前回は、MultiPoint Servicesの主要な機能を一通り紹介しました。今回は、まだ説明していない大きな機能「仮想デスクトップ(Virtual Desktops)」を紹介します。
Windows Server Technical Previewの「MultiPoint Services」には、「仮想デスクトップ(Virtual Desktops)」というオプション機能が用意されています。この機能は、Windows MultiPoint Server 2012ではPremiumエディションの機能として提供されているものです。
MultiPoint Servicesは、Windows Serverの「リモートデスクトップサービス(RDS)」の役割に依存しており、物理サーバーに直結される複数の「ステーション」(ディスプレー、USBキーボード、USBマウス、USBハブのセット)に対してサインインするユーザーは、「リモートデスクトップ(RD)セッションホスト」が提供するデスクトップセッションに接続されます。
物理サーバーに直結される複数のステーションは、それぞれがリモートデスクトップ接続クライアントとして振る舞います(図1)。
MultiPoint Servicesの仮想デスクトップは、RDセッションホストのセッションをHyper-VおよびRD仮想化ホストの役割が提供するVDI(Virtual Desktop Infrastructure:仮想デスクトップインフラストラクチャ)のWindows仮想マシンを置き換えるものです。
Windows MultiPoint Server 2012は、Windows 7 EnterpriseまたはWindows 8 Enterprise(Windows 8.1 Enterpriseも可)の仮想マシンがステーションのデスクトップ環境を提供します。Windows Server Technical Previewは、Windows 10 Technical Preview for Enterprise(ビルド9841)の仮想マシンがステーションのデスクトップ環境を提供します(図2)。筆者が確認した限り、Windows Server Technical PreviewのMultiPoint ServicesでWindows 8.1 Enterprise以前のWindowsには対応していないようです。
なお、仮想デスクトップは直結のステーションに対してのみデスクトップ環境を提供します(画面1)。LAN上にあるPCから仮想デスクトップへのリモートデスクトップ接続は想定されていません。
MultiPoint Servicesの仮想デスクトップ機能は簡単に有効化することができ、仮想デスクトップ用のHyper-V仮想マシンのプロビジョニングも大部分が自動化されています。いかに簡単に行えるか、その手順を紹介しましょう。
MultiPoint Servicesの仮想デスクトップはオプション機能です。仮想デスクトップ機能を有効化するには、MultiPoint Servicesの管理者として「MultiPoint Manager」を開き、「Virtual Desktops(仮想デスクトップ)」ページにある「VDI Tasks(VDIタスク)」の「Enable virtual desktops(仮想デスクトップを有効にする)」をクリックします(画面2)。これにより、Hyper-Vの役割のインストール、Hyper-V仮想スイッチの作成、RD仮想化ホストの役割のインストールが開始され、新しい役割を有効化するためにサーバーが再起動します。
Windows Server 2012以降のRDSのVDI機能には、「Sysprep」ツールを実行して一般化した仮想マシンイメージをテンプレートとして、必要な数の仮想マシンを自動的にプロビジョニングする機能があります。MultiPoint Servicesも自動プロビジョニング機能を提供しますが、通常のVDI環境の構築よりも簡素化されており、汎用化されたVHD以外にも、Windowsのインストール用DVDメディアやISOイメージ内のインストールイメージである「Install.wim」からテンプレートを自動作成することができます。
テンプレート作成を開始するには、「Virtual Desktops(仮想デスクトップ)」ページにある「VDI Tasks(VDIタスク)」の「Create virtual desktop template(仮想デスクトップテンプレートの作成)」をクリックして、Windows 10 Technical Preview for Enterpriseのイメージを指定し、仮想デスクトップ名のプレフィックス、管理者アカウントのユーザー名とパスワードを入力します(画面3)。
なお、Windows Server Technical Previewの「MultiPoint Manager」のユーザーインターフェース(UI)は、Windows MultiPoint Server 2012と同じであり、Windows 7 EnterpriseやWindows 8 EnterpriseのVHDファイルやISOイメージ、DVDメディアを指定するように記述されていますが、ここで指定できるのはWindows 10 Technical Preview for Enterpriseのイメージでなければなりません。Windows 8.1 Enterprise以前のイメージやEnterprise以外のエディションのイメージを指定すると、エラーとなりテンプレートを作成できません(画面4)。
仮想デスクトップのテンプレートとして「<仮想デスクトップのプレフィックス>-t」という名前のHyper-V仮想マシンが自動作成されます。ここで、Windowsのシステム設定やアプリケーションのインストールするために、「VDI Tasks(VDIタスク)」の「Customize virtual desktop template(仮想desktopテンプレートのカスタマイズ)」をクリックします。
すると、Hyper-Vの仮想マシンとしてテンプレートの仮想マシンが起動し、仮想マシンのコンソールに接続されます。この時点でアプリケーションのインストールなどを行い、カスタマイズが完了したらデスクトップにある「COMPLETECUSTOMIZATION」というリンクをダブルクリックして実行します(画面5)。このリンクをクリックすることで、Sysprepが実行され、イメージが再び一般化されます。
最後に、「VDI Tasks(VDIタスク)」の「Create virtual desktop stations(仮想デスクトップステーションの作成)」をクリックします。すると、現在、物理サーバーに直結されているステーションと同じ数の仮想マシンが自動的にプロビジョニングされ、「<仮想マシンのプレフィックス>-<ステーション番号>」という仮想マシン名で起動します(画面6)。
仮想マシンのプロビジョニングが完了すると、ユーザーは自分のステーションから仮想マシンのWindows 10 Technical Preview for Enterpriseのデスクトップにサインインできるようになります。管理者や講師は「MultiPoint Dashboard」を使用して、RDセッションホストベースの場合と同じように、仮想デスクトップの画面を表示し、リモート制御やその他の操作を実行することができます(画面7)。
なお、Active Directoryドメイン環境を構成していない場合は、仮想デスクトップへのサインイン用に、仮想デスクトップごとに一般ユーザー権限のローカルユーザーを作成しておく必要があります。このタスクは「MultiPoint Manager」の「Users(ユーザー)」ページから実行できます。
RDセッションホストの場合と同様に、直結ステーションからサインインするユーザーは、自分のUSBハブにUSBデバイスを接続することで、仮想デスクトップにリダイレクトすることができます。また、物理サーバーがRemoteFX対応のグラフィックスカードを備えていれば、RemoteFX仮想GPU(RemoteFX 3Dビデオアダプター)の機能をユーザーに提供することも可能です。
本連載ではこれまで2014年10月リリースのWindows Server Technical Preview(ビルド9841)に基づいて、次期Windows Serverの新機能を見てきました。まだ新機能のほんの一部しか紹介できていませんが、2015年5月には新しいプレビュービルドが一般公開される予定です。次回からは、新しいプレビュービルドを使って次期Windows Serverの新機能を紹介していきたいと思います。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2015)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手がける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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