C++、C#、.NET技術者にニーズ。NIerも採用増加かIT業界 転職市場最前線(31)

不況で冷え込んでいたIT業界の転職市場に、回復の兆しが見え始めている。だが、業種や職種によって採用数や条件に大きな差異が生まれている。転職市場の動向を追い、自身のキャリア戦略立案に生かしてほしい。

» 2011年11月22日 00時00分 公開
[ワークポート]

 10月を新年度あるいは下期スタートとする企業が多い。そのため、10月はIT業界全般で、採用活動が活発化した。

 選考フローを柔軟に変更できるベンチャー企業では、競合企業に打ち勝つために選考スピードを速めるなどの施策を打ち出し、1回の面接で合否を決定するケースもあった。10〜11月で各企業の採用活動は一段落するため、12月からは求人数がこれまでに比べて減少するだろう。

Web業界

 10月の就業決定企業全体のうち、約8割がWeb業界と、相変わらずWeb業界の採用意欲は活発だ。新年度や下期スタートに合わせて、さらに積極採用をする企業も多かった。

 「新規事業推進」や「事業部長候補」といった、新規事業関連の求人が増加していることからも、Web業界の好調ぶりがうかがえる。

エンジニア・クリエイター:デザイナーの就業決定が増加

 10月の採用決定は、エンジニアが全体の36%、クリエイターが38%と、2職種が相変わらず好調だ。これまで、クリエイティブ系職種ではプロデューサー・ディレクターが多かったが、10月はデザイナーの採用決定が増加したことは特筆すべきだろう。

営業、バックオフィス:20代から40代まで、幅広い求人が出そろう

 スマートフォン関連の求人増加に伴い、営業やバックオフィスの採用枠を拡大する企業が多かった。

 ポテンシャル層の20代前半からミドル層の30代中盤、シニア層の40代まで、幅広い層をターゲットとする求人が出そろった印象だ。9月に引き続き、語学力を生かせる求人も目に付いた。


モバイル業界

 スマートフォン関連の求人は、ますます増加している。

 ソーシャルアプリプロバイダの海外展開がさらに増え、スマートフォン用ゲームのローカライズ、デバッグなどの他、海外向けのプロモーションや海外メディア窓口(インタビューなどの対応)、海外取引先との契約窓口といった、「海外担当」などの求人も出始めている。

エンジニア:若手のポテンシャル採用が続く

 ソーシャルアプリ開発エンジニアは10月も増加傾向にあった。JavaやPHPの開発経験やBtoCアプリケーションの開発経験などが求められる一方、若手のポテンシャル採用も多い。

モバイルプランナー・ディレクター:採用の増加&採用基準の緩和が目立つ

 Web系業界での経験を生かせるため、幅広い人材をターゲットとした採用活動を企業は展開している。期の変わり目に合わせて、採用枠を増やすだけでなく、採用基準を緩和した企業も多い。


システム業界

 開発職は好調をキープしている。案件の増加に伴い、求人も増えたためだ。

 中でも組み込みエンジニアの募集はコンスタントに増加しており、自動車関連やデジタル複合機関連、医療系機器など、さまざまな業界から求人が上がっている。

自社プロダクト系:パッケージソフト開発の求人増が顕著

 スマートフォンアプリの受託開発事業を拡大しようとする企業の採用活動が積極化している。また、パッケージソフト開発の求人も増加した。

 受託制作を行っていた企業が自社サービスをスタートし、新たに人材を募集するケースも目立った。ゲーム、eコマース、医療といった情報系サイトの求人も、増加傾向にある。

SIer・NIer:NIerに求人増加の兆し

 システム・インテグレータ(SIer)では9月に続き、エンジニア職の求人が増加している。特に「C++」「C#」「.NET」での開発経験を求める求人が多く、オブジェクト指向言語での開発経験を有するエンジニアのニーズが高まっている。

 一方、ネットワーク・インテグレータ(NIer)では、直接請負の大手企業を中心として、少しずつ求人が増加している。今後、中小企業へと仕事が流れるに伴って、求人数も増加していくだろう。傾向としては「インフラの構築経験」を求める求人が全体の80%を占め、保守・運用経験しかない求職者には厳しい状況だ。


ゲーム業界

 ソーシャルゲーム・モバイル・ブラウザゲームの求人がさらに増加し、募集数はコンシューマゲーム関連の5倍以上であった。全体としては非常に活発な採用活動が続いている。

 SIerで法人向け業務系システム開発をしていたエンジニアがゲーム業界に転職した事例が出るなど、ゲーム業界を目指すエンジニアにとっては絶好のタイミングと言える。

Webアプリエンジニア:採用フローを短縮化する企業が増加

 「人数を問わず採用したい」という企業の意向から、多少は採用基準に満たない人材でも採用に至るケースが多かった。競合企業との人材獲得合戦を制するべく、面接回数を減らすなど、採用フローを変更させた企業も見られた(ベンチャー企業が中心)。

プランナー・デイレクター・プロデューサー:ソーシャル・モバイル・ブラウザゲームが大多数

 「ソーシャルゲーム・モバイル・ブラウザゲーム」の採用が全体の80%、残りの20%が「コンシューマゲーム」と、募集数は両者で大きな差が出た。

 ソーシャル・モバイル・ブラウザゲーム系は、Web系業界での経験を生かせるため、幅広い人材が採用ターゲットとなり得るためだろう。一方、コンシューマ系は採用枠が少ない上に厳選した採用を行っているため、今後も厳しい状況が続くと見られる。


営業・その他

 自社製品・サービスを有する企業やグローバルに事業を展開している(展開する予定のある)企業が牽引する形で、語学力を求める求人の増加傾向が続いている。TOEIC○○点以上というように、具体的な資格や点数を求める企業がほとんどである。語学力を生かしたい人には追い風となりそうだ。

営業関連職:9月に比べて募集数20%増加

 事業拡大や業績好調に伴う増員によって、募集数は9月に比べて20%増えた。景気の回復がうかがえる。下期に入って、業績に応じた採用の見直しを図る企業が、求人数や採用枠を増加させた。

 スマートフォン関連の求人増加が後押しする形で、Web広告企業の採用枠が拡大したことも一因だろう。

バックオフィス:管理部門での求人が増える

 これまで欠員補充を背景とした求人が多かった管理部門でも、増員目的での求人が増え始めた。9月に増加した法務職に加え、経営企画・事業企画職、人事・採用・労務、営業(一般)事務、経理職、管理部門など、全体的に募集は増加しつつある。


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