大本さん(仮名)は、岩田さんと同じ会社に勤める、同い年のITエンジニアです。大学卒業後に担当した職種はシステム営業。その後、いまの会社にITエンジニアとして転職して5年目です。現在はメーカーに常駐し、社内SEのような業務を担当しています。営業出身だけあってコミュニケーション能力は非常に高く、洞察力にも優れ、クライアントの抱える問題を日々改善していました。持ち前の謙虚な姿勢から、常駐先からの信頼は厚くなるばかりです。
しかし現在の業務では、どうしても新規開発案件が少なくなり、トラブル対応・運用保守といった内容が大部分を占めます。大本さんは今後のキャリア形成を意識し、新しい技術を身に付けたいと考えるようになりました。「それには、どうしたらよいのか……」。そこで2回目の転職を決意したのです。
大本さんは、「あえて難しい企業にチャレンジしたい」と、高めの設定で相談に来られました。LinuxサーバとJavaScriptの開発環境で経験を積んできた大本さん。しかし、1つの常駐先しか経験しておらず、偏ったスキルしか付いていないのではという不安を持っていたようです。ただ今後の方向性ははっきりしており、流通系のシステム開発をしている企業で働きたいと考えていました。ただ純粋に、新しい技術に触れたい……。それが大本さんの転職理由でした。
私はいくつかの企業を紹介し、そのうち8社を候補に挙げ、書類選考を依頼しました。8社のうち3社から書類選考通過の連絡があり、大本さんは綿密に企業研究をして面接に挑みました。
面接後1週間で、2社から2次面接の連絡が。そしてその後も選考は順調に進み、大本さんは両社から内定を得ることができたのです。
2社は次のように、大本さんを認めてくれました。「キャリアアップしたいという熱意がひしひしと伝わってきた。転職に対しての心構えがきちんとしている。スキル面ではもっと勉強してもらわないといけないところもあるが、自分をきちんと分析できていて、いま何ができて何が足りないかということもしっかり伝えてくれた。弊社としても、こういう人材はぜひ採用したい」
うれしい結果に、大本さんは大喜びです。2社のうち、より自分にあった企業を選び、転職していきました。新しい環境で、ますますキャリアを積んでいくことでしょう。
岩田さんと大本さん、同じ企業に勤める同い年のITエンジニアの面接の結果から、このようなことがいえるのではないかと思います。
自分のスキルに絶対的な自信があり、キャリアアップしたいといいながら、具体的なキャリアアップのイメージができなかった岩田さん。逆に自信はないものの、自己分析しキャリアアップをしっかりイメージしてアピールできた大本さん。
プロジェクトでの成果を過大評価し、それだけをアピールしても意味がないのです。逆にこれといったスキルがない・経験がないと思いながらも、しっかりと自己分析ができていれば、心証は良くなります。
企業が知りたいのは結果だけではなく、そのためにその人がどのように考えて、どう行動し、今後はどうしていきたいかということなのです。
転職を成功させるポイントは、2つあります。
スキルに自信があってキャリアアップ転職をしたいと思っていても、具体的に何をどうしたいのかを考えていなければ、キャリアアップはできません。
もし判断がつかず、困ったなと思ったときには、信頼できる人やわれわれコンサルタントに相談するなどして、自分が周囲からどう見えているかを知ることも大切です。
アデコ 人材紹介サービス部 コンサルタント
藤本健
兵庫県出身。大学卒業後、物流・流通業界に約8年間在籍。ソリューション営業や、数多くの流通システムの導入などを手掛ける。アデコ入社後、ITエンジニアを中心にキャリアコンサルティングに従事。前職の経験とキャリアコンサルタントの両方の視点から、個人のニーズに適したコンサルティングを心掛けている。
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