XML関連仕様の動向を毎月お届け!
W3C/XML Watch - 6月版

TravelXMLのWebサービス実証実験デモが成功

加山恵美
2004/6/22

 ついに梅雨入りしましたが、梅雨入り前は夏のような暑さが続きました。そういえば去年も梅雨前はとても暑かったような気がします。私は暑さにはあまり強くないので、梅雨が明けたらどのくらい暑くなるだろうかと気になり始めている今日このごろです。

5月の勧告、勧告案、勧告候補

 それではW3Cの動きから見ていきましょう。5月は勧告と勧告案がなし、勧告候補が1本のみでした。勧告候補となったのはCSS3の1本のみです。この仕様は名が示すとおり、HTMLやXML文書にて基本的なユーザーインターフェイスのスタイルを定めるための部品となります。既存のCSS1とCSS 2.1に対して新しいプロパティと値を盛り込んでいます。フィードバック期間は最低でも半年を設定しており、ゆっくり進むことになりそうです。

5月のドラフトとノート

 先月発表されたドラフトはラストコールなしのみで6本、ノートは1本でした。国際化ワーキンググループからの発表が目立ちます。

 まずXHTMLとHTMLの国際化向けオーサリング技術に関して、コンテンツの言語指定、文字とエンコード、双方向テキストの取り扱いで合計3本の発表になりました。前の技術文書から、これらの3つに枝分かれしています。次のQAハンドブックは新規となっていますが、前に発表されたQAフレームワーク:操作ガイドラインQAフレームワーク:概要の2本との差し替えとなっています。

 SVG 1.2は前回の更新が3月ですから短期間で再び更新されたことになります。まだ開発中で安定性向上を目指した改善を加えている段階です。

 最後はWebサービス国際化利用シナリオです。これは国際化されたWebサービスの利用パターンとシナリオを示していて、W3Cメンバーと関係団体にレビューしてもらうことを目的にまとめられました。またこの文書の目的には、Webサービス設計者に対してそれぞれのサービスに国際的な機能を実装するためのテンプレートを提供することも想定されています。

 ノートはマルチモーダル関連で1本ありました。この文書はDOMのマルチモーダル機能の必要条件と、現時点でサポートされるマルチモーダル機能を解説しています。

WWW2004がNYで開催、次は幕張で

 5月17日から22日まで、WWW2004が米国・ニューヨークにて開催されました。これはWWW(World Wide Web)の最新技術動向についてのセッションやワークショップが設けられるカンファレンスです。中でもW3CトラックではW3Cの業績報告、技術紹介、将来の展望が9セッションにもわたり詳細に解説されました。

図 現在と将来のWebアーキテクチャw3.orgサイトより転載)

基調講演を行う
ディム・バーナーズリー氏

(Photo by Petteri Jarvinen)

 W3Cのティム・バーナーズリー氏も基調講演の演壇に立ち、最近話題の新しいsTLDとW3Cが進めているセマンティックWebについて語りました。新しいsTLDとは、現在ICANN準備中のスポンサー付きトップレベルドメインのことで、例えば.asia/.mobi/.telなど9つあります。特に.mobiの背景には、携帯端末のIPアドレスが頻繁に変わるのでDNS処理要件がほかとは違うという特有の事情があり、専用TLDを求める声があります。

 一方、.mobiは携帯端末向けWebを従来のWebから分断しかねないとバーナーズリー氏は懸念を示しました。つまり携帯端末用のコンテンツをwww.〜〜.mobiとして使うのであれば、ほかのコンテンツとURLを分けることになるという意味です。また情報機器の携帯性についての技術を考えると今後ますます発展を遂げることは確実で、携帯端末用Webという範囲も定かではありません。

 そこで同氏はWebを端末ごとに分割させないためにも、デバイスに依存せずにコンテンツを表示するための技術や、コンテンツとスタイルを分ける発想を展開しました。ただし同氏は真っ向からsTLD創出を否定するつもりはないようです。同氏はTLDについては公平を期した運用管理や確かな技術が重要であることを強調していました。

 次のセマンティックWebブラウザの話題になると同氏はより熱く語り始めました。講演では現在、OWLとRDFがW3C勧告になり新しいフェイズに向かっていることをアピールし、セマンティックWebにて音声やサービスやほかのあらゆる事象が接続されるという将来像の概要を示しました(詳細はW3Cトラックにて)。

 WWW2004の最後には来年のWWW2005が日本の幕張で開催されることが発表されました。いまから楽しみですね。

TravelXML、Webサービス実証実験

 これまで何度か伝えてきたXMLコンソーシアムTravelXMLですが、5月はWebサービス実証実験デモが公開されました。

 デモでは顧客が旅行会社のWebサイトから旅行パックを購入するシナリオが想定されていました。会場には顧客のWeb画面、旅行会社のデータ管理画面、ホテルのデータ管理画面が並び、リアルタイムで処理されたことが確認できるようになっていました。Webからの申し込みが終了した時点で、旅行会社側には1件の売り上げが、ホテル側では1室分の予約が記録されます。

 あくまでデモ上の機能ですが、ホテルにはまだ空き室があるのにその旅行会社が持つ在庫が売り切れていた場合、在庫増室要求を自動的に処理する機能も実装されていました。もちろん、実際には人が介在して承認するプロセスが要りますが、技術的には外部に問い合わせて在庫を増減させられることを証明しました。デモでは4月に確定したばかりの最新版WS-Securityで暗号化も実装したにもかかわらず、Webサービス技術を用いたことで、非常に短期間で開発が終了したことをアピールしていました。

TravelXML標準部会で発表するNTTデータ
遠城秀和氏

 現在TravelXMLは勧告になりましたが、今後のフェイズでは決済データや商品内容データなど標準仕様の幅を広げていくとTravelXML標準部会のNTTデータ 遠城秀和氏が明らかにしました。また副会長の日本IBM 田原春美氏はこうした技術の標準化と普及について「1社が引っ張ればできることではありません。みんなで手を伸ばして、つなぎあうことが大切です」と全体で協力することの重要性を説いていました。

 技術は着々と整ってきています。現場への実装はまさにこれからの課題ですが、こうした標準化は実際の実装や展開の効率化に寄与していくことでしょう。

OASIS Open Standards Days開催

OASISの国際標準化活動で演壇に立つOASIS President & CEO
パトリック・ギャノン氏

 5月版で紹介したように、6月15日から2日間にわたり東京で「OASIS Open Standards Days Tokyo 2004」が開催されました。

 また、5月5日にはOASIS標準化コンソーシアムでCAP 1.0(Common Alerting Protocol)がOASIS標準として批准されました。CAPは緊急管理技術委員会が準備してきたもので、緊急警報や公衆向け警戒情報などのやりとりをデータネットワークを介しコンピュータで管理できるようにするものです。通信特有の専門用語の使用を抑え、CAPは既存の公共警報システムと完全な互換性を持つようになっています。

地理情報のXML標準が相互運用性実験

 日本では旅行業界のTravelXMLが実験を行いましたが、海外では地理情報のXML標準が相互運用実験を行っています。

 Open GISコンソーシアムの5月11日の発表によると、LandXML 1.0文書(LandGML)をエンコーディングするためのGML 3.0アプリケーションスキーマの初めての相互運用実験を行い、LandXML 1.0文書をLandGML文書へ変換するツールを提供するとあります。次のフェイズでは逆方向の変換、つまりLandGML文書をLandXML 1.0文書へ変換するツールが開発される予定だそうです。

 GMLといえば4月版で触れたとおり、地理情報の伝達と格納用のXMLエンコーディングを定義し、幾何学情報とプロパティ情報を含むものです。LandXMLとは259社(2004年6月現在)のメンバーにより運営されている非営利団体、The Open GIS Consortiumが主導しているXMLデータ交換標準です。

 そのほかにも、司法関係のJustice XML、再利用可能なソフトウェア資産をパッケージ化するRAS(Reusable Software Assets)など、あらゆる業界や方面でXML標準策定が活発に動いています。

 6月以降、本連載は隔月(偶数月掲載)となりますが、引き続きXML関連情報を報告していきますのでどうぞよろしくお願いいたします。ではまた再来月、お会いしましょう。


バックナンバー

2001年
 ・ 7月版 「XMLBase、XML Linkが勧告に」
 ・ 8月版 「リファレンスブラウザAmaya 5.1が登場したけれど」
 ・ 9月版 「MITが停電! そしてマルチメディア言語SMIL」
 ・ 10月版 「XMLの改定仕様はブルーベリー」
 ・ 11月版 「W3C Dayが待ち遠しい」
 ・ 12月版 「慶應大学で次世代Webに触れる」
2002年
 ・ 1月版 「XML 1.1、XSLT 2.0のドラフトついに登場!」
 ・ 2月版 「Webサービスアクティビティが発足」
 ・ 3月版 「XMLが4歳の誕生日を迎えました」
 ・ 4月版 「XMLを作った人たちが殿堂入りの栄誉!」
 ・ 5月版 「P3Pが勧告、そして怒とうの文書公開」
 ・ 6月版 「XML文書の正規化新仕様と、W3Cインタロップツアー」
 ・ 7月版 「SOAP 1.2のドラフトが発表」
 ・ 8月版 「4つのXPointerのドラフト、WSDL 1.2も登場」
 ・ 9月版 「ロゼッタネットとUCCが合併、XMLマスターに上級資格」
 ・ 10月版 「具体的な技術論へ移るセマンティックWeb」
 ・ 11月版 「XML 1.1が勧告候補、特許問題はついに決着か」
 ・ 12月版 「DOM2関連がもうすぐ完結、Webアーキテクチャも登場」
2003年
 ・ 1月版 「この1年でW3C勧告になったのは7つの仕様」
 ・ 2月版 「Webサービスの『振り付けグループ』が発足」
 ・ 3月版 「旅行業界がXML化へ、MSからは『InfoPath』が登場」
 ・ 4月版 「混迷の続くXPointerはついに落着?」
 ・ 5月版 「Webサービスの実験成功。WS-Iからは互換性ツール」
 ・ 6月版 「あいまいな部分を排除したSOAP 1.2、PNGはISO標準へ」
 ・ 7月版 「MITのW3Cオフィスはもうすぐ引っ越し、国連がebXMLを承認」
 ・ 8月版 「Webサービスが日本のAmazonからも利用可能に」
 ・ 9月版 「IEの特許侵害判決でW3Cが緊急会合」
 ・ 10月版 「IEの特許侵害判決がWebに与える影響は?」
 ・ 11月版 「IE特許問題で、W3Cが米国特許庁へ再審査を請求」
 ・ 12月版 「OfficeのXMLスキーマ公開、XML 1.1は勧告間近」
2004年
 ・ 1月版 「セマンティックWebに向けた動きが活発に」
 ・ 2月版 「日本人による標準技術発信が進むOASIS」
 ・ 3月版 「ついにXML 1.1が勧告へ、影響を受けるのは?」
 ・ 4月版 「XML Schema、3年ぶりの改訂が迫る」
 ・ 5月版 「Webサービス・セキュリティ v1.0、待望のOASIS標準に」
 ・ 6月版 「TravelXMLのWebサービス実証実験デモが成功」
 ・ 8月版 「SOAPメッセージ最適化をめぐる仕様が活発化」
 ・ 10月版 「W3Cの設立10周年を祝う記念祝賀イベント開催」
 ・ 12月版 「年の瀬に、WebとW3Cの功績に思いを馳せる」
2005年
 ・ 2月版 「XMLマスター資格試験が6月にリニューアル」
 ・ 4月版 「WS-Security 2004の日本語訳をXMLコンソーシアムが公開」
 ・ 6月版 「“愛・地球博”でビュンビュンWebサービス」
 ・ 8月版 「XMLキー管理仕様(XKMS 2.0)が勧告に昇格」
 ・ 10月版 「QAフレームワーク:仕様ガイドラインが勧告に昇格」


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