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【転職市場】IT系全業界/全職種で求人数が増加IT業界 転職市場最前線(10)

平成の大不況の下、IT業界の転職市場は冷え込んでいる。だが、すべての企業が採用をやめたわけではなく、いつまでも採用が止まり続けるわけでもない。転職市場の動向を追い、来るべきときに備えよう。

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 前回、「今後3カ月間の動向に期待したい」と述べたが、2010年1月は多くの業種/職種で新たな求人が発生した。程度の大小はあるが、ほぼIT系の全業界、全職種において求人数の増加が見られた。

 特に、オンラインショッピングやオンラインゲーム企業からの採用が好調だ。また、リーマンショック以降、激減していた若手(第二新卒層)向けの求人や、年収1000万円を超えるハイクラスの求人が少しずつだが回復を始めている。こうした傾向は、市場全体が活気を取り戻しつつある証しといえるだろう。

 しかし、採用ニーズの低迷が長く続いたことにより転職希望者があふれ、現在の転職市場は飽和状態にあるといえる。そのため、新規求人が発生しても、1週間後にはすでに応募が殺到している、という事態が珍しくない。業界の動向を常にチェックし、企業からのニーズをいかに早くつかみ取れるかが明暗を分ける鍵となりそうだ。

 現在の転職市場はどのような傾向にあるのか、IT系を代表する各業界の最新動向を職種別に見ていこう。

【Web業界】Webエンジニアの求人が増加

 昨年後半から年末にかけて採用意欲に落ち着きが見られたインターネット/Web業界だが、年明け以降、新たな募集を開始する企業が増えた。急激な回復とはいかないまでも、さまざまな職種において新規求人が発生している。

 特に目立つのはWebエンジニアやWebコーダーであり、いずれも事業好調による増員を目的とする場合が多い。欠員補充とは異なり、事業拡大のための人員募集は1職種につき複数名の採用枠を設けていることがあるため、求職者にとってはうれしい傾向だ。

エンジニア

 Web系エンジニアの採用ニーズは衰えることなく、高い水準を維持している。特にPHP、Perlエンジニアは人気が高く、ここ1カ月で新規に発生したエンジニア系求人のおよそ9割で「必須」または「尚可」に指定されていた。また、これまでは即戦力層やリーダー層が求人のほとんどを占めていたが、「経験が1〜2年程度」の若年層の求人も緩やかな増加傾向にある。

ディレクター/プロデューサー

 Webディレクター、プロデューサーはEC関連企業(インターネットショッピングモール、インターネットオークション、ドロップシッピングなど)で採用ニーズが高まっている。Web専業の企業だけでなく、アパレルやインテリア販売事業を行う企業のWeb部門/EC部門からも新規求人が発生した。

 また、ディレクターやプロデューサー職種では「運用」「改善提案」の経験が評価される傾向が見られる。Webサイト運用やそれに伴う改善提案を職務経歴書に記載しない求職者が多いが、採用企業にとっては評価ポイントの1つとなっている。経験は漏らすことなく経歴書に反映させるよう心掛けてほしい。

【モバイル業界】引き続き好調、若手のニーズが高い

 中途採用市場において、モバイル業界は非常に活気づいている。モバイル業界の中途採用は、他業界と比較すると、転職回数をあまり重視せず、スキルや経験、人物面のフィット感を重視する傾向がある。また、ベンチャー色の強い企業が多く、企業規模にかかわらず、安定志向は歓迎されない。昨今の不景気により求職者の安定志向が進んでいるため、企業が求める人物像とミスマッチが生じやすい。

エンジニア

 SNSや自社メディアを保有する企業で、特に活発な採用活動が行われている。ただし、そのほとんどが20代の若手を求める求人であり、30代以降をターゲットとした求人はごく一部にとどまる。「設計書ありき」の開発スタイルを取らない企業が多く、「働き方」が採用時の大きなポイントの1つになっているのが特徴だ。この「働き方」の面で、受託開発系企業より、Webサービス事業者で働いていた経歴が好まれる傾向にある。

クリエイター(Webサイト制作/Webデザイン)

 クリエイター職種では、Web(PC)サイトと同様にFlashクリエイターのニーズが高い。採用ニーズの低迷が続くWebデザイナー職においても、「モバイルサイトデザイナー」の募集・採用は活気がある。こうしたモバイル系クリエイターの募集では、デザインや制作だけでなく、企画段階からの参加を期待されるケースが多い。少人数の開発組織で幅広い活躍を求める傾向にあるようだ。

プランナー/ディレクター

 プランナーやディレクター職ではエンタメ系の求人が多く、特に受託開発系事業者が30代前半の経験者を求める傾向にある。ただし、「1つ以上の強みがあること」が必要だ。求められる「強み」は企業やポジションによって異なる。例えば、「マネタイズ経験がある」「新規サービス/新サイトの立ち上げに強い」「マーケティング/集客に強い」「ゲーム環境に強い」といったものや、「同業界でのマネジメント経験に長けている」「エンジニア経験がある」「公式コンテンツに強い」「勝手サイトが得意」などさまざまだ。こうした強みを培い、しっかりとアピールすることが転職成功の秘訣(ひけつ)といえるだろう。

【システム業界】金融/医療系でニーズ、マーケティングやセールスの求人も

 好調なWeb系エンジニアと比べ、業務系エンジニアをはじめとするシステム業界では採用ニーズ回復の遅れが目立つ。しかし、金融/医療系システムを筆頭に、少しずつではあるが回復の兆しが見え始めている。特に、外資系企業が勢いを盛り返しており、エンジニア職だけでなくさまざまな職種で新たな求人が見られるようになった。

開発系エンジニア

 業務系エンジニアの採用ニーズは低迷が続いているものの、クラウドサービスにおける開発ポジションにおいて、新たなニーズが発生している。

 ハードウェアメーカーからの求人は微増しており、昨年に著しく減少した制御/組み込み系エンジニアの求人が上向いてきた。

 また、銀行・クレジットカード会社などの金融系や、生保関連求人が目立つ。医療系求人も緩やかな増加傾向にある。しかし、多くの場合は3〜5年以上の経験と業務知識が求められており、若手の求人はいまだに回復が見られない。求職者側にはメンバークラスの若手が多く、採用ニーズとのミスマッチが発生している。

 メンバークラスには厳しい状況が続いているが、リーダー以上の経験者にとっては、新たな環境を求める好機といえるだろう。

インフラエンジニア

 先月から引き続きデータセンター事業者からの求人が好調だ。著しい求人数の増加は見られないものの、一定の需要がある。一方、SIer(システムインテグレータ)/NIer(ネットワークインテグレータ)からのインフラエンジニアのニーズはいまだに低調だ。むしろ、自社でWeb/モバイルサービスを提供している事業会社からのニーズが目立つ。いずれにせよ、基盤設計から構築・運用までのスキルを十分に身に付けているエンジニア以外は、厳しい状況といえる。

非技術職

 海外ハードウェアメーカーの日本法人が、マーケティング、セールス、プリセールス、ポストセールスなどの採用を始めている。同じく外資系のソフトウェア企業からも、少しずつ新規求人が発生している。ただし、技術力や経験に加え、高い英語力が求められるため、ハードルは高い。また、新たに自社製品を開発するよりも、「すでにある製品をいかにカスタマイズしてエンドユーザーや代理店に提案するか」というソリューション提案を行う部門/部署での採用活動が活性化している。

【ゲーム業界】プラットフォームによって明暗分かれる

 ゲーム業界は全体として高い採用ニーズを維持しているものの、プラットフォームによって明暗が分かれる。オンライン/モバイルゲーム系は積極採用を行う企業がある一方、コンシューマー向け(パッケージ)ゲーム会社からの求人は冷え込みが続いている。

 また、選考水準が徐々に上昇しており、ディレクターやプランナーにおいては特にその傾向が顕著だ。すでに一定の充足感があり、新たな採用には慎重な姿勢を見せている企業が多い。

 現在ニーズが高まっているのはパチンコ/パチスロ関連職種であり、年明け以降、続々と新たな求人が発生している。パチンコ/パチスロは、コンシューマー向けゲームと比較すると求職者に敬遠される傾向にあるため、競争率の点ではチャレンジしやすいジャンルといえる。また、採用ターゲットを業界経験者のみに絞らず、コンシューマー機やアーケードゲーム開発からのキャリアチェンジなど柔軟に受け入れる傾向が強い。

プランナー/ディレクター/プロデューサー

 ディレクター/プロデューサー職では、求める要件の高さから年齢層や年収が高くなりがちであり、採用リスクを伴う。そのため、「ディレクション経験のあるプランナー」として募集する企業が増えている。ただし、メインプランナーとしての経験のほかに、ディレクター経験や企画力などが重視されるため、選考ハードルは高い。

プログラマ/エンジニア

 ゲームプログラマは引き続き高い採用ニーズを維持している。パチンコ/パチスロ関連でもプログラマのニーズは高く、とりわけ液晶画像系開発に伴う求人が増加している。アニメーション処理や抽選処理といった画像表示の開発者が求められている。

ゲームデザイナー

 ゲームデザイナー職の求人は、わずかながら増加した。CGスキルよりもデッサン(手描き)力のあるデザイナーを求める傾向にある。

 デザイナー職は非常に人気があり、競争率が高い。また、技術レベルだけでなく「センス、感性の相性」が求められるため、実力のあるデザイナーでも採用に至るケースは少ない。まずは応募書類、提出作品をしっかりと作り込むことが、転職成功の第一歩といえるだろう。

ソーシャルアプリ

 昨年後半からソーシャルゲーム/ソーシャルアプリが話題となり、一時的に求人が増加したが、期待していたほどの求人数の増加には至っていない。ビジネスとしての可能性を模索しつつも、「採用に投資できる段階ではない」という企業が多いようだ。そのため、アルバイトや業務委託などの一時的な雇用が増えている。

 また、ソーシャルアプリ関連はエンジニア系職種では求人があるものの、ディレクターやプロデューサーといったポジションでの採用はほとんど見られない。

【営業/バックオフィス系職種】営業関連職が大幅増加

 前月と比較して、営業関連職の求人が大幅に増加している。従業員数1000人を超える企業から新たな採用ニーズが発生したことや、営業系だけで複数の職種(ポジション)で募集を開始する企業が現れたことが、求人数の底上げにつながった。特に外資系のソフトウェア会社やセキュリティ関連企業からの求人が目立った。

 業種別に見ると、外資系企業のほか、EC事業会社からの採用意欲が高まっている。また、BtoC事業の好調を受けて、BtoBtoC事業の求人も増えている。

 MR(医薬情報担当者)や特定医療分野の経験を積んだ営業職、建築設計士、薬剤師など、専門性の高い職種は長期的な視野での採用活動が続いている。北海道、東北、関西、中部、九州など、首都圏以外でも新たな営業職求人が発生した。各地の主要都市に営業拠点を持つ企業や、地方に本社を置く業績好調な企業が、事業拡大に向けて採用活動を開始しているようだ。また、国内だけでなく、中国をはじめとする海外法人で常駐勤務できる人材を求める新規求人も見られるようになった。


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