BtoC人気に埋もれがちな、BtoBスマホ開発職が求人増IT業界 転職市場最前線(39)

不況で冷え込んでいたIT業界の転職市場に、回復の兆しが見え始めている。だが、業種や職種によって採用数や条件に大きな差異が生まれている。転職市場の動向を追い、自身のキャリア戦略立案に生かしてほしい。

» 2012年07月19日 00時00分 公開
[ワークポート]

6月のIT業界求人市場まとめ

 全体的に好調で、都内だけでなく、地方での求人も増加傾向だ。未経験者や経験年数の浅い求職者がターゲットの求人も多い。IT企業のグローバル化に伴う求人も引き続き増加しているため、語学力や海外案件などのバックグランドを持つ求職者にとって追い風となるだろう。

Web業界

 ECサイトの運用担当への募集は5月から増加しているが、「3年以上のECサイト企画・運用経験」「ECサイトに関連する業務知識」などが求められており、WebサービスからEC業界への転身を目指す求職者にはハードルが高い。

エンジニア:ユーザー企業の社内SE求人が複数出る

 IT業界以外のメーカーから事業会社、地方企業まで、幅広い企業から社内SEの求人が出た。社内SEは人気職種で競争率が高いため、求職者は求人を見かけたらすぐに応募し、選考に乗ることが重要だろう。社内外の相手とのコミュニケーションが不可欠な職種であるため、面接では人柄をチェックする企業が多い。

その他職種:インフラ・運用の求人が増えている

 自社パッケージの開発・運営をしている企業のサポート職、Webサービスを展開している企業のインフラ運用・保守業務などの求人が増加した。「2年以上のヘルプデスク業務の経験」「サーバ構築経験」「業務システム開発・運用経験」などが必須条件だが、ターゲットとなる年齢層は広い。


モバイル業界

 スマートフォンの普及とともに、モバイルサイトを中心にコンテンツを考える「モバイル・ファースト」という言葉が普及してきており、この流れに乗ってサービスを展開する企業が増えている。

 PC経由よりもスマホ経由の売上が多くを占めると言われるECサイト企業は、特にスマホサイト構築を急いでいる。

エンジニア:SIer、Webインテグレータのスマホ開発職にチャンス

 BtoBに特化してスマホアプリを開発する企業に続き、システム・インテグレータ(SIer)やWebインテグレータ、ソフトハウスなどでも、スマホ開発エンジニアの求人が増加している。

 しかし、求職者は自社内開発を希望する人が多いため、自社コンテンツを持つ企業への応募が多い。逆に、SIerやWebインテグレータは自社コンテンツを持つ企業に比べて、競争率が低いということだ。未経験者、経験年数が短いエンジニアの場合は、視野に入れてみるといいだろう。


システム業界

 東京だけでなく、地方の求人増加が目立った。大阪、愛知、福岡に次いで、山形、京都、三重、岡山、山口など、幅広いエリアで採用活動が展開されている。支店の拡大を図る大手企業に加えて、古参の地元企業からの求人も多く、Uターン・Iターンを考える求職者にはチャンスが拡大している。

SIer:5月比で40%求人増加

 SI業界では依然としてWeb系SIerの採用ニーズが高く、5月比で40%ほど求人が増加と、順調に増加している。また、インフラ系の求人も50%増加した。

 Web系はスマホ向けアプリの開発が増加していることが、原因だろう。インフラ系に関しては、震災の影響が落ち着き、企業側に設備投資する余裕が出てきたことが大きい。

 採用企業を見ると、大手企業で発生しているシステムの入れ替え作業に伴って、グループ企業のクラウド案件、大規模システム構築関連の採用が活発化している。上半期中に複数名の採用を検討する企業も多く、さらなる求人増加が期待できそうだ。

NIer:微増傾向は変わらず。ベテラン求める

 ネットワーク・インテグレータ(NIer)の求人は5月比20%増と、微増傾向は変わらない。入れ替わりが激しい職種ではないため、「急募」の求人は少ない。企業側は総じて、経験豊富で安定して活躍できる人材を求める傾向にある。


ゲーム業界

 ヤフーがインド有数の企業グループであるBhartiグループとの合弁会社設立を発表した。ソーシャルゲーム業界の上場・競合・グローバル化は、ますます加速するだろう。

 今後は、これまで以上にバックオフィス系(経理財務・法務・知財特許など)の職種の増加が見込まれるとともに、語学力を求めるケースが増えると予想できる。

ソーシャルゲーム業界:3DCGデザイナーが微増

 これまでイラストレータ、2DCGデザイナーの求人が中心だったソーシャルゲーム業界で、ここ最近、目立っているのが「3DCGデザイナー」の求人だ。特にスマホ環境でのアプリ開発に携わる求人が多い。コンシューマーゲーム業界からソーシャルゲーム業界への転身を図る3DCGデザイナーは、今後の動向に注目しておきたいところだ。

アミューズメント業界:ソーシャルゲーム業界を追撃

 アミューズメント業界(パチンコ・パチスロ)はグラフィックデザイナー、映像編集といった職種の求人が堅実にある。今後も着実に求人数を伸ばしていくと考えられる業界だ。


営業・その他

 営業職・バックオフィスともに求人数は増加。職種を問わず「転職回数」を厳しくチェックする企業が多いため、回数が多い求職者は、明確な転職理由を伝えられるように事前準備しておくといいだろう。

営業関連職:幅広い業界が採用を再開

 営業職は、SIerや広告代理店など、景況感の好転から採用活動を再開する企業があり、幅広い業界で求人数が増加した。即戦力を求める傾向に大きな変化はない。法人営業における新規取引先との折衝経験なども重視されている。

バックオフィス:人事職・経理職が増加

 経理職は、欠員補充などが多い。毎年、8月頃までは求人数が増加する傾向にあるが、今年も同様の推移になるだろう。

 一方、人事職(特に採用関連職)は、ソーシャル関連業界における新卒や中途の採用活性化・エンジニア採用活性化に伴い、増員が多い。若手の場合は、人材ビジネス出身者などで採用関連業務に従事した経験があれば、「人事経験がなくても可」とする企業もある。また、大手企業では、グローバル採用、教育研修担当職などを強化している。


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