Windows Server 2012 R2までは、利用可能なクラスターディスクの一つにクォーラムを配置する「ディスク監視(Disk Witness)」、ファイルサーバーの共有(UNC)パスにクォーラムを配置する「ファイル共有監視(Fire Share Witness)」のいずれかを構成できました。ディスク監視は、全てのノードからアクセス可能なクラスター用の共有ストレージが存在する場合に使用します。ファイル共有監視は、共有ストレージを利用できない場合のオプション構成になります。
Windows Server 2016では、「クラウド監視(Cloud Witness)」というクォーラム監視オプションが新たに追加されます(画面1)。
クラウド監視は、Microsoft Azureの「Azureストレージ」にクォーラムを配置して監視します(図1)。クラウド監視を利用するには、Microsoft Azureの有効なサブスクリプションが必要です。また、クラスターに参加する全てのノードは、インターネットを介してAzureストレージにアクセスできる必要があります。Azureストレージへのアクセスは、HTTPSのアウトバウンド通信で行われます。
クラウド監視は、共有ストレージを使用しない役割のクラスター(例えば、SQL Serverの「AlwaysOn可用性グループ」など)、特にマルチサイトクラスターに適しています。地理的に離れたサイトをまたがるクラスターは、サイト間のWAN(ワイドエリアネットワーク)接続やVPN(仮想プライベートネットワーク)接続がサイト単位で断絶する可能性があります。クラウド監視はインターネット経由でクラウドに配置されるため、サイト間の通信断絶の影響を受けません。
クラウド監視を構成するには、Microsoft Azureのポータルで「ストレージアカウント」を作成します(画面2)。クラウド監視の構成に必要になるのは、作成したストレージアカウントの「ストレージアカウント名」と「プライマリアクセスキー」です。これらの情報はMicrosoft Azureのポータルで参照でき、クリップボードにコピーすることも可能です(画面3)。
ストレージアカウントが用意できたら、「フェイルオーバークラスターマネージャー」から「クラスタークォーラム構成ウィザード(Configure Cluster Quorum Wizard)」を起動して、クラウド監視を構成します(前出の画面1)。後は特に難しいことはありません。ウィザードで「クラウド監視の構成(Configure cloud witness)」を選択して、先ほど取得した「ストレージアカウント名」と「プライマリアクセスキー」を入力するだけで設定は完了します(画面4)。
以下の画面5は、クラスターでクラウド監視を構成後、Azureストレージを操作できるユーティリティの一つ「Azure Storage Explorer」で、Azureストレージのストレージアカウントを参照しているところです。クラウド監視のためには、わずかな(ファイル共有監視と同じく5MB以下)のストレージ領域しか使用しないので、クラウド監視で発生する課金について心配する必要はないでしょう。
実はこの10月に、Azureストレージの新しいタイプである「ファイルストレージ」が正式リリースされました。ファイルストレージを利用すると、AzureストレージをSMB(Server Message Block)3.0の共有フォルダーとして構成し、オンプレミスからUNCパスでアクセスすることができます。この機能を利用すれば、Windows Server 2012 R2以前のフェイルオーバークラスターでも、Windows Server 2016のクラウド監視と同様の環境を構築できるでしょう。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手がける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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