マイクロソフトは5月4日(米国時間)、次期Windows Serverの2回目のプレビュー版となる「Windows Server Technical Preview 2」をリリースしました。今回からは、このTechnical Preview 2をベースに連載を進めます。
マイクロソフトは5月4日(日本時間5日)、米シカゴで開催された「Microsoft Ignite 2015」に合わせ、次期Windows Serverの2回目のパブリックプレビュー版「Windows Server Technical Preview 2」の提供を開始しました。
ダウンロード提供が開始されたのは、昨年2014年10月の「Technical Preview」(以下、Technical Preview 1)の次の段階のプレビューとなる、Windows Server、Microsoft Hyper-V Server、およびSystem Centerの「Technical Preview 2」です。
前回のTechnical Preview 1では提供されなかった「System Center Configuration Manager」と「Endpoint Protection」は、今回が初めてのプレビュー提供となります。いずれも、ISOイメージおよびVHDイメージ(Hyper-V仮想マシンやAzure仮想マシン用)の形式で提供され、残念ながら今回も英語版のみの提供となります。
また、同日よりMicrosoft Azureの仮想マシンギャラリー内の「Windows Server Technical Preview」のイメージが、Technical Preview 2のものに差し替えられています(画面1)。Azureサブスクリプション(無料評価版を含む)をお持ちであれば、Azure仮想マシン環境で評価する方がイメージのダウンロード時間を節約でき、評価環境を準備する必要もないので手軽でしょう。
また、Ignite 2015では次期製品の名称が「Windows Server 2016」「System Center 2016」になることも発表されたようです。正式リリースは2016年とのことですので、この2回目のプレビュー版の仕様や搭載された機能もまた、製品版では変更される可能性が十分に考えられます。その点をご承知の上、本連載をお読みください。
筆者はWindows Server Technical Preview 2を、仮想マシン環境とMicrosoft Azure環境にインストールして評価してみました。大きな変更点、細かい改善点など、いろいろ目に付くところもありましたが、詳しいところは本連載で順次取り上げていくことにします。今回はインストールで気が付いた大きな変更点を紹介しましょう。
Windows Server Technical Preview 2では、インストールオプションが大きく変更されました。
Windows Server 2008/2008 R2では「Server Coreインストール」と「フルインストール」、Windows Server 2012/2012 R2では「Server Coreインストール」と「GUI使用サーバー」という選択肢がありました。Windows Server Technical Preview 1でも、以下のようにインストールオプションに変更はありませんでした。
Windows Server 2012以降はServer Coreインストールが「既定」になり、こちらの使用が推奨されています。ですが、GUI(Graphical User Interface)があった方が操作しやすいため、多くの人がGUI使用サーバーでインストールしているのではないでしょうか。そういえば、Microsoft Azureの仮想マシンギャラリーに用意されているものも、GUI使用サーバーのイメージです。
Windows Server Technical Preview 2の選択肢は以下の二つで、上の方の“かっこなし”の「Windows Server Technical Preview 2」が既定および推奨の選択になります。
かっこなしの「Windows Server Technical Preview 2」は、従来のServer Coreインストールになります。そして、もう一方の「Windows Server Technical Preview 2(with local admin tools)」が、これまでのGUI使用サーバーとは違うオプションになります。従来のGUI使用サーバーは、新規インストール時には選択できなくなりました(画面2)。
以下の画面3は「Windows Server Technical Preview 2」を選択してインストールしたときのログオン画面です。ログオン後も、黒い背景にコマンドプロンプトがあるだけのCUI(Character User Interface)環境です。また、画面4は「Windows Server Technical Preview 2(with local admin tools)」を選択したときのログオン後のデスクトップ画面になります。
「Windows Server Technical Preview 2」オプションのServer Coreインストールは、ログオンまわりのGUIも削除され、さらにスリムアップした印象です。
「Windows Server Technical Preview 2(with local admin tools)」オプションは、Windows Server2012/2012 R2で「Minimal Server Interface」や「最小サーバーインストール」、あるいは「MinShell」と呼ばれていたサーバー環境と同等です。
すなわち、Server Coreインストールの環境に、「Server Manager」やMMC(Microsoft管理コンソール)管理ツールを実行するための最小限のGUI環境を追加した環境になります。GUI使用サーバーから「エクスプローラー」(Explorere.exe)シェルを削除した環境といってもよいでしょう。
「Windows Server Technical Preview 2(with local admin tools)」オプションの環境は、「シェル」(Explorer.exe)や「Internet Explorer」(iexplore.exe)は搭載されておらず、「コントロールパネル」(Control.exe)も一部のアプレット(intl.cplなど)が例外的に残されている以外は存在しません。もちろん、新しいWebブラウザーである「Microsoft Edge」(開発コード名:Project Spartan)も存在しません。
「Server Manager」と役割や機能のMMC管理ツールは利用できますが、「Server Manager」から呼び出されるコントロールパネル機能の多くは、Server Coreインストール向けの「Sconfig」ユーティリティに置き換わっています(画面5)。例えば、ネットワークの設定やWindows Updateによる更新は、Sconfigで実行することになります。
新しいインストールオプションは、コントロールパネルやエクスプローラーが利用できないので、細かい設定やファイル操作に苦労するかもしれません。いつもの完全なGUI環境が必要であれば、「Add Roles and Features Wizard」を使用して「Server Graphical Shell」を追加するか、Windows PowerShellで「Install-WindowsFeature Server-Gui-Shell」コマンドレットを実行します(画面6)。
これで、従来のGUI環境を取り戻すことができます。さらに「Desktop Experience」の機能を追加すれば、Windows 10相当の完全なデスクトップ環境を利用できるようになります。
なお、今回のGUIまわりの大幅な変更の影響からか、既知の不具合がリリースノートに記されています。具体的には、「ログオン画面が真っ黒になる」「Windows Updateの自動更新が機能しない」「GUIのアンインストールに失敗する」「Desktop Experienceを追加したら削除できない」などです。リリースノートをよく読んで、不具合に遭遇したときに慌てないようにしましょう。
皆さんは、もう「Nano Server」はご存じでしょうか。次期バージョンのWindows Serverに用意される、Server Coreインストールよりもさらにフットプリントの小さい、新しいインストールオプションです。
Hyper-Vやクラスターノード、ファイルサーバーの役割をホストする環境として、今後実装される予定の「Docker」エンジンのホストOSになって、「Windows Serverコンテナー」や「Hyper-Vコンテナー」を実行できるようになるとウワサされているものです。
まだ謎の多いNano Serverですが、今回のTechnical Preview 2で初めて提供されました。とはいっても、インストールオプションに「Nano Server」の選択肢はありませんでしたよね。実は、Nano Serverには対話式のインストーラーは存在しません。
Nano Serverのインストールイメージは、Windows Server Technical Preview 2のインストールメディアに「\NanoServer\NanoServer.wim」というWIM(Windows IMaging)形式で格納されています。このWIMイメージをWindowsの「DISM(Deployment Imaging Servicing and Management Tool)」コマンドを使用してオフラインでカスタマイズし、物理環境や仮想マシン環境に展開するという方法で導入します(画面7)。
現時点ではDockerエンジンやコンテナーの提供はありませんが、Nano Server上で「Hyper-Vの役割」(Microsoft-NanoServer-Compute-Package)、「ファイルサーバーの役割」(Microsoft-NanoServer-Storage-Package.cab)、およびこれらの役割の「クラスター対応」(Microsoft-NanoServer-FailoverCluster-Package.cab)を有効化できます。
インストール手順については、以下のドキュメントで説明されていますが、5月5日に公開されたドキュメントにはミスがあって、簡単にはインストールは成功しません。
幸運にも、筆者はHyper-V仮想マシン環境にNano Serverをインストールすることに成功しました。皆さん、Nano Serverのコンソールがどんなものか気になりませんか?
画面8は、Hyper-V仮想マシンにインストールしたNano Serverのローカルコンソールになります。ローカルコンソールとはいっても、実はNano Serverにはローカルコンソールというものが存在しません。Nano Serverはヘッドレスサーバー向けのOSであり、ローカルコンソール機能やローカルログオン機能は削除されているのです。そのため、このHyper-V仮想マシンのコンソール画面に向かって、マウスやキーボードを操作しても何の反応もありません。
では、Nano Serverをどうやって構成および管理するのかというと、「WinRS/WinRM」(Windowsリモートシェル/Windowsリモート管理)によるWMIへのリモートアクセスや、Windows PowerShellの「PSRemoting」機能を使います(画面9)。Visual Studioのリモートデバック機能にも対応しているそうです。また、ネットワークやドメイン参加設定、Windowsファイアウォール設定といった基本設定を行った後であれば、Server ManagerやMMC(Microsoft管理コンソール)スナップインを使用してリモート管理できます(全ての管理操作ができるわけではありません)。
この他、Windowsの「EMS(Emergency Management Services:緊急管理サービス)」にCOMポート経由で接続して、「SAC(Special Administration Console)」を使用してOS情報の取得や再起動/シャットダウン、コマンドチャネルを作成してのコマンドライン操作が可能です。
リモートから管理するためには、まずNano Serverに割り当てられたIPアドレスを知る必要があるのですが、この取得に苦労しました。Hyper-Vのホストはその情報を提供してくれません(Nano Server側にIPアドレスを公開するKVPデータ交換サービスが存在しないため)。筆者の場合は、DHCPサーバーのリース情報とMACアドレスを比較してIPアドレスを調べました。
筆者は、Nano Serverのインストールや基本的な管理方法をようやく理解できたところです。Nano ServerのHyper-Vをリモートから管理して、仮想マシンを動かすところまで成功しました。Hyper-V以外ではスケールアウトファイルサーバーのノードとして利用することもできるようですが、Hyper-Vを含め、まだまだ手探りの状態です。Nano Serverは、まだ登場したばかり。今後、より詳しい情報が出てきて明らかになったら、本連載で紹介していきます。お楽しみに。
今回、筆者が成功したNano Serverの導入手順と基本的なリモート管理操作の詳細を個人ブログで紹介しています。Nano Serverを試用する際には、参考にしてください。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2015)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手がける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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