つい先日、次期Windowsのプレビュー版「Windows 10 Technical Preview」のビルド「10061」が提供されたばかりですが、4月29日(米国時間)に、新ビルド「10074」が公開されました。もう追いかけるのが大変です。
次期Windowsのプレビュー版「Windows 10 Technical Preview」の新しいビルド「10074」は、マイクロソフトが米サンフランシスコで2015年4月29日(米国時間)に開催したイベント「Build 2015」に合わせて公開されました。次は米シカゴで開催される「Microsoft Ignite」が控えており、まもなく次期WindowsやWindows Serverに関する新しい情報が、あふれるように出てくると予想しています。
前回のビルド「10061」は、Windows Insider Programの「Fast Ring」参加者(新しいビルドのインストール方法として“速い(Fast)”を選択しているユーザー)に提供されたバグの多いビルドでした。筆者はまだビルド「10061」を2回しか起動していませんが、今回のビルド「10074」に合わせて既存の環境は全て削除してしまいました。
今回公開された「10074」は、FastおよびSlow Ringの両方に提供される比較的安定したビルドになります。なお、今回から名称が「Windows 10 Technical Preview」から「Windows 10 Insider Preview」に変更されています。
今回は、ISOイメージも提供されています。いつも更新に時間がかかってイライラするという場合は、ISOイメージから新規インストールするとよいでしょう。今回、筆者はコンシューマー向けの「Windows 10 Pro」ではなく、「Windows 10 Enterprise」の最新ビルドを日本語版ISOイメージから新規インストールしてみました。
「すべてのアプリ」のWindowsアプリケーションのショートカットが機能しないという、ビルド「10061」の残念な不具合は解消されていました。今回は物理PCで試してみていますが、ざっと操作してみた限り、安定度が増しているという印象を受けました。新しいビルド「10074」における変更点や改善点、新たな既知の問題については、以下の公式ブログで確認してください。
「Build 2015」では、新しいブラウザー「Project Spartan」の正式名称が「Microsoft Edge」になると発表されましたが、ビルド「10074」ではまだ「Project Spartan」のままです。「Project Spartan」を起動すると「Microsoft Edge」の紹介ページが開くので、一瞬新しい名前に変更されているように見えますが、そうではありません。ちなみに、日本語環境で電源ボタンのラベルが「仕事率」と表示される点は変わっていませんでした(画面1)。
以前のビルドまでは旧ビルドから更新を繰り返してきたため、新規インストールは久々でした。今回は「Windows 10 Enterprise Insider Preview」を新規インストールしたのですが、一つ気が付いたことがあります。それは、インストールの最終段階で「Microsoftアカウント」を使用したサインインを構成できないことです。
Windows 8以降ではエディションに関係なく、設定やユーザーデータを同期するために、Microsoftアカウントを使用してWindowsにサインインするのが標準的な方法です。Microsoftアカウントを使用しない場合は、ローカルアカウントを作成することができます。
Windows 10 Enterprise Insider Previewでは、Microsoftアカウントではなく、「Office 365」や「Microsoft Azure Active Directory」(Office 365もAzure Active Directoryを使用)の「組織ID」を使用してサインインするように構成できます(画面2)。
ProエディションであるWindows 10 Insider Previewの方は、ここでPCの所有者が問われます。個人所有を選択した場合はMicrosoftアカウントによるサインイン画面に進み、「会社所有」を選択した場合はEnterpriseエディションと同じ組織IDのサインイン画面に進みます(画面3)。おそらく、コンシューマー向けのWindows 10(無印)では、Microsoftアカウントだけを選択できるようになるのでしょう。
企業向けエディションではこの方法が標準になっていて、組織IDを使用しない場合はローカルアカウントを作成してセットアップするようになっています。組織IDでセットアップした場合は、Azure Active Directoryに登録された組織IDのユーザー名とパスワードを使用してWindowsにサインインできます。この方法を「クラウドドメイン参加(Cloud Domain Join)」と呼ぶこともあるようです。
なお、ローカルアカウントでセットアップした場合は、「設定」→「システム」→「バージョン情報」→「クラウドに接続する」で、組織IDによるサインインに切り替えられます(画面4)。Microsoftアカウントによるサインインには、「設定」→「アカウント」→「サインイン」→「オプション」→「Microsoftアカウントでサインイン」で切り替えることができるようです。これらの方法は、Windows 10 Insider PreviewとWindows 10 Enterprise Insider Previewで共通です。
実は、Office 365やAzure Active Directoryの組織IDがあれば、この新しいサインイン方法をセットアップできるわけではありません。Azure Active Directoryで「デバイスの登録(プレビュー)」機能が有効化されていないと使えません(画面5)。
Windows Server 2012 R2の「Active Directoryフェデレーションサービス」(AD FS)には、「デバイス登録サービス(Device Registration Service)」という機能が追加されており、Windows 8.1やWindows RT 8.1、iOS、Androidデバイスを「ワークプレース参加(Workplace Join、社内参加)」という方法でデバイス認証することができました(画面6)。Azure Active Directoryの「デバイスの登録(プレビュー)」機能は、“クラウド版のワークプレース参加機能”と考えればよいでしょう。
実は、「設定」→「システム」→「バージョン情報」→「クラウドに接続する」オプションは、Windows 10 Technical Previewのビルド「9926」から追加されていた機能です。そして、ビルド「10041」あたりから、セットアップ時のクラウドドメイン参加オプションが追加されていたようなのです。新規インストールではなく、旧ビルドから更新を繰り返していたのでこの変更にこれまで気付きませんでした。なお、Windows 10ではAD FSによるワークプレース参加とAzure Active Directoryによるクラウドドメイン参加は別のインターフェースになっていて、AD FSによるワークプレース参加は「設定」→「アカウント」「Work & School」→「社内ネットワーク」→「職場に接続」からセットアップできます。
ところで、WindowsにOffice 365の組織IDでサインインできるということは、その資格情報でOffice 365のアプリやサービスにシングルサインオン(SSO)でアクセスできると誰もが期待すると思います。残念ながら、筆者が確認した限りでは、認証を要求されてしまいました(画面7)。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2015)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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