エンジニアの職場に必要なのは「課長」か「リーダー」か経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」(16)(2/2 ページ)

» 2015年08月11日 05時00分 公開
[山崎元@IT]
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安上がりな報酬としての「課長」

 「課長」という肩書の良いところの一つは、どのぐらい偉いのかが外部に分かりやすいことだ。この点、「ビジネス ユニット」「グループ」「チーム」「リーダー」といった言葉が名刺に二、三行にわたって並ぶような今風の肩書は、呼称として使いにくいばかりか、その人がどのような権限を持った人なのかが外部に伝わりにくい。

 この点、「部長」「課長」といった肩書には、重みと分かりやすさの両方が備わっている。ある意味これらの肩書は、日本の組織文化の財産だ。

 日本の企業は、それほどのお金を払わなくても社員がやる気になる、低コストなモチベーション喚起の手段として、「課長」という役職を都合よく使ってきた。社員の側でも、「課長になるために」という目標を励みに働いてきた者が数多かったのである。

今だからこそ、あえて言う。エンジニアも「課長」を目指せ

 最近雑誌やWebメディアで、「社員の半分以上が課長ないし課長級の役職を目指しても就くことができないのだ」という趣旨の記事を時折目にする。あたかも「課長を諦めることが肝心だ」と言いたがっているかのようだ。

 筆者は、エンジニア読者がむしろ逆方向の気持ちを持つことを心配している。

 それは、ビジネスパーソンとして十分な実力を持ちながら、「自分はマネジメントに向いていない」、あるいは「マネジメントではなく技術的な仕事に専念したい」と決め込んで、「課長を強く目指すまい」と思う人が多くいるのではないかという心配だ。

 心配する理由は二つある。一つは、マネジメントも含めて、仕事の能力は、「手加減」をしていると、伸びないばかりか衰えていくからだ。あくせくしないと決めて8〜9割の力で働いていると、ほぼ確実に仕事の力は落ちる。

 もう一つは、マネジャーはやってみるまで適否が分からないことが多いし、やってみると案外できる場合が多いからだ。

 経営学の世界で有名な故ピーター・F・ドラッカー氏は、「先天的にマネジャーに向いている人など見たことがない」と言っていた。ビジネスの何たるかを理解するためにも、少人数の部下に責任を持つぐらいの経験はしてみる方が良い。

 後進を育てるのは、大変で、時には割に合わないこともある。しかし、大いに張り合いのある仕事だ。良いマネジャーにまではなれなくとも、良い先生くらいになれれば「課長」としては十分及第点だ。他人に迷惑は掛けていない。後は、会社が適性を見て、あなたに最適な役割を見つけてくれるだろう。

 あえて、言う。「エンジニアも課長を目指せ!」。

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筆者プロフィール

山崎 元

山崎 元

経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役、獨協大学経済学部特任教授。

2014年4月より、株式会社VSNのエンジニア採用Webサイトで『経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」』を連載中。


※この連載はWebサイト『経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」』を、筆者、およびサイト運営会社の許可の下、転載するものです。



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