いよいよ疲れたときは、15分から30分ぐらい仮眠を取ると応急処置になる。椅子に座ったままで、目を閉じて休む。デスマーチ真っただ中の開発現場でも、それぐらいは許してほしいものだ。「眠り」の状態にあるかどうかは気にしなくていい。目を閉じるだけでも、刺激が減って脳が休まる。30分休んでも、次の2時間の生産性が3割上がれば十分モトは取れる。
「寝た方がいいことは分かっている。しかし締め切りは今日なのだ」という場合にはどうすればよいか。
誰しも、調子の上がる時間帯が一日のうち2〜3時間くらいあるはずだ。パフォーマンスが問われる重要な仕事をその時間に充てて、それ以外の時間は雑務をこなすなど「流して」仕事をして、疲れの回復を期するのだ。
ビジネス本を読むと、朝から午前中に集中力と処理力が高い人が多いようだが、筆者は若いころから夜型なので、午前中が苦手だ。エンジニアにもこのタイプが多いのではないだろうか。
午前中の筆者は、午後や深夜の半分以下のパフォーマンスしか出せない。その日の睡眠状況によって前後するが、仕事の能率のピークタイムは、だいたい午後3時から6時の間ぐらいだ。だから、重要な仕事をこの時間に集中的にこなせるように一日のスケジュールを組む。こうした自分のリズムを利用すると、いくらか疲れ問題を解決できる。
これと併用すると有効な手段は、小さな「締め切り」の設定だ。例えば、6時までに仕事を終えたいと決めたら、6時半に出掛けなければ間に合わない予定を入れる。試験中に頭が働くように、人間にとって締め切りの効果は絶大だ。
締め切りを作るのはリスクが大きいのではないかと思うかもしれないが、案外そうでもない。先に締め切りがあると思うと、ピークに設定した時間よりも前の時間から、何をどのようにしたらいいかを半ば無意識に考え始めて準備が進んでいることが多い。疲れをこれ以上増やさないために、仕事を長引かせないようにする、というわけだ。
いずれにせよ、疲れていいことはないし、他人に疲れを伝染するのは迷惑だ。「疲れた」はオフィスで禁句にしたいものだ。
山崎 元
経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員
58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役、獨協大学経済学部特任教授。
2014年4月より、株式会社VSNのエンジニア採用Webサイトで『経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」』を連載中。
※この連載はWebサイト『経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」』を、筆者、およびサイト運営会社の許可の下、転載するものです。
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