入社3年目で転職なんて許さん!転職活動、本当にあったこんなこと(4)(2/2 ページ)

» 2006年12月08日 00時00分 公開
[辻貴由アデコ]
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たった3年で転職なんて

 寺田さん(仮名)は26歳のソフトウェアエンジニアで、実家でご両親と同居していました。

 大学卒業後、大手電機メーカー系ソフトウェア開発会社に入社し、3年間組み込みソフトウェア開発に携わってきました。若手リーダーとして会社から期待される優秀なITエンジニアでしたが、周りの友人たちが転職していく姿を見て、自分も転職してみようかなと考えるようになりました。

 もちろんそれだけが理由ではありません。顧客との折衝、仕様の策定は親会社が担当し、設計フェイズからしか担当できない状況にあって、今後のキャリアに漠然と不安を感じていました。そこでメーカーへの転職を目指し、転職活動を始めたのでした。

 寺田さんは、組み込みソフトウェア分野を中心にメーカー数社へ応募。転職活動は問題なく進み、無事中堅の計測機器メーカーから内定を獲得しました。特定分野では高いシェアを持ち、財務状況も健全な優良企業です。いままでの経験が存分に生かせ、さらなるスキルアップが望める環境であり、給与面、福利厚生面も充実、申し分ない条件でした。希望がかなった寺田さんは大喜びで、私もとてもうれしかったものです。

 しかし2日後、寺田さんから「内定を辞退します」との連絡があったのです。私は一瞬耳を疑いました。あれほど喜んでいたので、てっきり内定を承諾するものと思っていたのです。

 「どうして?」という疑問を抱きつつ詳しい話を聞いてみると、なんと「両親からの猛反対にあっている」とのことでした。反対の理由は「入社3年目で転職するということは認められない。そもそも、どうして一度も相談しないのか」ということでした。

 さらに話を聞いてみると、ご両親から反対されることはある程度予想がついていたため、内定を獲得するまでは話を伏せておこうと思っていたとのことでした。

 私は寺田さんがご両親にうまく説明できるよう、できる限り資料を集めて渡しました。

 その後、寺田さんは再度話し合いをしたようです。しかし最終的には内定を辞退し、当面は現職で経験を積むことになりました。

転職には家族の理解が重要

 事例として挙げた長谷川さんと寺田さんに共通していたことは、「事前に家族に相談しなかったこと」「自分の転職意思が揺らいだこと」です。

 転職において、家族の理解を得るということは大変重要です。決して後回しにはせず、まずは相談をすべきです。誰しも家庭環境の変化は避けたいと考えますので、身内の転職は家族にとっても大きな問題となるわけです。

 家族の理解を得られないのは、自分の転職に対する気持ちが明確になっていないためという可能性はないでしょうか。「何となく転職しよう」とか「いまの職場が嫌だから転職しよう」などという気持ちが少しでもあれば、日ごろ一番近くで一緒に生活している家族に見破られ、決して理解は得られないことでしょう。

 家族の理解を得るためにも、転職に対する気持ちを整理しておかなければならないのです。

  • なぜ転職するのか
  • 転職のタイミングはどうか
  • 将来どうしていきたいか、またどうすべきか
  • 転職条件のプライオリティはどうか
  • 会社規模、年収、勤務地、休日数など家族の理解は得られるか

 しっかりと自己分析をしたうえで家族と話し合い、あなたの転職への思いを理解してもらわなければなりません。自己分析ができれば、真剣な気持ちを家族はきっと理解してくれることでしょう。そうでなければ、たとえ内定を獲得したとしても、転職活動が成功したとはいえないのではないでしょうか。

 繰り返しになりますが、「身内なので後から説明すればよい」というのではなく、まず初めにしっかりと家族と話し合い、転職への理解を得るようにすることが大切です。

 キャリアコンサルタントとしては、家庭の問題まで深く踏み込むことはできません。もちろんできる限りのお手伝いはします。事前に理解を得られるようにアドバイスもします。

 しかし、結局は本人が家族と話し合い、転職への理解を得られるように努力するしかないということを覚えておいてください。

 ここがうまくいけば、きっとハッピーな転職をつかむことができると信じています。

著者紹介

アデコ

辻貴由

大阪府出身。大学卒業後、メーカー系ソフトウェア会社へ入社。約7年間SEとして官公庁・電力・交通システムの開発を数多く経験。同社を退職後、アデコへ転職。現在IT業界専門のコンサルタントとして、ITエンジニアの転職支援に従事。求職者のビジョンとスキルをうまく調和させたキャリアプランの提案を心掛けている。



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