よく考えたら、いまの会社でいいみたい転職活動、本当にあったこんなこと(10)(2/2 ページ)

» 2007年07月11日 00時00分 公開
[藤本健アデコ]
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早く上流工程を担当したいんだ

 山田さん(仮名)は25歳のプログラマ。私立大学を卒業後、ソフトハウスB社に入社して3年目です。将来は上流工程を担当することを目指して、日々頑張っていました。

 しかし、会社の業務は大手システムインテグレータの2次請けや孫請けの案件が中心。山田さんが担当している仕事も、パッケージソフトのカスタマイズがメインでした。すでに出来上がっている製品であるため、決められた仕様に従ってプログラムするだけです。

 山田さんは、いつまでこの業務をやらなくてはいけないのだろうという不満を持ち始めていました。いまの会社でも、ある程度経験を積めば上流にかかわれる場がないわけではありませんでした。しかし、山田さんには上流工程に早くかかわりたいという思いがあり、このままでは時間がかかりすぎるかもしれないという、漠然とした理由から不安を感じていました。

 「ほかの会社だったら、もっと早く上流工程にかかわれるのではないだろうか……」。そう考えた山田さんは転職活動に踏み出し、私は山田さんの相談を受けることになりました。

「そのポジションは、まずは経験を積んでから」

 山田さんは条件よりも業務内容にこだわり、上流工程にできるだけ早くかかわれる仕事を探していました。しかし、業務経験はたったの2年です。現在の転職市場では第二新卒のニーズは高いのですが、さすがに経験のない人に「上流工程からどうぞ!」という会社はそうそうありません。B社で際立った経験をしているわけではない山田さんであればなおさらです。

 そういった状況ではあるものの、応募可能な求人があればチャレンジしていくという方針を決め、何件かの求人を紹介しました。その中の数社に応募したところ、1社から書類選考合格の連絡があり、山田さんはさっそく面接に赴きました。

 しかしながら、面接は予想どおりの内容でした。

 「上流工程の担当者として入社するのであれば、やはり基本設計・要件定義・業務分析といった工程を経験し、できれば30人前後の規模のプロジェクトを経験していることが必須です。わが社に入社していただくとしても、かなり経験を積んでからそちらのポジションに移ることになる。それでよければ入社していただきたい」。そう告げられました。

 山田さんは非常に悩みました。すぐに動かなくてはならないほど追い込まれているわけでもなかったからです。私としても、選択肢が1つしかない状況で転職をするのは得策ではないと感じました。そこで「まずは目標とする企業・求人を再度設定し、そこに向けてキャリアを積み重ね、選択肢を広げたうえで再度チャレンジすることも1つの方法ではないでしょうか」とお話ししました。

 冷静に2つを検討した山田さんは、もう一度いまの会社で頑張り、スキルを積んでいくことを選択しました。

踏みとどまる勇気も必要

 事例として挙げた大川さんと山田さんに共通していたことは、「転職することばかりに気を取られて、自分を振り返らなかったこと」です。不満ばかりが先行してしまって、周りが見えていなかったのです。しかし内定を得たところでふと立ち止まって熟考し、現在の会社に残るという選択をすることができました。

 転職先の研究はもちろん大切ですが、不満の原因は何なのか、いまの会社でできることはないのかを、もう一度真剣に考えてみることも必要ではないでしょうか。ネガティブな考えを抱いてしまうと悪い部分ばかりが目に付くものですが、まだ気付いていない良いところもあるはずです。

 仮に活動がうまくいき、運良く転職先が見つかったとしても、また同様な不満を抱いて、同じことを繰り返すことにもなりかねません。

 転職において不平不満が先行してしまっていると感じたときは、この事例の2人のように一度冷静になって考え、時には踏みとどまる勇気も必要です。

 転職は、人生を左右する重要な出来事です。ウィンドウショッピングのつもりが衝動買いをして失敗するくらいならいいかもしれませんが、転職は買い物と同じようにはいきません。後悔しないためにも1人で不満を抱え込まず、家族、上司、同僚、友人など、腹を割って話ができる相手に相談することが重要です。

 その中で、われわれのような人材紹介会社の役割も重要だと考えています。転職活動の中で最適な選択は何かを含めてお話できればと思います。

著者紹介

アデコ 人材紹介サービス部 コンサルタント

藤本健

兵庫県出身。大学卒業後、物流・流通業界に約8年間在籍。ソリューション営業や、数多くの流通システムの導入などを手掛ける。アデコ入社後、ITエンジニアを中心にキャリアコンサルティングに従事。前職の経験とキャリアコンサルタントの両方の視点から、個人のニーズに適したコンサルティングを心掛けている。



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