不況で冷え込んでいたIT業界の転職市場に、回復の兆しが見え始めている。だが、業種や職種によって採用数や条件に大きな差異が生まれている。転職市場の動向を追い、自身のキャリア戦略立案に生かしてほしい。
期末は、多くの企業が採用活動を活発化させる時期。複数の分野で「急募」の求人が増加した。
通常求人の内定率が10%前後であるのに対して、急募求人の内定率は20%と跳ね上がる。そのため、求職者は迅速に応募して最短スケジュールで面接予定を組むなど、スピーディな動きで対応していた。
選考を同時に行う会社説明会が、増えてきている。この形式は、優秀な人材を早く採用したい企業側と、選考過程を短縮するチャンスがある求職者側、双方にメリットがある。今後しばらくは、会社説明&選考会を実施する企業が増加しそうだ
ソーシャルアプリ開発はほとんど「ゲーム」だったが、「ECサイト」「教育」などの分野にコンテンツが拡大し始めている。これに伴って、エンジニア・クリエイターはもちろん、運営担当まで、幅広い職種の人材が求められている。モバイルコンテンツの開発・運営を手掛けていた人材が、スマホアプリのディレクター職へと転身するケースも少なくない。
求人数としてはマネージャ・管理職の求人が多いが、2月はスタッフクラスの「急募」求人が目立った。3月末の決算にあわせて、経理職や事務職を採用したい企業が増えたためだろう。急募求人の募集人数は1〜2名と少なく、競争率は高い。
ソーシャルゲーム関連の採用が相変わらず活発だ。大手企業が激しい採用競争を繰り広げる他、中小規模のコンテンツプロバイダも積極的な採用姿勢を見せた。「3月末までに採用」するため、1回の面接で内定を出す企業もあった。
開発職では、JavaとPHPでの開発経験がある20代〜30代後半までの人材が求められている。クリエイティブ職では、競争率・選考ハードルの高さのため、苦戦する求職者が多かった。特にモバイル・スマホ系のクリエイティブ職は、大手企業や人気企業からの募集が多いため、応募が殺到して競争が激化している。
開発エンジニア、デザイナー、ディレクターなどに続いて「マーケティング担当」「カスタマサポート」「インフラ担当」「運営担当」などの需要が高まっている。しかし、エンジニア・クリエイター以外の職種は、採用枠が1〜数名程度のため、早期に募集が終了してしまう。
システム・インテグレータ(SIer)、ネットワーク・インテグレータ(NIer)、共に採用活動は好調だ。特に、SI業界におけるエンジニアの求人は、1月と比べて2倍と、さらに増加傾向を見せている。
ポテンシャルを重視し、「PHP、Python、Perlを用いた開発経験があれば実務経験は問わない」というスタンスの求人も多い。これを受け、エンジニアとしての実務経験がない人材の転身も増加しているのが特徴と言えるだろう。
PHP、Python、Perlでの開発経験があるエンジニアの市場価値が高まっている。これらの言語を用いた開発経験があれば「経験年数・年齢不問」という求人が増加した。
Webアプリケーション求人の増加に伴って、RubyやObjective-Cにも注目が集まっている。Javaでの開発経験がある人材へのニーズは、依然として高い。好業績に伴う求人が増加しており、若手をポテンシャル採用する一方、「Javaでの開発経験3年以上のリーダー経験者」などへの募集もある。企業はこのような採用で、バランスを保っているのだろうと考えられる。
12月に比べて2倍となった1月の求人数、2月はさらに1月の2倍増となった。メインターゲットは、Linux環境での設計構築経験があるエンジニアである。業界は。医療・金融・流通・メーカー、通信企業など、多岐に渡っている。
スマホ関連の求人はまだまだ増加している。採用手法の多様化傾向に大きな変化はないが、2月は「急募」求人が目立ったことが特徴的だ。通常求人では約10%の面接内定率が、急募求人では20%台に跳ね上がるため、これをチャンスと捉えて積極的にエントリーする求職者が多い。
求人数は1月比120%と、ソーシャルゲーム業界を中心に、活発な採用活動が続いている。プロデューサー・ディレクターの求人が1月比1.4倍、クリエイティブ・デザイナー系の求人が0.8倍、エンジニア(開発・インフラ系)の求人が1.3倍だった。また、「急募」の求人は1月比1.3倍であった。
スマホ関連の業務拡大に伴い、採用枠を拡大する動きが続いている。一方、営業職の増加傾向にはかげりが見えてきた。これは、新卒の受け入れ準備に動く企業が多いためだと考えられる。
数カ月連続で増加していた営業職の求人が、2月は横ばいだった。営業職は求人数に比べて求職者が多いので競争率が高く、募集開始から終了までの期間が短い点が特徴的だ。
1月同様、欠員補充よりも業務拡大による増員が目立つ。2月は、上場を視野に入れて人員増加を図る企業が多く見られたことが特徴的だった。
特に経理職では、「上場企業での実務経験」を応募条件とする未上場の企業など、近い将来の上場を感じさせる求人が多かった。また、急激に人員が増加しているソーシャルゲーム開発企業では、人事採用部門の募集のみならず、労務関係を目的とした労務職、マネジメント層で採用計画や人事制度の構築ができる人材をターゲットとした求人が増加している。
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