Web系からスマホアプリ開発者へ。実務未経験も可:IT業界 転職市場最前線(44)
不況で冷え込んでいたIT業界の転職市場に、回復の兆しが見え始めている。だが、業種や職種によって採用数や条件に大きな差異が生まれている。転職市場の動向を追い、自身のキャリア戦略立案に生かしてほしい。
11月のIT業界転職市場まとめ
年始以降の新卒採用強化を見据え、中途採用を年内に終わらせようとする企業もあるなど、年末年始を前に活発な採用活動が目立った。未経験者や第二新卒にチャンスがある求人も増加しており、多くの企業が積極的な採用を行っている。自身のキャリア・志向といま一度向き合い、転職先として幅広い企業を検討したいところだ。
インターネット/Web業界
ソーシャルゲーム業界の求人の伸び率が鈍化していることもあり、各企業が新たなビジネスチャンスを見つけて攻勢をかけている。ヤフーが11月8日にグリー、11月9日にディー・エヌ・エーとの業務提携を発表するなど、大手企業の動きが活発だ。新規事業開発の求人は大手からベンチャーまで幅広い企業で見られ、今後サービスが開始されればエンジニアやクリエイターなどの求人も増えていくだろう。
Webデザイナー/新規取り扱い求人が増加
「HTML・CSSのコーディングができる方」や「Illustrator・Photoshopが使える方」といった比較的ハードルの低い求人が増え、デザイナーにとっては転職しやすい時期となっている。業界内における新規求人数の伸び率も最も高く、好調がうかがえる。
モバイル業界
スマートフォン関連の求人は依然として好調で、11月も2割ほど増加した。一方フィーチャーフォン関連の求人は減少が続き、1年前と比較すると半分以下にまで落ち込んでいる。求人内容としてはやはりスマホアプリ開発エンジニアが多く、次いでプランナー、ディレクターという結果になった。
ソーシャルゲーム企業/大手企業の動きが活発化
ソーシャルゲームプロバイダの新規上場やM&A、業務提携など、多くのニュースがあった。ミクシィがディー・エヌ・エーとゲームの開発基盤を統合することなど、大手企業の新たな動きも目立つ。
スマホアプリ開発エンジニア/全体の6割を占める
スマホ関連求人数の6割をスマホアプリ開発エンジニアが占め、さらに増加が続いている。スマホアプリ開発の実務経験者は市場にそれほど多くないため、Webアプリ開発経験者や若手であれば、個人での開発経験やスクールで勉強した経験のみでも転職に成功するケースが多く見られた。
デザイナー/実務経験が浅くてもチャンスあり
HTML5やCSS3の経験を有する人はニーズが高く、実務経験が浅くても転職に成功する可能性がある。
システム業界
求人数は増加傾向が続いており、ターゲットも20代若手のポテンシャル層から30代後半〜40代くらいのリーダー、マネージャ層まで幅広い。「急募」の案件も目立ち、受注案件の急増によって年内に複数名を採用したい企業などは、面接1回で内定を出すなどスピード感のある採用活動を展開している。
システムインテグレータ(SIer):スマホアプリ開発エンジニアのニーズが急増
スマホアプリ開発エンジニアのニーズが急増しているほか、Java、PHPによるWeb系エンジニアが依然として高い人気を誇っている。また、金融系開発、制御・組み込み系開発に携わるエンジニアの求人も順調に伸びてきており、経験を有する人は選考を通過する確率が高い。
ネットワークインテグレータ(NIer):ポテンシャル人材の採用にも積極的
景気低迷期には「設計・構築・リーダー経験」がほぼ必須だったが、現在は「知識・素養のある若手を育てていきたい」という企業が増えており、実務経験が少ないポテンシャル人材の採用も積極的に行われている。即戦力層の求人では仮想化技術(VMware)やLinux経験者のニーズが高い。
ゲーム業界
全体的に活発な採用活動が行われており、ポテンシャル層の採用も積極的に行われている。異業界からゲーム業界への転職を考えているなら、今が絶好の機会だといえるだろう。
ディレクター・プランナー:経験者からポテンシャル層まで採用が活発化
ディレクター・プランナー職では、経験者の採用はもちろんポテンシャル層の採用も活発に行われている。企業によっては、ポテンシャル向け採用セミナーを開催したり通常の選考フローより面接回数を短縮したりするなどの施策を打ち出している。応募要件が比較的ライトであるため、提出するゲームのプレイレポートや企画書の内容が重要だ。
クリエイター:前月の好調を維持
これまで同様、デザイナー職のポテンシャル層の採用も行われているが、最近はアートディレクターなどの採用も活発化している。クリエイターはポートフォリオが鍵となっており、実務で携わった作品や個人的な制作物の中から、幅広いジャンルのものを用意した方が選考に通りやすい。
営業・その他
10月に続き、「若手ポテンシャル層、業界経験不問」の営業募集が多い。しかしながらマネージャ候補も含めた管理職枠の求人も微増傾向にあり、今後に期待ができそうだ。
営業関連職/増加傾向を維持
営業職の求人は増加傾向を維持している。システム提案営業とWeb広告関連の営業が多くを占めているが、その他幅広い業界で求人が活発化しており、しばらくはこの勢いが続きそうだ。依然として「若手ポテンシャル層、業界経験不問」の求人が多い。
バックオフィス/ターゲットは経験者
バックオフィス系の求人は経験者がメインターゲットとなっており、40〜50代のマネジメント経験者を求める「リーダー候補」「管理職候補」の求人が多く見られた。こうした中で最も求人数が増加したのは前月に続き経理職であり、次いで人事職が増加傾向にあった。引き続きソーシャルゲーム関連企業やその他インターネットサービス関連企業が採用を強化している印象だ。
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