「採用を急ぎたい」――幅広い企業でスマホ開発エンジニア需要:IT業界 転職市場最前線(29)
不況で冷え込んでいたIT業界の転職市場に、回復の兆しが見え始めている。だが、業種や職種によって採用数や条件に大きな差異が生まれている。転職市場の動向を追い、自身のキャリア戦略立案に生かしてほしい。
お盆があるため、8月は採用活動が鈍化しがちだ。しかし、今年に関していえば、IT業界の採用活動は活発に推移した。
Web業界では外国籍の人の採用増加、モバイル・スマートフォン関連では海外勤務案件の増加など、海外展開を見据えた動きが目立った。
このトレンドは今後もさらに加速していくだろう。国籍を問わず、英語をはじめとした語学力やコミュニケーション能力が求められる時代になっていくと思われる。
Web業界
8月の就業決定企業のうち、Web企業は約40%。相変わらず採用意欲は高く、選考のスピードも他業界に比べて速い。
特に目立ったのが「外国籍の人の採用増加」で、大手インターネットサービス企業を中心にいくつかの案件が出た。「サービスをグローバル展開するための組織作りに、いち早く着手したい」という企業側の意志が感じられる。
エンジニア・クリエイター/クリエイティブ系職種が増加
7月は「エンジニアの募集数>クリエイターの募集数」だったが、8月は逆転し、クリエイティブ系職種の募集が巻き返した。ただ、エンジニアの採用意欲が衰えたわけではなく、この2職種がWeb業界全体の採用をけん引している構図に変わりはない。
営業、バックオフィス/転職のチャンスは今?
上記のように、Web業界ではエンジニアやクリエイティブ系の募集が中心だが、他にも幅広い職種で募集が出てきている。バックオフィスや営業、社内SE職などから、サポートやマーケティング、プロモーションにWebサイト運営(SEO関連も含む)まで、実に多種多様である。募集人数も増加しているため、求職者にとっては今がチャンスかもしれない。
モバイル業界
7月は、中国語・英語を中心とした外国語スキルを求める案件が増加した。8月もまた、少数ながら海外勤務案件がいくつかあった。採用した人材をすぐ海外に送り出すというケースもあり、「語学力」「コミュニケーション力」「高いストレス耐性」を持つ人材を企業が求めていることがうかがえる。
エンジニア/スマホアプリ開発エンジニアがひっぱりだこ
「スマートフォンアプリ開発エンジニアの採用を急ぎたい」——こんな声が、メディアやコンテンツサービス企業、ゲームパブリッシャー企業、広告代理店、受託制作会社など各社から上がっている。
ネイティブアプリの開発(AndroidOS、iOS系)とスマートフォン向けサイト開発(閲覧・UI最適化系)、Web系アプリ開発では、求められるスキルが異なる。とはいえ、Web系の開発技術はアプリ開発に応用できるため、Web経験者は企業が求めるスキルを理解した上で、的確なアピールをするとよいだろう。
システム業界
ハードウェア・ソフトウェア業界では外資系医療機器メーカーやソフトウェアパッケージメーカーの求人が増加して、求人数は10%アップした。スマートフォン(モバイル)向けアプリケーション開発の多さから、Web系求人の好調が際立っている。
自社プロダクト系/募集職種の拡大が目立つ
プロジェクトマネージャやセールスエンジニア、営業にカスタマーサポート、新規事業開発におけるプロダクトマネージャーなど、職種の拡大が目立つ。どの職種も「ある程度の経験」が必須で、即戦力を求める業界トレンドをしっかり反映している。
SIer・NIer/組み込み系の求人はまだまだ増加
組み込み系の求人は7月以降、順調に増加している。Web系SIer、NIerの求人も、少しずつではあるが回復の兆しがある。
スマートフォン向けアプリケーション開発案件が多いため、Web関連の求人が目立つ。スキル面では、「JavaやPHPなどのWeb系言語での開発経験が2年以上」を条件とする求人が全体の約半分を占めた。一方、独学でiPhoneアプリやAndroidアプリを開発したエンジニアを採用したがる企業も、相変わらず多い。実務経験がない人にも、チャンスは広がっている。
ゲーム業界
ソーシャル業界、コンシューマ業界ともに活況が続いている。若手Web系エンジニアを求めるソーシャル業界では、企業同士が熾烈(しれつ)な獲得競争を繰り広げている。
プログラマ/業界間のターゲットは重複せずマイペースな採用
コンシューマ業界とソーシャル業界では開発環境が大きく異なるため、採用ターゲットが重複せず、それぞれ業界で活発な採用活動が続いている。ソーシャル業界では若手Web系エンジニアのニーズが高いが、コンシューマ業界は経験豊富な方を求める傾向にあり、特にPS3やXbox360の開発経験者が求められている。
プランナー・ディレクター/コンシューマ業界⇒ソーシャル業界への移動
コンシューマ業界からソーシャル業界への人材の移動が目立ったが、逆方向の移動は皆無であった。コンシューマ業界の求人件数が少ないこと、ソーシャル業界のコンテンツはライトなものが多いため、コンシューマ業界ではソーシャル業界でのスキルは即戦力として認めてもらえないことなどが、理由として考えられる。
デザイナー/3Dの領域では、大部分がコンシューマ業界の求人
ソーシャル業界の活況がもたらした雇用創出は、いまだに続いている。2Dの領域ではコンシューマ業界とソーシャル業界間で人材の移動があるものの、3Dの領域においてはほぼすべてがコンシューマ業界の求人だった。どちらも、選考時に提出する作品の完成度が結果を大きく左右する傾向にある。特に、キャラクターやアイテムの出来が売上を左右するソーシャル業界では、「高いクオリティ」「作業スピードの速さ」を求めている。
営業・その他
Web広告企業、および自社でサービスや商品を持っている企業を中心に、大阪・愛知・福岡勤務など、首都圏以外の求人案件が増えた。
また、Web広告企業では、PC・モバイルからスマートフォンへの移行に伴って、柔軟性やスピード感、情報収集能力などを重視する傾向が目立った。マーケティング要素も求められているため、広報やマーケティング職で広告に携わった人にはチャンスがありそうだ。
営業関連職/4月に比べて、求人数は2割増加
4月時点と比較すると、求人数は20%アップと、求人数が大幅に増えている。ストレートな営業職だけではなく、営業企画職などの求人が目に付いた。また、スマートフォンをプラットフォームとした求人も増加している。
バックオフィス/財務や知財、特許職が微増。今後は法務も来るか
自社製品・サービスを有する企業、またグローバル化を目指す企業において、法務や知財、特許職がわずかながら増加した。
この傾向は数カ月にわたって続いているので、今後も着目していく必要があるだろう。ソーシャルアプリをメイン事業とする企業の成長が著しいことから、今後は法務面の求人増加も予想される。
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