リモートデスクトップサービス(RDS)の強化点――RemoteFX vGPUvNextに備えよ! 次期Windows Serverのココに注目(9)(2/2 ページ)

» 2015年03月04日 18時00分 公開
[山市良,テクニカルライター]
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最大1GBの専用ビデオメモリ、合計2GBのビデオメモリが割り当て可能に

 前出の画面5(現行バージョンのRemoteFX仮想GPU)と画面7(Technical PreviewのRemoteFX仮想GPU)は、いずれもモニターの最大数「1」、モニターの最大解像度「1280x1024」の構成でRemoteFX 3Dビデオアダプターを割り当てたものです。同じ構成で、現行バージョンのRemoteFX仮想GPUで利用可能なビデオメモリは合計383MB、Technical PreviewのRemoteFX仮想GPUで利用可能なビデオメモリは895MBとなっています。

 現行バージョンのRemoteFX仮想GPUでは、RemoteFX 3Dビデオアダプターで構成したモニターの最大数や最大解像度に応じて、128MBまたは256MBの専用ビデオメモリが提供され、仮想マシンに割り当てられたメモリ(システムメモリ)の容量に応じて64MBから1GBの間のメモリ領域が共有ビデオメモリとして使用されます。

 つまり、仮想マシンで利用可能なビデオメモリの合計は最小192MB(専用128MB、共有64MB)から最大1280MB(専用256MB+共有1024MB)までとなります。Windows Server 2012以前のRemoteFX仮想GPUの場合はサイズが固定であり、それに比べると、仮想マシンのメモリ割り当てを調整することで、より多くのビデオメモリを利用できます。

 新しいRemoteFX仮想GPUでは、専用ビデオメモリを最小64MBから最大1GBの範囲で調整できるようになります。既定は128MBの専用ビデオメモリが割り当てられますが、仮想マシンをオフラインにした状態で「Get-VMRemoteFx3dVideoAdapter」コマンドレットを使用して割り当てサイズを変更できます。これにより利用可能なビデオメモリは、仮想マシンのシステムメモリを使用する共有ビデオメモリとの合計で、最小128MB(専用64MB、共有64MB)から最大2GB(専用1GB、共有1GB)までに拡張されます(画面10)。

画面10 画面10 新しいRemoteFX仮想GPUは専用ビデオメモリの割り当てサイズを変更できるようになり、専用と共有の合計で最大2GBのビデオメモリが利用可能になる

さらに、RemoteFX仮想GPUでWindows Server vNextゲストと4K解像度をサポート(予定)

 次期バージョンのWindows ServerのRDS機能について公開されているブログやビデオを見ると、他の新機能についても言及されています。Windows Serverゲストのサポートと、モニターの最大解像度の4K(例:3840×2160)のサポートです。表1に、RemoteFX仮想GPUのバージョン別の機能を、筆者が分かる範囲でまとめてみました。

表1 表1 RemoteFX仮想GPUの機能

 RemoteFX仮想GPUに対応したデバイスドライバーは、Hyper-Vの「統合サービス」が提供するものではなく、RemoteFX仮想GPUがサポートするゲストOSにビルトインされているものです。これまでは、Windows 7 SP1以降のEnterpriseエディションだけがRemoteFX仮想GPUに対応したビデオドライバーをビルトインしていました。

 これに、次期バージョンのWindows Serverが追加される予定です。ただし、RemoteFX仮想GPUがサポートされるのはシングルユーザーで使用するWindows Server環境であり、マルチユーザーのRDセッションホストはサポートされないということです。

 ちなみに、現在のWindows Server Technical Previewの仮想マシンにRemoteFX仮想GPUを追加してみましたが、デバイスドライバーが存在しないため、デバイスを認識することができませんでした(画面11)。

画面11 画面11 現在のTechnical Previewでは利用できないが、次期バージョンのWindows ServerではRemoteFX仮想GPUが利用可能になる予定。ただし、RDセッションホストでの利用はサポートされないとのこと

 RemoteFX仮想GPUはこれまで、第2世代仮想マシンをサポートしておらず、RemoteFX 3Dビデオアダプターを第2世代仮想マシンに追加する機能はありませんでした。Windows Server Technical Previewでは、第2世代仮想マシンに対してもRemoteFX 3Dビデオアダプターを追加できるようになっています(画面12)。ただし、これは確定した新機能ではなく、実験的な実装のようです。現時点では、第2世代仮想マシンでのRemoteFX仮想GPUは、正式にサポートされないそうです。

画面12 画面12 Technical Previewでは第2世代仮想マシンにもRemoteFX仮想GPUを追加できる。ただし、これは実験的な機能であり、正式にサポートされているわけではない

RemoteFX仮想GPUをどう使う?

 RemoteFX仮想GPUはVDI環境にリッチなグラフィックス機能を提供しますが、わざわざRemoteFX仮想GPUを利用しないからといって、メディア再生などのグラフィックス機能が大きく劣るということはありません。RemoteFXのその他のエクスペリエンス機能(RemoteFXメディアリモーティング、RemoteFXアダプティブグラフィックス、RemoteFX for WANなど)が快適な表示を手助けしてくれるはずです。

 RemoteFX仮想GPUは、3D CADなど、GPUに依存するアプリケーションをVDI環境で利用可能にします。DirectXに加えて、OpenGLおよびOpenCL APIがサポートされること、より多くのビデオメモリが利用可能になること、そしてWindows Serverゲストがサポートされることで、適用業務は大きく広がるでしょう。

 RemoteFX仮想GPUというと、ゲームや動画再生など個人的な趣味で使えないかと考える人がいそうです。しかし、RemoteFX仮想GPUは“企業向けの機能”として提供されるものです(ゲームの開発環境としては適しているかもしれません)。ライセンスの面でも、個人で利用できる機能では決してありません。その辺の話は、以下の記事を参考にしてください。

「vNextに備えよ! 次期Windows Serverのココに注目」バックナンバー

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2015)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手がける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。


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