不況で冷え込んでいたIT業界の転職市場に、回復の兆しが見え始めている。だが、業種や職種によって採用数や条件に大きな差異が生まれている。転職市場の動向を追い、自身のキャリア戦略立案に生かしてほしい。
下期(10月以降)の採用計画に伴う求人の募集は通常9〜11月に開始されるが、これに先んじて動く転職希望者が目立った。また、ゲーム業界の求人数が前月比196%と急増しており、業界希望者にはチャンスといえよう。
下半期に向けた業務拡大のため、10〜100人規模の大量採用を計画する企業が増加した。中堅層のみならずポテンシャル層向けの求人も多く、セミナーや勉強会の実施といった教育環境の充実をうたう企業も目立つ。
AndroidやiPhoneでのスマホアプリ経験者ニーズが急増している。この影響で前月に引き続き、Java、Ruby、Perl、Python、PHPが言語トレンド上位にランクインした。
PL(プロジェクトリーダー)、PM(プロジェクトマネジャー)経験のあるマネジメント層の転職希望者が多く、直請け案件や大規模案件に関わりたい、自社で提供できる製品やサービスに企画段階から関わりたい、という希望が多く聞かれたのも特徴だった。
新規求人数は好調を維持し、ECサイト運営職やディレクター職が特に増加傾向にあった。その一方、「未経験可」「ポテンシャル採用」の枠が減少傾向にあり、若干ハードルが上がった印象は否めない。
平日の19時以降や土日など、転職希望者に合わせて柔軟な面接設定をする企業が増えた。これにより、企業側は優秀な人材を早期に獲得でき、在職中の転職希望者はスムーズに転職活動を進められる。
今まではデザインやディレクションがメインだったが、今後はSEOなどマーケティングの知識やスキルを身に付けたいと希望する転職希望者が増えている。実際に転職した人は実務経験は浅くても独学でしっかり知識を身に付けていることが多い。合否の分かれ道は書類や面接でのアピールにあるといえる。
デザイナー職は人材獲得に苦戦する企業が多く、新規求人が豊富だ。特にUIデザイナーとコーディング経験を必須とするWebデザイナー求人が目立つ。また、自社教育体制を整えて未経験でも応募可とする企業も増加している。
ポテンシャル層に分類されるWeb未経験デザイナー(グラフィックデザイナー)の転職活動が活発だった。企業側も経験や転職回数ではなく、これまでの作品を見て判断する傾向にあるため、実務経験が浅い人にも十分チャンスがある。
想定しているポジションに必要なスキルや経験が明確なため、他職種に比べて書類選考通過から内定までのスピードが速い。面接回数を減らして人材の早期獲得を目指す企業も多かった。
大量のトラフィックを扱う必要性が高まったことやビッグデータを扱う案件が増えていることから、サーバエンジニア求人数が前月・前々月比で125%増と、右肩上がりに増加している。データベースではOracleよりもMySQL、サーバOSではWindowsよりもLinuxやCentOSとオープン系の需要が増している。今後の転職にはより幅広い知識や経験が求められるだろう。
保守運用から設計構築へのキャリアアップ、自社内のインフラエンジニアや社内SEを目指す人などが多かった。各種ベンダー資格を取得してから転職を考える転職希望者も多い。求人案件数を見ると売り手市場だが、ややハードルは高め。ニーズの高いLinuxや設計・構築などの上流領域の知識を学んでおくべきだろう。
転職を希望するエンジニアの増加が顕著だ。特に「Webアプリ開発から今後の伸びが予想されるネイティブアプリ開発に移行したい」という希望が多く聞かれた。
大規模な事業拡大ではなく人員増強を目的とした求人が多く、個々の募集枠は数名ながらも、求人数全体は増加している。目立って増加したのはグラフィック関連職種で、特にネイティブアプリのデザインに携わる3DCGデザイナーの募集が多かった。
コンシューマーゲーム開発経験のある人材を求めるソーシャルゲーム企業が増加している。即戦力が求められるので、転職希望者は「どういう点で企業に貢献できるのか」を積極的にアピールしていく必要がある。
面接回数には大きな変化が見られないものの、1日で二次や最終面接まで進むなど、選考自体のスピードアップが続いている。複数名以上の募集、中には10人以上の大量募集案件も目立った。
景気回復により企業の広告出稿ニーズが高まり、営業職求人が前月から倍増した。インターネット・モバイル広告営業の求人を筆頭に、IT開発営業が続いている。また、大阪での営業職募集も増加傾向にあった。
インターネット広告やSEO・SEM関連は、第二新卒層や若手であれば、経験が浅くても面接に進めるケースが多かった。比較的採用ハードルは低い印象で、該当する転職希望者には積極的な活動をお勧めしたい。複数名募集も多く、10人以上の大量募集案件も見られるなど、入り口も広がっている。
企業はスピード感ある採用姿勢を維持しており、即日内定を出すケースも見られた。一方で応募者が多く競争率が高い状態も続いているため、20代のバックオフィス経験者は他職種へのキャリアチェンジも一考の余地ありだろう。
人事採用関連やマネジメント層の求人を中心として、総求人数は前月から10%増加した。特に人事採用関連職の求人が多く、秋の採用戦略達成に向けた人員強化を図る企業が多数あった。
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