レッツゴー九州 福岡の求人増加中IT業界 転職市場最前線(52)

不況で冷え込んでいたIT業界の転職市場に、回復の兆しが見え始めている。だが、業種や職種によって採用数や条件に大きな差異が生まれている。転職市場の動向を追い、自身のキャリア戦略立案に生かしてほしい。

» 2013年09月02日 00時00分 公開

2013年7月のIT業界転職市場まとめ

 与党自民党の公約「世界最先端IT国家創造宣言」の影響が続き、多くの職種で求人が増加している。インターネットでの選挙活動が解禁となって生まれた新サービスがどのように進化、発展していくのかと併せて、注視していきたい。また、ゲーム業界などIT業界全体の福岡進出が加速し、求人も増加している。

Webエンジニア

 メガバンクの統合や汎用機からWebへの移行、景気上昇などを背景として、銀行や証券、保険業界などの金融業界で、アプリケーションを開発できる人材やプロジェクトマネジメント経験者をターゲットとした求人が多数発生している。大手コンサルタント会社やSIer(システムインテグレータ)を狙う方にとって好機だ。

ERP/クラウド導入コンサルタントのニーズ拡大

  SAP、Salesforceなど、企業向けのERP導入コンサルタントのニーズが高まっている。今の時期であれば営業・プリセールスや上流SEからのキャリアチェンジも可能だろう。クラウドコンピューティング導入案件も同様に増加が続く見込みだ。

堅調なファーム/スマートフォンアプリエンジニア求人

  製造業の業績回復を受け、自動車・家電などの開発パートナーとなる組み込み系ソフトハウスの求人が好調を保っている。スマホアプリ開発ではUI/UXの開発案件が増加しているほか、Java、PHP、Objective-C、Rubyエンジニアも需要拡大が続く見込み。


インフラエンジニア

 ビッグデータの時代がついに到来し、対応用の技術やエンジニアを導入しようとする動きが、各企業で盛んだ。求人票でも「負荷分散」などの言葉が目立つ。中でも今後注目される技術は「Hadoop」だろう。

クラウド案件増加

  コンテンツやサービスを提供する企業では、クラウド化が急速に進んでいる。ニーズが顕在化しているのか、具体的なサービス名を求人票に明記する企業が増えた。SIerの募集案件でも「クラウド」がキーワードとなっている。

アウトソーシングの活発化

  SIerやNIer(ネットワークインテグレータ)の求人や、事務系職種の求人が増えはじめている。最近はPL(プロジェクトリーダー)やPM(プロジェクトマネジャー)などマネジメント層の求人も多い。企業や官公庁ではカバーしきれない、技術の多様化と高度化に対応しようとするものだろう。


ディレクター・プロデューサー

 自社サービス・クライアントワーク共に、業績好調による積極採用が続いている。単なる増員ではなく将来の幹部候補を求める企業が多く、実務経験年数など即戦力としての評価が採用への鍵を握るだろう。

企業にあわせたアピールが鍵

  ディレクターには管理能力が求められるため、マネジメントや外注とのやりとりなどの経験を具体的に職務経歴書に記載して、積極的にアピールすることが大切。また、同じ職種でも求めるスキルや人物像は企業によって異なるため、デザインやコンテンツの企画が重視される場合はデザイナー経験を、Web制作をメインにしている場合は管理力や対人能力をといった具合に、希望する企業に合わせてアピールポイントを変えていくことが必要だ。

選考は慎重

  管理という立場もあってか、慎重な選考をする企業が多い。他職種より面接回数が1〜2回多いため、選考がスムーズに進んだとしても最低1カ月半はかかると見た方がよいだろう。在職中の求職者は、引き継ぎ期間も考えて退職予定3カ月以上前から活動開始することをお勧めしたい。


Webデザイナー

 コーディングよりの経験を持っている求職者は書類選考を通過しやすい傾向にある。また、レスポンシブルWebデザイン(PC、タブレット、スマートフォンなど、あらゆるデバイスに最適化したWebサイトを単一のHTMLで実現する制作手法)が注目を集めつつあるため、該当するスキルの所持者は応募できる求人の幅が広がるだろう。

ECサイト関連の求人が増加

  EC関連の求人が増加している。最近の特徴として、以前よりさらに職種が細分化されている点が挙げられる。大まかには「ECサイトのデザイン、コーディング担当」、「サイトの運営・マーケティング担当」、「商品登録・管理、カスタマーサポート担当」に分かれ、このうちのどれかひとつを担当するか、全部を担当するかは企業によって異なる。ECサイトの経験がなくても、ポートフォリオ(作品サンプル)次第で応募可能な求人案件もあり、それほどハイスペックなスキルが求められていないため、第二新卒や経験が少ない方にも比較的ねらい目である。

面接回数は1回、もしくは2回

  面接回数は1回、または2回のところが全体の8割を占めており、書類選考から内定までの期間は他の職種に比べて短い傾向がある。しかしながら書類選考の通過率は他職種と比べて低く、理由としてポートフォリオのテイストやセンスが選考の多くを占めていることが挙げられる。作品を用意する際はジャンルやテイストを応募先によって調整すること。広い経験がない場合は、逆に応募する媒体の幅を広げることが肝心だ。


ゲーム関連職種

 IT業界全体の福岡進出が加速し、ゲーム業界でも福岡の求人が増加している。LINE株式会社が福岡に自社ビルを建設予定というニュースもあり、福岡での採用はさらに活発化していくだろう。

ネイティブアプリに注力する企業が増加

 ネイティブゲームをリリースしている企業は軒並み時価総額が上がるなど、ここ最近、ネイティブアプリに注力する企業が増加している。これに伴い、Android(Java)やObjective-Cでの開発経験や、Unityの経験のあるエンジニアのニーズが拡大傾向にある。

クリエイティブ系求人も増加

 グラフィックデザイナーやイラストレーターの求人も増加している。経験年数や転職回数よりもスキルを重視して採用する企業が多く、ポートフォリオが合否を分けるといっても過言ではない。


営業

 求人数に目立った増減はなく高水準を維持しているが、各社の採用ハードルは上がってきている。「ルーティンでサイト更新をしてきた」「進行管理をしてきた」というだけでは書類選考の通過が難しい。

異職種への転職成功事例も見られる

 知識や経験を生かして、Webプロデューサーやアカウントプランナーへ転身する営業経験者が散見された。異職種への転身を歓迎する求人は人気がありすぐに充足してしまうため、応募のタイミングが非常に重要になる。「初動」を意識した転職活動が合否を分けるだろう。

キャリアプランを語れることが重要

 面接で「なぜ他社ではないのか」「3年後、5年後にどうなりたいか」を聞かれることが増えた。曖昧な回答は論破されることが多いため、面接前の準備が合否に直結するといっても過言ではない。自らのキャリアプランを今一度見直し、論理的に話せるようにしておくことが大切だ。


バックオフィス

 35歳以上の経験者層の求人が減少し、転職の難易度が上がっている。年齢だけで評価されないよう、マネジメント経験などを打ち出していく必要があるだろう。

カスタマーサポートの採用ニーズ横ばい

 サポート系職種の求人数は横ばいで安定している。業界別に見るとソーシャルゲーム系企業、インターネットサービス系企業が最も多く、アウトソーシング企業、コールセンター勤務、客先でのヘルプデスクなどが少数ながら見受けられる。

インターネット業界の求人が増加傾向

 経理、経営企画、IR担当、総務、採用担当などの求人が増加傾向にある。特に若手をターゲットとした求人が多く、全体の半数以上が20代に向けた求人だった。募集背景としては「業績好調に付き若干名の増員」が多い。


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