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SIer→SIerの転職が激減、自社サービスや社内SEに流れるIT業界 転職市場最前線(32)

不況で冷え込んでいたIT業界の転職市場に、回復の兆しが見え始めている。だが、業種や職種によって採用数や条件に大きな差異が生まれている。転職市場の動向を追い、自身のキャリア戦略立案に生かしてほしい。

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 年末に向けて、企業の採用活動は活発化している。特にWeb業界では、採用ハードルを引き下げたり、ポテンシャル枠を設けたりと、採用枠を拡大する企業が多かった。選考結果を即日伝えることで、採用のスピードアップを図る企業もあった。

 スマートフォン市場の活況も続いている。エンジニアやクリエイターを中心として、ディレクターやプロデューサーなど、さまざまな職種で採用ニーズが高い。

Web業界

 人材獲得競争の激化が止まらない。「人員の確保が困難」と判断した企業は、その打開策として、東京本社を持ちながら地方都市に開発拠点を設け始めた。地方都市在住の優秀なエンジニア/クリエイターを現地採用するのが狙いだ。

エンジニア/クリエイター:地方オフィスでの現地採用が進む

 「不況のため就職活動がうまくいかなかった」と感じている若手人材が、積極的に転職活動を行っている。企業側でも、新しい動きがある。東京本社のWeb企業が、地方都市に開発拠点を設け、現地で優秀なエンジニアやクリエイターを採用し始めるケースが増加している。採用競争の/がその一因だろう。

ディレクター/プロデューサー:情報系サイトを中心に高い採用ニーズ

 情報系サイトを中心に、採用活動が活発化した。広告や電子書籍関連の求人、受託会社の求人も増加している。職種の幅は広い。企画からディレクション、運営、分析、プロモーション、マーケティングまで、あらゆるポジションで採用ニーズが高い。

その他職種

 マーケティングに営業、企画職、バックオフィスなど、募集職種が広がりつつある。Web業界の活況と積極採用の波に乗って、30代後半〜40代前半の採用実績が増加したことは、11月の動向として特筆すべき点だろう。年齢とともに、求める要件や選考ハードルは上がるものの、経験と年収とのバランス、在職中の社員と調和できるか否かも重視される。


モバイル・スマホ業界

 スマートフォン市場の拡大は、とどまるところを知らない。フィーチャーフォン関連の求人数とスマホ関連の求人数では、圧倒的に後者が多い。この傾向は、2012年以降もさらに加速するだろう。

エンジニア/クリエイター:PHPやPerl、Ruby経験者にニーズ

 どの職種も総じて採用ニーズが高いが、エンジニアやクリエイターの採用は特に活発だ。PHPやPerl、Rubyを使った開発経験者のニーズが高いことに変わりはない。他、クリエイター系はHTML5やCSS3、JavaScriptの経験、エンジニアはJavaやObjective-Cの経験が求められている。Flashのニーズは現段階では高いものの、今後はHTML5技術へとシフトしていくだろう。


システム業界

 システム・インテグレータ(SIer)からSIerへの転職を希望する人が著しく減少している。自社製品・自社サービスを有する企業や事業会社での社内SEへの転職希望が圧倒的だ。

 つまり、「SIerからSIerへ」の転職は競争者が少ないともいえる。そのため、SIerからSIerへの転職では、中堅企業から大手企業へ、もしくはSEからプロジェクトマネージャへといったキャリアアップを伴うケースが多かった。

SIer:大手SIerが採用を再開

 募集をストップしていた大手SIerが数十名規模で採用を再開するなど、全体的に好調である。中でもWebアプリケーションエンジニアのニーズは10月同様に高く、「スマートフォンアプリ開発」「ECシステム構築」「ソーシャルメディアのアプリケーション開発」といったプロジェクトへのアサインが増加した。

NIer:スマホ利用者の増加に伴い、募集職種が多様化

 ネットワーク・インテグレータ(NIer)の求人に大きな変化はない。スマートフォン利用者の増加に伴って、募集職種が多様化しているのが特徴だ。通信系の運用担当者やWebサイトのインフラ運用担当者などが相当する。


ゲーム業界

 コンシューマー、オンライン、ソーシャル、すべての分野で採用ニーズが高い。ソーシャル分野の採用は特に活発で、Web業界・ゲーム業界の双方から人材を求め、ポテンシャル重視の採用も多かった。

ソーシャルゲーム:ポテンシャル層にまでターゲットを拡大

 ゲーム業界の中でも、最も活発な採用を行っていたのがソーシャル業界である。ターゲットをポテンシャル層に拡大したことが特徴的だった。中小企業がディレクター/プロデューサー職を求める他、プランナー職の求人も出始めており、募集職種は幅広い。求職者の多くもソーシャル分野を志望しているため、競争率が高い。

コンシューマーゲーム:求人数に大きな変化なし

 求人数の増減はなく、大きな変化も見られなかった。求職者は、腰を据えてじっくりと転職活動をすると良いだろう。


営業・その他

 SI業界、ソフトウェア業界での求人は減少傾向にあり、採用ハードルも高い。反面、Web業界では、営業やバックオフィスの求人は増加している。Web業界以外からのキャリアチェンジを考える求職者にはチャンスである。

営業:全体の8割がWeb業界からの求人

 営業職は、10月比40%増と大幅に増加。その内訳としては、8割がWeb業界、2割がSI業界/ソフトウェアメーカーである。

 Web業界では、広告営業職やコンテンツプロバイダでの法人営業職がメインだった。中でも、自社サイトにおけるインターネット広告の提案を担う営業職が、最も多い。この職種は業界経験より法人営業経験の有無を問う傾向にあるため、業界未経験の求職者でも比較的、転職しやすいだろう。

 また、自社コンテンツを商材とする営業職でも同様の傾向が見られた。異業種からの転職者には、広告営業職よりもさらにハードルが低い分野である。


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