいおばかアプリ、お台場に集結
- 世界に誇る日本の学生のバーチャルリアリティ力
- 「アドテック東京」で「アホテック東京」を作った話
- 手軽に家電が作れる時代に小さな会社だからできること
- 五輪より熱い!? ベスト8が頂点競う おばかアプリ選手権
- 『FabLife』のインターネット黎明期のようなワクワク感
- JSエンジニアがアドビに聞く “iPhoneでFlashが動いたらアドビはFlashの開発を続けたか”
- 何食わぬ顔で、その荒野の真ん中に躍り出よ
- jQuery MobileなどUIフレームワークの基礎を学ぼう
- Retina ディスプレイを搭載し、薄型化した
- 超エンジニアミーティングに集ったテクノロジ
- 僕らはみんな何かの作り手だ!
- Kinectで巨乳になれるワールドカップ2012レポート
- おばかの“合コン”「ばかコン」、Ruby使いの女子大生モデル・池澤あやかさんも参加
- 【第29回 HTML5とか勉強会レポート】 次のモバイルアプリはどのフレームワークで作る?
- 【第27回 HTML5とか勉強会レポート】 LESSやTwitter Bootstrapで簡単デザイン
- 女子大生が異彩を放った「おばかアプリブレスト大会」
- 【おばかアプリ公開ブレスト ザリガニワークス徹底分解】 分解して振り切って、余白でコミュニケーションを
- 【HTML5とか勉強会レポート Webと電子書籍】 なぜWebではなく電子書籍なのか?
- 【HTML5とか勉強会 Webと家電】 家電のUIになるブラウザ
- 【Qtカンファレンスインタビュー】 Qt5で10億人ユーザーへ、OSSコミュニティ化でますます健在に
- 【第24回 HTML5とか勉強会レポート】 108もあるぞ! HTML5の要素数
- 【@ITスマートフォンアプリ選手権レポート】 学生からプロまで入り乱れてのアプリ合戦頂上対決!
- 【「iPhone・iPadアプリ大賞2011」レポート】 グランプリは生徒と先生が作った役に立つARアプリ
- 【第23回 HTML5とか勉強会レポート】 HTML5のデバイス&位置情報系APIを使いこなせ!
- 作りたい欲求を刺激するMake:07@東工大レポート
- 500作品が競った「Mashup Awards 7」表彰式
- 【第22回 HTML5とか勉強会レポート】 Processing.js、SVG、WebGL。HTML5周辺のグラフィック関連技術
- 【Google Developer Day 2011 Japanレポート】 HTML5で今までにないサイトを作る
- 【第21回 HTML5とか勉強会】 ゲーム開発はHTML5+スマホベースが新潮流
- 【東京ゲームショウ2011】 ゲームは、スマートフォン、拡張現実、そしてナチュラルインターフェイスに
- 第5回おばかアプリ選手権レポート 見よ! コレジャナーイアプリの数々を!
- Adobeが作ったHTML作成ツール、Edgeの本気度
- 【Chrome+HTML5 Conferenceレポート 】HTML5づくしの1日
- 【おばかアプリブレスト会議レポート 】おばかな人知が集結したブレスト会議
- 【15分で体験するApple WWDC 2011 Keynote】「iCloud」が示す「こちら側」を中心とした世界観とは?
- jQuery Mobile+PhoneGap連携でDreamweaverはスマホアプリ開発ツールに?
- 歌あり笑いあり過去最大規模となった技術者の祭典
- 「無料モデルに興味はない」「プログラマは創造的だ」〜セオドア・グレイ氏インタビュー
- Windows 7でも「おばかアプリ選手権」は大爆笑でした
- 4回目を迎えたおばかアプリ選手権、その見所とは
- おばかアプリ作成のための超まじめな勉強会レポート
- Flash CS5のiPhoneアプリ変換機能は無駄にならない
- デザイナだからこそ作れるUXに企業が注目している
- マッシュアップを超えたマッシュアップを−Mashup Awards 5表彰式レポート
- 3回目にして完成形を迎えた「おばかアプリ選手権」
- Web標準に準拠し独自技術Silverlightで補完する
- 3回目はあるのか? おばかアプリ選手権レポート
- クリエイターであるためにFlash待ち受けを出し続ける
- ユーザーエクスペリエンスのadaptive path訪問記
- 第1回おばかアプリ選手権はこうして行われた
- Adobe MAXレポート:Webにおけるグラフィック表現手段としてのFlash
- ケータイ版AIRでFlash Liteの成功パターンを踏襲
- ペパボ社長・家入氏が語る、バカとまじめの振り子の関係
- 植物の「緑さん」がブロガーになるまで
- Chumby開発者が語る 誕生秘話とビジネスモデル
- Mashup Awards授賞式レポート マッシュアップ+ひとひねり=MA4の受賞作
著者プロフィール
高須 正和 @tks
ウルトラテクノロジスト集団チームラボ/ニコニコ学会β幹事
趣味ものづくりサークル「チームラボMAKE部」の発起人。未来を感じるものが好きで、さまざまなテクノロジー/サイエンス系イベントに出没。無駄に元気です。
第4回のニコニコ学会βシンポジウムを4月27、28日(土-日)幕張メッセにて行います。今回は、全国のものづくり工房が連続して発表する「FAB100連発」という企画を予定しています。すでに、一般参加の発表枠「研究してみたマッドネス」「ポスターセッション」の自薦/他薦を受け付けています。請うご期待!
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.