不況で冷え込んでいたIT業界の転職市場に、回復の兆しが見え始めている。だが、業種や職種によって採用数や条件に大きな差異が生まれている。転職市場の動向を追い、自身のキャリア戦略立案に生かしてほしい。
年末から鈍くなっていた求職者の動きが、1月中旬から復調。転職市場は活発な動きを見せている。企業の採用意欲も引き続き高く、事業拡大のための増員が目立つ。
Webサービスは、年末も変わらず募集数が多かった。この好景気に乗ろうとする求職者がいる一方、「転職の活況がいつまで続くのか分からない」という不安から、転職を急ぐ人も多かった。
「今期中に○名採用したい」と具体的な採用人数を挙げる企業や、複数名の採用枠を設ける企業が多い。一方、「新たなサービスを作れる人材」のみならず「既存サービスの運用・拡大ができる人材」のニーズも高まりつつある。アフィリエイト・リスティングなどの運用、SEO・SEMの知識や経験を持つエンジニアにはチャンスがあるといえるだろう。
経理や人事、法務、秘書といったバックオフィス系の求人は増加しているが、応募条件が細かい上、エンジニアやクリエイターといった技術職よりも学歴や転職回数を厳しくチェックされる傾向にある。そのため、ハードルはやや高い状態だと言えるだろう。
ソーシャルゲーム関連の採用が相変わらず活発だ。版権物などのコンテンツを活用したゲームにトレンドが移行するとともに、採用ニーズもさらに高まっていくと予想できる。
エンジニアはこれまでと変わらず、JavaやObjective-Cなどスマホアプリのエンジニア、およびPHPやPerl、RubyなどWeb系のエンジニアが多く求められている。スマホ開発エンジニアについては即戦力を求める企業が多いものの、市場に経験者が少ないことから、採用に苦戦している企業が多い。
クリエイター関連では、ユーザーインターフェイス(UI)を意識したデザインを行えるUIデザイナーの需要拡大が顕著だ。
システム・インテグレータ(SI)業界では、エンドユーザーからの発注増によって、求人数が前月比3.5倍と急増した。
ネットワーク・インテグレータ(NI)業界でも、求人数の増加が見られた。特に、3月に退職を検討する人材をターゲットに、即戦力を求める採用活動が活発化している。
金融や医療、製造業、物流に通信、公共など幅広い分野で求人が増加した。同業界出身者、および即戦力となり得る人材をターゲットとした求人が目立った。
2次請け以降の企業による求人は、数は少ないものの新規求人もあった。コーディング力や実装力だけではなく、システム設計経験や顧客折衝経験、業務知識が求められる傾向にある。
SIer業界ほどではないものの、求人数は前月比約2倍と増加傾向にある。昨年12月は、インフラの構築経験を求める求人が全体の80%を占めていたが、1月はさまざまな業界での経験や知識を持った人材を手広く募集している印象だ。求職者のチャンスは拡大しているものの、いまだ買い手市場であることに変わりはない。
引き続き、スマホ関連の求人が増加している。人材獲得競争を勝ち抜くべく、人事部門から切り離した特別採用チームを発足させる、採用フローの見直しを図って選考過程を短縮する、説明会を多く開催するなど、通常とは異なる採用方法を用いて成果を挙げる企業が出てきたのが印象的だった。
Web企業だけではなく、昔ながらのゲーム企業もソーシャルゲームによって業績が回復するなど、ソーシャルゲーム関連による好業績が次々と発表されている。2012年に入って高止まりがささやかれるものの、求人マーケットではまだ熾烈(しれつ)な採用競争が続いている状態だ。
Web広告企業では、スマホ関連の求人増加を要因として、採用枠を拡大する動きが出始めた。システム系業界からの求人も増加しており、業績の回復がうかがえる。
事業拡大や業績アップに伴う増員が目立ち、好調な企業が多いことがうかがえる。これまで求人を牽引してきたWeb業界に加えて、SI業界からの求人も増え始めている。
業績拡大に伴う求人が目立つようになった。特に人事(採用、労務)部門強化を目的とした求人が増加している。また、ソーシャルゲーム企業では、管理部門全般(経営企画、事業企画、経理財務、人事、総務、法務、一般事務、営業事務)の求人が活発だ。幅広い年齢層をターゲットとしている印象だ。
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