プログラムを「どや!」と発表し合う、明治大学アブノーマルプログラミングUXClip(7)(3/3 ページ)

» 2012年10月30日 16時20分 公開
[高須 正和,ウルトラテクノロジスト集団チームラボ]
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研究テーマになりそうな作品

 アブノーマルな思い付きから、そのまま研究にもなり得るようなテーマが見つかることもある。

人間にしか分からない画像認証

 ドリコム@tokoroten氏が披露したのは、認証に使うCAPTCHAを画像で行うもの。キーボードでなく画像のドラッグで行うことで、スマートフォンなどではより使いやすくなる。

 例えば、「禿げた人の頭にカツラを載せる」「Googleの形にロゴを並べる」ような、「人間には簡単にできるがコンピュータの画像認識では難しい」問題を画面上に表示し、画像を使って認証をする。

 これはアイデアも実装も面白く、京都大学の中村聡史先生など、会場のインターフェイス研究者から喝采を浴びていた。

スマートフォン版CAPTCHA

動作中のウィンドウを切り取って再配置

 宮下研の@y42sora氏はあらゆるソフトのウィンドウを切り取り、再配置するプログラムを披露した。

 例えば、ペイントのパレットだけ切り取って別の位置に置く、キャンバスだけ画面の隅に置いておくようなことができ、通常のアプリをウィジェットのように使える。

あらゆるソフトのウィンドウを切り抜いて再配置するプログラム

イグノーベル賞受賞者も発表!

 イグノーベル賞の受賞者、産総研栗原一貴氏からも授賞式が行われたアメリカから受賞スピーチと新作プログラムが届き、騒然となった。

 「最近娘がカメラを持って走り回っているのだが、むしろ娘を撮りたい」という考えから生まれた、「写真を撮るお前を撮りたい」というプログラムで、自分に向けられたカメラに向けてQRコードを表示することで、撮影された瞬間の撮影者を撮影し、「この写真を撮った瞬間の撮影者」を逆撮影するプログラムを披露。

イグノーベル賞受賞者も参戦

おにたま氏による基調講演

 今回のABProの基調講演として、HSPの開発者であるおにたま氏の講演が行われた。HSPは簡単にゲームなどのインタラクティブなものが作れるBASICをベースにした言語である。ABProには特に言語による制限はないが、HSPに精通している発表者も多い。

 講演では、「名前の怪しさが満点なこと、危険なこともできてしまうことなどから、中学生に人気である」「危険なこと(終了できないプログラムが書けるとか)ができる結構な高揚感」などの名言が飛び出し、HSPプログラマの「あるある」を喚起した。

おにたま氏によるプレゼン

 プレゼンは「作り出す過程でアイデアが生まれる(まず手を動かした方がよい)」「自分が作ったものが一番という妄想がないといけない」で締めくくられた。

 この言葉はまさに、ABProの精神と同一であるといえよう。

プログラミングならではの面白さ

 コンピュータの中にあるものを全部制御し、物理法則を無視して「全部を、作りたいように作れる」という面白さ、あらゆるものをHackできる面白さが、プログラミングにはある。ABProの参加者は全員が「プログラミングだからこそ作れる面白さで、人を楽しませよう」としているように思えた。

AとBだけでプログラムする言語を自作

 「AとBだけですべてを表現するプログラミング言語」は、プログラミング言語そのものを作ってしまった作品だ。

Print =AA

代入=BABA

 など、配列、命令、代入などをすべてAとBだけで表現する。作者の嶋本氏はこの言語でバブルソートを目の前で実装した。

AとBだけでプログラミングする言語

見慣れたゲームをHack

 他にも、「囲碁とライフゲームを組み合わせたゲーム」「音楽情報・音響情報処理言語PureDataでインベーダーゲームを再現」など、見慣れたゲームや普段使っているツールをHackするところに面白さがある。

囲碁とライフゲームを組み合わせる。 (制作:@nhei456saku

PureDataでインベーダーゲーム (制作:@kaede_tone

 コンピュータがあること、コンピュータを使えることはある意味「当たり前」のことになりつつある。プログラムの授業がある学校も珍しくなく、「プログラムができること」の特別さ、プログラミングならではの楽しさは、普及した分話題に上らなくなりつつある。しかし、コーディングやハッキングの重要さ、自分が書いたプログラムが動く喜び、人に見せられる喜びは、いつの時代も変わっていない。プログラミングからわき上がる発想のすごさは、普通ではない。これは、ものを作る体験があるからこそ生まれるものなのだ。

 ABProでは、手段としてのプログラミングではなく、「どうやって人を驚かせ、笑わせ、楽しませたか」という、表現としてのプログラミングの面白さや素晴らしさが追求される。

 もちろん、

  • どういうものを作るか
  • どう実現するか

 を自分で考えながら、プログラムとプレゼン内容を考えていくのはいいトレーニングになる。大学生が行うイベントとしての教育的な意義もある。

 でも、ABProには順位付けのような評価の仕組みはなく、全員が「自分の作品が一番」と思えるような作品を作ること、そう思えるようなイベントにすることが推奨されている。Maker Faire Tokyoのようなイベントに近い、祭りとしての形が目立つ。

 Make:は物理的なものを相手にしてコーディングやハッキングを行うが、ABProはプログラミングによりコーディングやハッキングを行い、それが分かる/楽しめる人たちがお互いの作品やアイデアを楽しみ合うイベントだ。そこには、自らの発想を生き生きとプレゼンするプログラマがいる。

 来年のABPro2013は、新設される明治大学中野キャンパスで開催される。作品だけでなく、発表者からの「どや!」を体感しに、はたまた自らのプログラムを披露しに、あなたも参加してはいかがだろうか。

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著者プロフィール

高須 正和 @tks

ウルトラテクノロジスト集団チームラボ/ニコニコ学会β幹事

 趣味ものづくりサークル「チームラボMAKE部」の発起人。未来を感じるものが好きで、さまざまなテクノロジー/サイエンス系イベントに出没。無駄に元気です。

 次のイベントは、12/1-2のMaker Farie Tokyo(お台場:科学未来館)にチームラボMake部として出展しますので、会場でお会いしましょう!

 また、12/22に、第3回ニコニコ学会βシンポジウムをニコファーレ・ニコニコ生放送しますので、お楽しみに!


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