Windows 10が「2015年7月29日」にリリースされることが正式発表されました。この発表に合わせ、無料アップグレード対象のPCでは「Windows 10を入手する」アプリによる無償アップグレードの案内と予約が始まりました。
皆さんのお使いのPCの「タスクトレイ」に、6月に入って早々、Windowsロゴのアイコンが突然出現したという方は多いと思います。一方で、「そんなアイコンないよ」という方もいるでしょう。
このタスクトレイのアイコンの正体は「Windows 10を入手する(Get Windows 10)」アプリで、「%Windows%\System32¥gwx」フォルダーにインストールされています(画面1)。このアプリは、2015年4月に「オプションの更新プログラム」として、5月に「重要な更新プログラム」として配布された、以下の更新プログラム「3035583」によってインストールされたものです。
「Windows 10を入手する」アプリが表示された方は、おめでとうございます。お使いのPCはWindows 10に対応していて、アップグレードが可能であるということを示しています。
アプリを開いて「無料アップグレードの予約」をクリックすれば、入手可能な状況になった段階ですぐに自動でダウンロードが開始され、可能な限り早く、あるいは都合のよい時刻を選択してアップグレードを開始できるそうです。無料アップグレードの対象OSとアップグレード先のエディションは以下の表の通りです。
アップグレード前 | アップグレード後 |
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Windows 7 Home Premium | Windows 10 Home |
Windows 7 Professional | Windows 10 Pro |
Windows 7 Ultimate | Windows 10 Pro |
Windows 8.1 | Windows 10 Home |
Windows 8.1 Pro | Windows 10 Pro |
Windows 8.1 Pro with Media Center | Windows 10 Pro |
Windows Phone 8.1 | Windows 10 Mobile |
※Windows 7 Starter、Windows 7 Home Basic、Windows 8.1 Pro Studentは日本国内で提供されていないため、この表には含めていません。 |
「予約」とは自動でダウンロードを開始し、いち早くアップグレードしたい人向けのサービスで、予約しないからといってアップグレードできないというわけではありません。7月29日から1年間は無料でアップグレードが可能ですのでご安心を。
予約はキャンセルすることもできますが、ダウンロード後にアップグレードをキャンセルできるかどうかは現時点では不明です。7月29日のその日まで待って、どのようなアップグレードプロセスになるのかを確かめてからでも遅くはないでしょう。また、このアプリを使用しない、無料アップグレード方法(インストールメディアの提供など)も用意されると思います。
タスクトレイにアイコンが表示されないという場合は、いくつか理由が考えられます。更新プログラム「3035583」を意図的にインストールしていない、更新プログラム「3035583」の前提条件を満たしていない、そもそも無料アップグレードの対象ではない、などです。
更新プログラム「3035583」はWindows 7 Service Pack(SP)1、およびWindows 8.1 Update(2919355)のPCに自動配付されました。Enterpriseエディションは無料アップグレードの対象ではないので配布されていません。Enterpriseエディションは、1年間の無料アップグレードとは関係なく、「ソフトウエアアシュアランス(SA)」を通じて無料アップグレードが提供されます。
更新プログラム「3035583」は確かにインストールされているし、「%Windows%\System32¥gwx」フォルダーにアプリ(Gwx.exeなど)もあるのに、タスクトレイにアプリが表示されないという場合、残念ながらお使いのPCではWindows 10を実行できないかもしれません。
Windows 10を実行できないと判断されたPCには、2015年7月29日まで「Windows 10を入手する」アプリをタスクトレイに表示しないようになっているそうです。2015年7月29日になって初めて「Windows 10を入手する」アプリのアイコンが表示され、互換性問題をチェックする方法が提供されるとのことです。
「Windows 10を入手する」アプリは、単に無料アップグレードの案内を通知して、予約を受け付けるだけのアプリではありません。アプリウィンドウの左上の三本線のアイコンをクリックすると、メニューが表示されます(画面2)。無料アップグレードの予約をキャンセルしたい場合は、「確認の表示」メニューから実行できます(画面3)。
また、「PCのチェック」を選択すると、Windows 10の互換性リポートを確認することができます(画面4)。現時点で「Windows 10を入手する」アプリが表示されているPCなら、「Windows 10はこのPCで動作します」と表示されるはずですが、デバイスやアプリの互換性について問題が発生する可能性が検出されているかもしれません。予約する/しないに関係なく、一度、確認することを強くお勧めします。
本連載でたびたび登場している古いUMPC(ウルトラモバイルPC)ですが、ディスプレーの互換性が指摘されていました。
筆者のUMPCの解像度は1024×600ピクセルなので、Windows 8.1のモダンアプリの最小解像度要件である1024×768ピクセルを満たしていません。本連載で何度も触れましたが、Windows 10ではより小さい解像度でもアプリを実行できることをお伝えしました。今回、リリース日の発表に合わせ、Windows 10のシステム要件も発表されました。それによると、最小解像度は1024×600ピクセルに緩和されていました。
Windows 10のハードウエア要件 | |
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プロセッサー | 1GHz以上のプロセッサーまたはSoC(※) |
メモリ | 1GB(32ビット版)/2GB(64ビット版) |
ハードディスクの空き容量 | 16GB(32ビット版)/20GB(64ビット版) |
グラフィックス | DirectX 9以上(WDDM 1.0ドライバー)、解像度1024×600以上 |
※SoC(System-on-a-chip)は、IoTデバイスに無料提供される「Windows 10 IoT Core」エディションのプロセッサー要件 |
解像度の問題でWindows 8やWindows 8.1へのアップグレードをあきらめていたWindows 7のUMPCやネットブックの多くが、Windows 10で生き返るかもしれませんね。ただし、「Windows 10 Insider Preview」を試用している限りでは、解像度1024×600では小さすぎて操作に困る場面に何度か遭遇しました(画面5)。解像度1024×600をサポートするのであれば、正式リリースまでにこのようなUI(ユーザーインターフェース)の問題は全て解決してほしいところです。
中小企業では、個人が利用するようなプレインストールPCを会社用として導入しているところも多いでしょう。そのような会社でPCのパッチ管理を「Windows Update」の自動更新に任せているという場合は、「Windows 10を入手する」アプリが問題になるかもしれません。
業務アプリケーションやその他の制約でWindows 10にアップグレードできない、したくないという場合でも、社員が「Windows 10を入手する」アプリでアップグレードを予約してしまうかもしれません。
Windows 10へアップグレードする予定がないのであれば、予約のキャンセルを確認した上で、更新プログラム「3035583」をアンインストールしてください(画面6)。その後、Windows Updateで再び検出された更新プログラム「3035583」を非表示にすることで、今後、「Windows 10を入手する」アプリが動作することを回避できます。
最後に、Windows 10の音声認識アシスタント「Cortana(コルタナ)」に期待していて、待ち望んでいるのなら、急いでアップグレードする必要はありません。当面、Cortanaを利用できるのは、米国、英国、中国、フランス、イタリア、ドイツ、スペインだそうです。日本語への対応予定や対応時期については、現時点で情報はありません。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2015)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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