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W3C/XML Watch - 9月版

ロゼッタネットとUCCが合併、XMLマスターには上級資格が登場

加山恵美
2002/9/13

お盆の最中も更新続々

 皆さん、夏休みは取りましたか。8月はIT業界も夏休みモードで、イベントやニュースが少な目でした。しかしW3Cは、日本なら「お盆」にあたる8月中旬でも次々と技術文書を公開していました。

ロゼッタネットがUCCと合併

UCCに合併されたロゼッタネット

 まずはXML関連業界の動きから。8月に入って間もなく、ロゼッタネットUCC(Uniform Code Council)と合併すると報じられました。

 ロゼッタネットは1998年に米国で発足しました(同年にはロゼッタネットジャパンも発足)。ロゼッタネットはパソコン業界や電子部品業界を中心として構成され、企業間の電子商取引のための標準化を進めており、その技術基盤にはXMLが用いられています。ですからロゼッタネットはXMLを使ったBtoBの先駆け的な存在です(関連記事「BtoBの最先端:RosettaNetとは?」)。

 一方、UCCとは統一コード委員会であり、商品統一コードの管理や生産者識別コードも発行していて、EDIでは重要な組織です。

 今回の合併により、ロゼッタネットはUCCの傘下に入ることになります。とはいっても、事業部門としての独立性は保たれるとされています。この統合により、アーキテクチャ環境を統一してBtoB標準策定を加速させ、また各種業界での採用を促進させていくことを目的としています。

会計処理にもXML

 会計処理にも積極的にXMLが進出しています。XMLをベースとしたビジネス報告書言語として「XBRL(Extensible Business Reporting Language)」があります。このXBRLの運用試験が米ナスダック証券取引市場で始まることになりました。

 試験はPwC(PricewaterhouseCoopers)が開発したアプリケーションに、マイクロソフトのOfficeアプリケーションを通じてデータにアクセスするようになっています。

 XBRLにより、企業の財務データ処理や投資家のデータ入手にも効率化がもたらされると期待されています。アメリカではここ数カ月、大企業の会計疑惑や破産といったスキャンダルが続いていたこともあり、こういった動きにも拍車がかかるかもしれません。

XML技術者試験の上級試験

 日本のXML技術者試験である「XMLマスター」に上位の認定試験「XMLマスター:プロフェッショナル」が11月から開始されることになりました。このXMLマスターは昨年発表され、昨年の10月より「XMLマスター:ベーシック」試験が開始されています。試験の知名度は急上昇し、8月末にはベーシックの資格取得者が2000名を越えるほどの人気資格になりました。

 ベーシックの試験範囲は、XML標準技術の用語や概念となっていますが、新しいプロフェッショナルでは、XMLを使ったシステムの構築、DOMやSAXのプログラミングにWebサービス概要というように、より現実的なシステム構築に必要な高度な知識が求められています。

 新しい上位資格に先駆けて、新しいトレーニングコースが今年の10月から開始されることになっています。

8月の勧告、勧告案、勧告候補

 W3Cの動きについて見ていきましょう。8月は勧告が1つ、勧告案も1つ、勧告候補は3つ発表になりました。

 まずは勧告から。先月号でも予告しましたが、8月1日付けでXHTML 1.0 Second Editionが発表になりました。XHTML 1.0 はHTML 4.0をXMLで再定義したもので、2000年6月に勧告になりました。約2年を経て、今回の第2版が発表されたことになります。しかし、XHTMLといえば、2001年5月に勧告になったXHTML1.1や、今月初めてドラフトが公開されたXHTML 2.0もあります。XHTMLは広範囲に渡り、更新が重ねられています。

 勧告案として発表になったのは、XML-Signature XPath Filter 2.0 です。こちらは先月勧告候補として発表になったもので、順当に予定通り1カ月後には勧告案へと進んできました。

 次に勧告候補ですが、8月2日に2つ、7日に1つ発表になりました。最初に発表された勧告候補はXML Encription(暗号)関連で、XML Encryption Syntax and ProcessingとDecryption Transform for XML Signatureです。共に勧告候補として発表になったのは今年の3月ですが、内容を編集して再度勧告候補として発表になりました。

 もう1つの勧告候補はドラフトから昇格したCSS TV Profile 1.0です。これはインタラクティブなテレビで使う場合の制約を想定して策定している仕様です。CSSレベル2 とCSSレベル3:カラーのサブセットになっています。勧告候補として昇格したものの、勧告候補期間は最低でも半年と長めです。先月公開された勧告候補にもマルチメディア関連の仕様があり、同様に勧告候補期間が半年と長めでした。この分野の仕様確定には時間がかかるようです。

8月のドラフト:CSS、XHTML、XQuery

 冒頭でも述べたように、8月中旬に集中してドラフトの発表がありました。

 発表された時期順に見ていきましょう。8月最初に発表になったのCSS(Cascading Style Sheet)関連です。ほとんどがCSS3ですが、1つだけCSSレベル2の改編版であり、CSS2.1とも呼ばれています。もともとCSS2が勧告になったのは1998年で、その後の実装結果やエラーなどを踏まえ、改訂版を出すことになりました。すでに仕様は確定しているのでラストコール付きになっています。

 CSS1とCSS2では1つのまとまった仕様になっていますが、CSS3からはモジュールごとに仕様がまとめられています。今回発表になったCSS3仕様を見てみると分かるように、基本ユーザーインターフェース、背景、Webフォント、フォント、と細かく分けられています。これらCSS3仕様には、基本ユーザーインターフェースを除き、全てラストコールが付いています。ラストコールが設定されたものは全て8月中でラストコールが終了する予定となっています。

 次に8月5日から15日までに発表になったものをまとめて見ていきましょう。初登場のものもいくつか含まれています。

 この中にXHTML関連が3つあるので、これらから見ていきましょう。8月5日にはXHTMLの新しいバージョンとなる2.0が発表になりました。また、8月9日にはXHTMLとMathMLとSVGプロフィールという技術混合型の仕様(An XHTML + MathML + SVG Profile)が発表になりました。さらに、8月15日にはXMLスキーマにおけるXHTMLのモジュール化(Modularization of XHTML in XML Schema)も発表になりました。今月はXHTMLに関して、新しいバージョンへの進化と同時に既存のものをほかと連携させていて、全体的に強化が進んでいます。

 そのほかにも、8月6日にはHTMLのフレームに置き換わるXFramesが登場しました。また9日には音声ブラウザの要件(Voice Browser Interoperation: Requirements)が同じく初登場となりました

XML Eventsの仕様では、以前からの変更点を表示するページが用意された

 12日に発表になったXML Eventsは約10カ月ぶりの更新です。この文書には前回からの変更点をハイライトさせて表示するページも用意されています。改訂を重ねる仕様ではこうした表示があると内容を参照するのに便利なので、今後はこういったページが普及することを望みます。

 14日にはSOAP 1.2の添付機能についての仕様が初登場となりました。SOAP1.2はPart0から2までの3本立てで、補足として仕様や使用例について別途数本出ており、今回の分は補足部分の追加という形で出ています。

 次に8月16日に発表されたものを見ましょう。この1日で7本も登場しており、8月では最も発表の多い日となりました。ほとんどがXQuery関連です。そのうち半分以上が今年3月または4月30日に発表になったドラフトの改訂版です。それぞれ別の文書として独立していますが、実質的にはほぼ同時進行で仕様策定作業が進められています。

8月のドラフト〜続き:アクセシビリティ、XForm、そのほか

 最後に8月下旬近くに発表になった8本をまとめて見ていきましょう。まず19日にWebサービスアーキテクチャ要件(Web Services Architecture Requirements)が4カ月ぶりに更新されました。Webサービスは今年から急激に話題性が高まり、ここ数カ月は毎月何か発表がある状態が続いています。さらに21日にはXForms 1.0のドラフトが更新されました。こちらはほぼ半年ぶりの更新です。ともに更新の間隔としては悪くないペースなので、活発に作業が進んでいる証拠でしょう。

 同じく21日と、続く22日にはアクセシビリティ関連が3つ発表になりました。3つとも、ほぼ1年ぶりの更新となります。その中で、ユーザーエージェントアクセシビリティガイドライン1.0にはラストコールが設定されています。

 そして26日には品質保証フレームワーク(QA Framework)の仕様ガイドラインが更新されました。3カ月という短期間での更新でした。品質保証に関する動きも今年に入ってから重点的に進められている分野です。

 月末の30日には初登場が2つあります。ひとつはWWWのアーキテクチャ原則(Architectural Principles of the World Wide Web)です。タイトルからして壮大な内容を想像してしまいますが、近年World Wide Webが複雑化しているからこそ、その中心的存在であるW3Cから、基本に立ち返るような原則の解説がまとめられていく必要があるのかもしれません。

 もう1つはRDFです。RDFワーキンググループはW3Cの中では「技術と社会」ドメイン、セマンティックWebアクティビティに属しています。RDFもまた今年に入って活発に新しい仕様を出しています。

 また、8月に発表になったノートは以下の通りです。

 今月はXHTMLやXQueryが目立ちましたが、全体として広い範囲に渡って更新が行われました。イベントも一段落して、夏休みシーズンの間に関係者が文書更新に集中して取り組めたからなのかもしれません。

 ではまた来月お会いしましょう。


バックナンバー

2001年
 ・ 7月版 「XMLBase、XML Linkが勧告に」
 ・ 8月版 「リファレンスブラウザAmaya 5.1が登場したけれど」
 ・ 9月版 「MITが停電! そしてマルチメディア言語SMIL」
 ・ 10月版 「XMLの改定仕様はブルーベリー」
 ・ 11月版 「W3C Dayが待ち遠しい」
 ・ 12月版 「慶應大学で次世代Webに触れる」
2002年
 ・ 1月版 「XML 1.1、XSLT 2.0のドラフトついに登場!」
 ・ 2月版 「Webサービスアクティビティが発足」
 ・ 3月版 「XMLが4歳の誕生日を迎えました」
 ・ 4月版 「XMLを作った人たちが殿堂入りの栄誉!」
 ・ 5月版 「P3Pが勧告、そして怒とうの文書公開」
 ・ 6月版 「XML文書の正規化新仕様と、W3Cインタロップツアー」
 ・ 7月版 「SOAP 1.2のドラフトが発表」
 ・ 8月版 「4つのXPointerのドラフト、WSDL 1.2も登場」
 ・ 9月版 「ロゼッタネットとUCCが合併、XMLマスターに上級資格」
 ・ 10月版 「具体的な技術論へ移るセマンティックWeb」
 ・ 11月版 「XML 1.1が勧告候補、特許問題はついに決着か」
 ・ 12月版 「DOM2関連がもうすぐ完結、Webアーキテクチャも登場」
2003年
 ・ 1月版 「この1年でW3C勧告になったのは7つの仕様」
 ・ 2月版 「Webサービスの『振り付けグループ』が発足」
 ・ 3月版 「旅行業界がXML化へ、MSからは『InfoPath』が登場」
 ・ 4月版 「混迷の続くXPointerはついに落着?」
 ・ 5月版 「Webサービスの実験成功。WS-Iからは互換性ツール」
 ・ 6月版 「あいまいな部分を排除したSOAP 1.2、PNGはISO標準へ」
 ・ 7月版 「MITのW3Cオフィスはもうすぐ引っ越し、国連がebXMLを承認」
 ・ 8月版 「Webサービスが日本のAmazonからも利用可能に」
 ・ 9月版 「IEの特許侵害判決でW3Cが緊急会合」
 ・ 10月版 「IEの特許侵害判決がWebに与える影響は?」
 ・ 11月版 「IE特許問題で、W3Cが米国特許庁へ再審査を請求」
 ・ 12月版 「OfficeのXMLスキーマ公開、XML 1.1は勧告間近」
2004年
 ・ 1月版 「セマンティックWebに向けた動きが活発に」
 ・ 2月版 「日本人による標準技術発信が進むOASIS」
 ・ 3月版 「ついにXML 1.1が勧告へ、影響を受けるのは?」
 ・ 4月版 「XML Schema、3年ぶりの改訂が迫る」
 ・ 5月版 「Webサービス・セキュリティ v1.0、待望のOASIS標準に」
 ・ 6月版 「TravelXMLのWebサービス実証実験デモが成功」
 ・ 8月版 「SOAPメッセージ最適化をめぐる仕様が活発化」
 ・ 10月版 「W3Cの設立10周年を祝う記念祝賀イベント開催」
 ・ 12月版 「年の瀬に、WebとW3Cの功績に思いを馳せる」
2005年
 ・ 2月版 「XMLマスター資格試験が6月にリニューアル」
 ・ 4月版 「WS-Security 2004の日本語訳をXMLコンソーシアムが公開」
 ・ 6月版 「“愛・地球博”でビュンビュンWebサービス」
 ・ 8月版 「XMLキー管理仕様(XKMS 2.0)が勧告に昇格」
 ・ 10月版 「QAフレームワーク:仕様ガイドラインが勧告に昇格」


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